複雑・ファジー小説

Re: Это убивает【お死らせ←】 ( No.43 )
日時: 2014/03/20 17:19
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: ZoJzIaOM)
参照: http://subtlestyle.net/en-1/index.html

twelvestory—Those who are addicted to a game—


嵜は歩いていた。
とにかく歩いていた。
いつもの帰り道ではなく、ゲーム友達村雲の家への道を歩いていた。
学校はいつもの理由で早退した。
理由というのは低血圧だ。
しかし今朝、本人は『すこぶる調子がいい』と言っていた。
そう、つまり「低血圧」は『早退する嘘の理由』なのだ。
さすが汚い殺人鬼汚い。
まあ、それはそれてして。


今日嵜が早退した本当の理由は、村雲が見つけた掘り出し物を引き取りに行く、とのこと。
どうやら村雲は年代物のゲームを偶然見つけたはいいものの、余り自身のメインのジャンルではなかったため、嵜に渡したかったらしい。
因みにそれはもう1ヶ月前の話になる。
嵜はもともとの低血圧で、あまり外に出ないし、村雲はそもそも引き篭りだ。
だから凪が取りに行こうとしたらしいのだが…………
なかなか多忙で行けなかったらしい。
そして今日ようやく行けるかと思ったら、疲労がたたってダウン。
学校を休んでも良かったのだが、行かないと単位を落とすため、仕方なく行き、仕方なく学校を嵜は抜けたのだった。


さて、時間が過ぎるのは早いもので、もう村雲の家の玄関の前についた。
嵜はポケットからスマフォを取り出し、村雲に電話する。

『鍵なら開いてるよ』
「了解」

会話時間3秒。
村雲も来た理由がわかっているからこそ、できた会話なのだろう。
………………と、思った方もいるだろう。
実は、村雲は窓から嵜の様子をちらちら見ていたのだ。
電話するときも窓をあけていた。
そして嵜をガン見しながら電話していた。
と、いうのが真相である。
それを嵜が知っているのは、神のみぞ知る。


「おじゃまします」
キイイと扉を開ける。
中は思ったより綺麗だった。
下駄箱や靴もきっちり揃っていて、いかにも礼儀が正しそうな雰囲気であった。
だのに、居間はおろか手洗い場まで人気がしない。
誰も住んでいない家のようだった。
まあ、村雲が常に自室にいるのは相変わらずだが。
嵜はそんなことも考えつつ、村雲の部屋へと向かった。



【村雲の部屋】

「無限に広がる大宇宙」
ノックなしで扉を開ける。
そしてそう言い放った。
どこぞの太子であろうか。
「限りなき銀河」
それに対をなしているように返事をする村雲。
ちなみにこの会話は日常茶飯事である。
「夏蓮、例のブツ」
そう催促すると、待ってましたと言わんばかりに立ち上がる。
「ちょっともってくら」
そして部屋を出ていった。

(5分後)

「やーおまたせ!」
きっかり5分後、村雲は手になにかをもって入ってきた。
「ハイM○THER2!」
隠しきれていないのは承知だが、そのソフトを嵜に渡す。
「おおおお待ってた」
人にはわからぬように、瞳をキラキラさせながらそれを手に取る。
「SFCだっけ?いやー懐かしいよ」
村雲がそう言う。
因みにSFCとはスーパーフ○ミコンの略称である。
「1994年だもの。」
感慨深そうに嵜が呟く。
わからない方は是非ググってもらいたい。
とあるゲーム会社の傑作だ。

「とりあえず用は済んだ。帰る。」
「もう?」
「連続の疲れが重いのと、早くやりたい」
「あー………何日連続だっけ」
「4日」

会話が途切れたところで、嵜はソフトをカバンに入れ、立ち上がる。
「それじゃ。例のアレ、楽しみにしてるよ」
「任せてくださいっての!」
村雲のにかっとした笑顔に見送られながら、嵜は家路をいそいだ。