複雑・ファジー小説
- Re: Это убивает【5/7最新話更新】 ( No.101 )
- 日時: 2014/05/10 10:47
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: EqqRo75U)
twentytwostory—The reviving atrocious event—
不味い。
凪は自作のチャーハンを食べながらそう思った。
いつもならもっと旨いのに。
味がしない。
チャーハンをむさぼり、あっという間に平らげた。
ちらりと嵜を見ると、旨そうに食べている。
凪はそれに驚いた。
いろいろ不思議に思ったので、嵜に聞いてみた。
そんなにうまいか、と。
すると嵜はこう返した。
「何言ってるの?美味しいよ。そんなに可笑しい?」
嵜はそう言って、チャーハンをまた食べ始めた。
ありえない、というような顔をする凪。
あれだけ味がないのに。
どういう事だ。
そう考えているうちに、嵜はぺろりと食べてしまった。
凪はそれを見て、こう聞いた。
「率直な感想を聞きたい。チャーハンどうだった?」
すると嵜はこう言った。
「味がなかったけど、美味しかった」
なんとも矛盾している感想である。
だが、これで味がないのは確定された。
凪はその意見を聞きこう確信した。
「(ああ、コイツは腹に入れば同じなのか………)」
後片付けが終わり、廻間の部屋へご飯を持っていった嵜。
とりあえず部屋にはなかなか入れてくれなかったので、部屋の前にそれをおいた。
暫くして、扉が少し開き、手がそこから出て朝食をすすすと持っていくのを確認したあと、ホールへ戻った。
凪は手近にあった本を、それとなく読んでいた。
無音恐怖症の嵜が、コツコツと足音を立てながらぼーっとしている最中。
ふと、何かが凪の脳裏を過ぎった。
凪は顔をあげ、何が起こったのかを思い起こす。
すると、ぱっぱっとまた何かが脳裏を過ぎった。
焦りつつも思い起こそうとした時。
まるでフラッシュバックように、『閉じ込めていたはず』の記憶が蘇った。
「ッ!?」
凪は顔には出さないものの、記憶を見続けた。
それらは全て、『廻間が封じた記憶』であった。
血みどろの部屋、三日月のような笑みを浮かべる何か、既に息絶えた両親。
そう、『あの夜の記憶』である。
まるで目の前の光景のようなものを見た凪は、急いでとある場所へ向かい、戻した。
「………………?」
その様子を見ていた嵜は、人ごとのようにコツコツ足音を立てていた。
しかし、そんな嵜にも同じ現象が起こった。
「!!」
こちらを見ている三日月の笑み、血にまみれた服、そのものが持っているナイフのようなもの。
凪のように、戻しはしなかったものの、激しい頭痛が襲う。
「グ………グア…………」
喉元から出ていないような声を出す。
ふらふらと足元がおぼつかない。
しばらくすると、激しかった頭痛が嘘のように止み、なんとか意識をとどまらせた。
とたんに力が抜け、肩で息をする。
そうしていると、凪も戻ってきた。
手には赤いものがこびり付いている。
そう、凪が戻したのは『血液』だったのだ。
「凪…………?」
嵜は目こそは向いていないが、凪へそう言う。
凪はソファに座り、嵜にこう話した。
「今日の夜、銃もっていけ。公園に行く」
思いがけない言葉だった。
一体何事であろうか。
そんな嵜を察したように、凪はこう付け加えた。
「斗澤。あと愛の戦士だかもいるだろ、どうせ。真実を話す」