複雑・ファジー小説
- Re: Это убивает【本編更新】 ( No.62 )
- 日時: 2014/05/02 18:00
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: /GGwJ7ib)
- 参照: http://subtlestyle.net/en-1/index.html
Fifteenstory—Fate which was out of order—
嵜は暫く動けなかった。
指は写真立てを持ったまま。
体は震えている。
そして動かすのが精一杯の口。
ぱくぱくしながら、ようやく出た一言。
「そんな」
ただそれだけの一言だった。
顔は、長らく封印されていた表情筋がその封印から解かれたように、
驚きと不安の表情を作っていた。
ひやり、と背筋を何かが伝う。
目は寝ぼけナマコが嘘のように見開かれていた。
理解できなかった。
写真に写っている両親は、幼い頃に見た両親より、ずっと若く見えた。
そして真ん中にいる、子供。
まだ赤子のように見えた。
明らかに『凪と嵜』では『なかった』。
つまり『見知らぬ子供』である。
写真の両親はどちらとも嬉しそうな笑顔で写っている。
嵜は理解できなかった。
何故、私たちじゃない子供が写って?
嵜は呆然と立ち尽くしていた。
その時、ガタッと言う音がした。
その音で嵜は我に返ることができた。
「たっだいまー!」
どうやら、廻間が帰ってきた音だったらしい。
嵜は写真立てを元の位置に戻し、ホコリをわざとかぶせた。
とんとんと階段を上る音がする。
嵜は写真立てき気にしながらも、いつもの無表情で廻間を迎え入れた。
「おかえり」
「嵜ー!凪起きた?」
「いや、寝てる」
嵜がそう言ってベッドをみやると、寝息を立てて熟睡している凪が。
「あらー薬凄く効いてるねー副作用かね」
「多分。副作用に眠気ってあったし」
「ま、それもそっか。嵜、はいコーヒー」
廻間が手に持っていたレジ袋を漁り、コーヒーを差し出す。
それを無言で受け取り、プルタブを開ける。
それにしても、店に入ったときよく怪しまれなかったものだ。
普通通報されている。
まあそんなことを気にしてもどうにもならないが。
「…………………」
嵜はベッドに座り、コーヒーを飲む。
そして考え始めた。
例の写真についてだ。
何故若い両親が見知らぬ子供と写っていたのか。
あれが息子か娘だとすると、あれは兄弟関係にあたる。
だが、何故その子供が『いなかった』のか。
となると兄弟関係説は砕かれる。
第2は『別の血縁関係説』。
従兄弟か誰かの孫かもしれない。
はとこだって有りうる。
となると血縁関係説が今のところ有力かもしれない。
しかしそう早合点してしまっては先が見えない。
その子供を見つけてどうする?
殺すにも、なんにしてもどうしようもない。
今の嵜たちの目標は—————————
両親を殺した、『殺人鬼』を見つけることなのだから。