複雑・ファジー小説

Re: 紅のアクア 1章第1話Part4執筆中 キャラ募集 ( No.5 )
日時: 2015/06/19 17:58
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: xMHcN6Ox)

 紅のアクア 第1章 月光に消える 第1話「ブラッディバレンタイン」Part4


 「決戦は1ヵ月後とする」 

 世界中にウルガフの宣戦布告は配信された。謎の赤い雪による人類大量消失の原因が、ウルガフたちだと人類が知って間もない時期。世界が混沌の渦に飲み込まれたのは言うまでもない。連日多くの者が犯罪に駆られ、慟哭(どうこく)と暴力が横行。
 政府は恐慌状態となる国民をなだめるだけで、大半の人手を裂くこととなる。相手は一瞬で100万以上の命を奪う、殺戮兵器を持った集団。それも1つの国を襲うわけではない。とても1つの国で対処できる相手ではなく。各国での連携が必要だ。
 しかし当然ながら混乱状態に対処しながら、組織を連合させるなど簡単にはできず。結局ほとんど何もできないままに決戦の日を迎えた。
 国同士での連携は貧弱で、とても手を取り合って戦える状況ではない。当然だろう。世界200カ国近くが手を取り合い、一糸乱れぬ統率力を持つなど。そうそう簡単ではないのは明白だ。どこをいつ襲うという宣言まで相手はしたが、それも本当に護られるか分らないだろう。

 「午前10時。奴らの指示した時間ですね」
 「さて、船も何も見えんが……!?」

 大方の者たちは敵対者は奇襲で攻め入るものだと思っていた。なぜならそれのほうが効率が良いから。一方で危惧(きぐ)もある。相手方は完全に人類を下に見ている嫌いがあるから、合理性など関係なく攻めてくる可能性もあるということ。結果、太平洋沖、アメリカと日本の連合艦隊の前に現れたのは30人足らずの生身をさらす吸血鬼たち。

 「壮観だね。巨大な鉄の塊が何十席も海に浮いている……」

 中央に立つ白いタキシードを着た金髪の男が、なんとも皮肉に溢れた声でつぶやく。嘲笑まじりに放たれた言葉は大きくはないはずだが、なぜか全軍艦の船員にとどいた。普通に考えれば異常なことだが、最早敵勢である吸血鬼は人類の常識は通じない。そもそも洋上に足で立っているところから、まともではないのだから。
 
 「全軍撃てぇぇっ! わざわざ真正面に生身で現れた馬鹿どもを吹き飛ばしてやれっ!」

 言葉を重ねるのも愚かと考えた総指揮官が、憎しみのこもった怒声を張り上げる。巨大な砲弾が大量に放たれ、槍の雨がごとく棒立ちの敵に向かって殺到。誰もが馬鹿な奴らは木っ端微塵になると信じて疑わなかった。

 「ふぅん、人類の兵器もここまで進歩したのか。でも、君たちの力は我々に通じない。それが全てさ」

 砲弾の轟音と共に発される、炎と水がない交ぜになった柱。そのカーテンがじょじょに落ちていく。そこには最早何もないはず。思いのほかあっさり終わったな、と口にするはずだったのに。眼前には誰一人死ぬところか無傷で立っている敵の姿。

 「無傷」
 「さて、と。もう良いかな? まさかこれだけではないのだろう」

 全く汚れの無いタキシードを手で払いながら、金髪をオールバックにした優男が凄絶な笑みを浮かべる。司令官の男はあまりに予想とかけ離れた事態に困惑し恐れ戦(おのの)く。今度はこちらの番だ。敵軍の兵たちがおもむろに武器を取り出す。圧倒的大虐殺が始まった。