複雑・ファジー小説

Re: Это убивает【8/13本編更新】 ( No.133 )
日時: 2014/08/21 18:24
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: MFhVYAIJ)
参照: http://planetmeteos.com/index.html

thirtystory—The good sister who do it—

「あー恥ずかしい……」

「恥ずかしいのはこっちだよ!」

「うるせえ!」

「言われた方の身にもなってよ!!」

「そっちだって言った方の身にもなれ!!」

となんやかんや口喧嘩を繰り広げていると

「イチャコラ夫婦げんかしてんじゃないよ聞かされる身にもなれ」

突然開く音がして、窓から嵜がこちらをじっとみていた。
顔が些か冷たかったのは気のせいではない。
部屋に入ると嵜はガムシロップを素早くポケットの中へ滑り込ませた。
そしてほかのポケットから柄付きキャンディを取り出し、袋をあけて頬張る。

「ほんと、仲いいねお二人さん。子供の予定とか内心計画してんじゃないの?おー熱い熱い。あっついなー」

と若干棒読み気味に話す。
その時二人に向けられていた目線は、心なしか痛かった。

「おいお前どうやって————」

「窓から入ったかって?登ってきてたに決まってんじゃん。それすら考えられないかな凪?」

「いや玄関」

「鍵閉まってた。ぶっ壊して入るのも良かったんだけどさ。それやって怒られんのも釈だし、わざわざ登ってきたの。木登り壁登りスキル舐めんな」

「お前なあ…………まあいいけどよ」

良くないっ!と一ノ宮がツッコもうとするが、ツッコんでも無駄なんだろうな、と思い飲み込んでおく。
嵜は一ノ宮の格好をチラっと見て、こう言った。

「風呂まだ入ってないの?服貸すから入ってきなよ」

この言葉には流石の凪も驚いた。
というのも、嵜はモノを貸す、ということ自体あまり好まないのだ。
そして、借りるということも好まない。
それがゲームであれば話は別だが。
嵜はそんな驚いている凪を見てきょとんとした。

「凪、もしかして何言ってんだコイツって思ってるでしょ。たまには私だって服のひとつくらい貸すよ。ほんとにたまにだけど」

そう言うと嵜は一ノ宮の手を引き、風呂場へと案内した。

「寝巻きは洗面台の上にあるから」

「あ、うんわかった」

そんな会話をしつつ部屋を出た嵜たちが見えなくなると、凪は扉を閉め、部屋着に着替え始めようと、クローゼットを開ける。


そこに、両親の遺言書があると知らずに。




一方その頃、サクラニワ公園。
ハザマの姿はもうなく、そこには人が一人倒れているだけだった。
倒れていると言っても死んでいるのではない。
寝ているのだ。
こんな夜の時間でも公園にいる人間といえば、斗澤くらいである。
でもなぜ地面で寝ているのかというと、あのあと疲労が限界に来て、ベンチで寝ていたのだが、過って落ちてしまったらしい。
それでも起きないとはすごいことだが。
そんな場所に、ひとつの影。
白い紙で顔を多い隠し、なおかつ全身を白い法衣でまとった人間といえば、廻間しかいない。

「アイツ……もういないし」

そう言うと溜息をつき、ベンチに座った。
廻間は自らの顔を隠していた白い紙をとった。
吸い込まれるように綺麗な漆黒の瞳。
ゾッとするような白い肌。
それが、廻間の素顔であった。
だが、そんな美しい顔は、悲哀に満ちていた。

「止めようとしても、所詮無駄か。アイツは『全て』に飽きたからな………」

そう言うと顔を上に上げる。
今夜は十六夜とも似て似つかない月。
そんな月明かりが、廻間の肌を照らす。
照らされた肌は、まるでミルクのように綺麗だった。
そんな月を見ていると、ふと廻間の脳裏にハザマの言葉がよぎる。
その言葉は、まるで諦めたような面白がっているような、良く分からない言葉だった。


『飽きちゃったんだ。生かすことも、生きることも、食べることも、見ることも、息をすることも、探すことも、探されることも、眺めることも、眺められることも、話すことも、聞くことも。そう、今この時でさえ、僕は飽きちゃったんだ。だから、唯一飽きてない『殺す』ことを、し続けるのさ。今この時もね』