複雑・ファジー小説

Re: Это убивает【今回閲覧注意】 ( No.119 )
日時: 2014/07/09 17:21
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: ktFX/uOB)

twentyseven story—The dead are a fool and endless.—

———夜。

ホールには、嵜と廻間がそれぞれソファーに座っていた。
嵜はネット対戦でもしているのか、ゲームに没頭している。
廻間はやはり顔に紙をつけて、ボーッとしている。
カチカチと時計の針音だけが、部屋に響く。

「ただいま」

その時扉をガチャリと開けて、凪が帰ってきた。
幾分か疲れているように見えたのは、気のせいではない。
嵜は凪にちらりと目をやり、おかえり、と声をかけ目線を戻した。
凪はカバンを置き、ソファーに体を投げ出す。
暫くゴロゴロしていると、ふと気づいた。
———廻間がいない———
つい先ほど帰ってきたときはまだいたはずだが。
気になった凪は、嵜に聞いてみることにした。

「なぁ、嵜。おま———」

「凪」

すると珍しく嵜が強い声のトーンで凪を呼んだ。
凪はそんな嵜に驚きつつも、言葉の続きを待った。
嵜はすっくと立ち上がり、凪を立たせて腕を引っ張った。

「ちょっと来て、見せたいものがある」

そういって嵜は凪を引いて廻間の寝室へと向かった。

———廻間の寝室

「なんだよ急に」

「見たらわかる」

凪の言葉を半ば無視しつつ、嵜はドアを開ける。
嵜は凪を引っ張り、ほこりをかぶった倒れた写真立ての前に来る。

「この写真立て、見てみ」

そういうと、嵜は凪を前に押す。
どういうことだといっても、無意味なのは薄々わかってはいたので、あきらめてその写真立てのほこりをはらう。
そして写真を見てみた。
すると、凪は息をのんだ。

そう、あの「見知らぬ子供を抱えた笑顔の両親」の写真である。

しかも、自分が知っている両親より幾分か若かった。
凪は嵜を見る。

「多分その子供さ、『ハザマ』だと思う。私らとあの二人……ハザマと廻間は兄弟なわけでしょ。昨日行言ってたよね、廻間だけ無き者にされて『ハザマ』だけが両親の手元に残ったってさ。それで」

凪は愕然とした。
自分だけ何も知らなかったなんて。

凪はしばらく動けなかったが、ふと妙に嫌な予感がして、家を飛び出した。


———桜庭公園

そこにはやはりいつも通り、斗澤がいた。
ただ、何かしらいつも通りでは『なかった』。
表情は暗く、それでいて目は死んでいた。
暫くすると、一人の女生徒が公園に来た。
広報部の一ノ宮である。
夜遅くになぜ出歩いているのだろうと疑問が浮かぶが、彼女はそんなことを気にしなかった。
矢車の件について気になって仕方なかったのである。
それで調査に来たらしい。
斗澤は面倒なことに巻き込まれたくなかったため、寝たふりをした。
一ノ宮は、気づいてすらいなく、斗澤の前を通り過ぎた。
しかしその直後、一ノ宮は絶体絶命の危機に陥る。

「こんな夜遅くまで何してるのっ?」

右手に刃物を握りしめた『ハザマ』がいたからである。

「っ!!」

一ノ宮は殺気混じりの声や刃物に警戒して後ずさる。
ハザマは笑い声をあげ、ニタッと笑いながら一ノ宮に近づく。
その音で気づいたのか、斗澤が目を開ける。
斗澤はハザマに気づきハッとして、拳銃を取り出しハザマに打つ。
チィッとハザマの頬を弾がかすめる。
ハザマは斗澤に体を向けて、君の悪い笑みを浮かべたまま、歩み寄る。
よく見ると、刃物には赤いモノが付いていて、まだ滴っていた。
ああ、最近人を殺したのか、と解せた。
するとハザマは笑いながらこう言い放った。

「あ、確か愛の戦士だっけ?いい切り応えだったよ。アハハッ♪」

斗澤は言葉にならない驚きの声を漏らした。
即ち其は—————




『大形 愛』が死んだ、という意味を為す。