複雑・ファジー小説

Re: Это убивает【アンケート実施】 ( No.84 )
日時: 2014/04/29 11:03
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM (ID: j0x8WVaG)

nineteenstory—Its love—


朝食を取り終え、しばらくした後。
嵜は、ふと村雲が最近仕入れたというゲームのことを思い出した。
村雲の家へ行こうと、嵜は立ち上がった。
凪がそんな嵜に問う。

「おい、何するんだ?」

「出掛ける」

「出掛けるって、どこに」

「夏蓮とこ」

そう告げると、準備をしてさっさと出てってしまった。

「珍しいな。朝早くから出掛けるなんてよ」



嵜は道中のサクラニワ公園にて、人影を2つ見つけた。
1人は項垂れている斗澤。
もう1人は、何やらロリータファッションで固めた人物。
その人物は何かぶつぶつと呟いていた。
嵜はそんな2人を見て、短くため息をつくとすぐに通り過ぎていった。

「変な人らだ」

そう呟いて、先を急いだ。



暫くして、嵜は玄関の前に立っていた。
インターフォンを鳴らすことはなく、スマフォを取り出し電話をかけた。
無論、相手は村雲である。

『開いてるよ』

その一言を聞き、嵜は通話を切る。
失礼ではないかと思われるだろうが、これは彼等にとっての普通の会話なので、何ら支障はない。
スマフォをしまうと、扉を開けて中に入った。


ギィィィ、と耳障りな音がする。
木が擦れ合うような音だった。
軽い金属音にも似た音。
嵜は軽く耳を塞ぎつつ、扉を閉めた。
家に上がると笑い声が聞こえた。
玄関のすぐ近くにある扉の向こうからだった。
そこには、この家に住んでいる人達であろう影が見えた。
来客には気付いていないのか、はたまたスルーしているのかわからないが、まあ和やかな雰囲気であった。
嵜はちらりと見やり、挨拶をするのかと思いきや、無視して部屋へと向かった。

コンコンと軽くノックする。
返事を待たず、そして挨拶せず入る。
中はカーテンを閉めているせいか、薄暗かった。
そしてぼんやりと光る箱が、部屋の隅にあった。
それに向かう人物が、嵜に振り向いた。

「いよっす」

村雲である。
村雲はヘッドフォンを外し、机に肘掛る。
そして、たっている嵜に対し、そのへんに座っていいよと促した。
嵜は適当なところに腰掛けた。
あたりを見渡した。
相変わらず、キレイな部屋であった。
不思議なくらい、キレイであった。
嵜は村雲に声をかける。

「そういえば、廻間が一昨日変なこと話してたんだよ」

「変なこと?」

村雲はそちらに振り向いた。

「リナリアって花の話。花言葉がどうだとか」

「花言葉、ねえ」

村雲はリナリアという言葉に反応しつつも、普通に返した。
嵜はそんな村雲に気付かず、話を続ける。

「他にもウツギとか、ユリとか。珍しいことばっか話してたっけ。めんどくさいからスルーしてたけど」

呆れたように嵜は話す。
嵜にとって、この手の話はめんどくさいらしい。
めんどくさいといいつつ、ちゃっかり話を聞いていることも多々あるが。

「まあそんなことはいい。夏蓮、例のモノは?」

自分で振った話題を切り、別の話へ持っていく嵜。
村雲はちょっと待ってろといい、部屋を後にした。

本当にちょっとしたあと、村雲は黒い塊をもって帰ってきた。

「ほい、頼まれてたスタンガン。出力最大はくれぐれも気をつけてくれよ」

村雲はそう言いながら、物騒なそれを嵜に渡す。
嵜はスタンガンを弄びながら、こう聞いた。

「これってさ、原動力何?」

「ん?ああ単一電池」

嵜は少し微妙な顔をした。
内心、安物か…………とでも思っているのだろう。
まあいっか、と零し、立ち上がる。
すると村雲はもう2つ渡す物があった、と言って嵜を止めた。
不思議に思っていると、村雲はガサゴソと漁り、何やら小さな花束を差し出した。
その花束には、紙で作られた赤い花も3つあった。
ほかの花は全てリナリアだった。

「やる」

と少し強めの口調で嵜に村雲はそう言った。

「???…………まあ、ありがとう」

意味がわからず首をかしげたが、嵜は礼を言って部屋を後にした。



部屋を出るとき、村雲の顔が少し赤くなっていたのは、嵜はまだ知らない。






『リナリアって知ってる?花言葉はね、私の恋を知ってくださいって意味なのさ!似たようなのだと、赤い薔薇3本で告白を意味して、4本でその承諾って事らしいよ?昔の人は意味を分かってて、花を送りあってたのかな。というか、同じ花なら君たちに合う花もあるんじゃないかな。例えば…………血濡れて真っ赤になった花とかさ!』