複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.15 )
- 日時: 2014/03/05 16:06
- 名前: Frill (ID: emO5t6i/)
第十弐話 美少女で野獣
碓井貞光を仲間に加えた源頼光達は大江山を目指すべく順調に街道を進んでいた。
途中、盗賊らしき者達が何度か襲ってきたが全て撃退した。
「・・・ならず者が多いですわね」
うんざりしたように卜部が呟く。
「妖魔による被害も多い様ですが大半は人間達が徒党を組んで近隣の村を荒らしているそうです」
綱が卜部の呟きを拾い聞き答える。
「あたいは単純に人手不足だと思う。羅生門の戦で兵士の数が随分減ったからな。都を守るので手一杯なんだよ」
貞光が話に入る。
妖魔によってもたらされた弊害が人心をも乱し悪に走らせる。一刻も早く朱天童子を倒さねばと一同、気を引き締める。
「・・・僕、ちょっと疲れたよ。ずっと歩きっぱなしなんだもん」
旅に慣れてない頼光が疲れた声を出す。
「頼光様、もう少しすればこの先に村がありますよ。そこで休みましょう」
綱が励ます。何だかんだで頼光もまだ子供なのだ。どんなに優れた才能があっても年相応の少女だ。
二人のやり取りを見て苦笑いをする卜部と貞光は途中で馬でも調達できればと思った。
頼光達が少し小高い峠に差し掛かった時、茂みの中から勢いよく何者かが飛び出してきてその行く手を遮った。
「待て、お前達!ここを通りたければオイラにその荷物、全部よこしな!!」
頼光達はまた盗賊かとうんざりとしたが目の前に現れた者の異様な風体に驚いた。
その者は薄汚れたボロの布を申し訳程度に巻き付け、金色の髪のショートヘアでよく日に焼けた褐色の肌でその髪と同じく黄金の瞳をしていた。
背中に巨大な斧を担いでいるのがさらに異様さを増している。
そしてどう見ても女の子だった。それも美少女だ。齢は頼光と同じ位で活発で利発そうな顔をしていた。
「さあ、命が惜しくば、さっさと荷物と有り金をこのオイラ『坂田 金時(さかた きんとき)』様に差し出しな!!」
少女は身の丈よりも巨大な戦斧を軽々と突き付け宣告した。