複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.19 )
- 日時: 2014/03/05 01:23
- 名前: Frill (ID: J7xzQP5I)
第十六話 新たなる仲間
老人、坂田金時は語る。かつて国のため人々のために戦った事、戦いに勝利したが自分達の力を恐れた帝が主と仲間と一族を滅ぼした事。家族を失った事、復讐に生きた事、虚しさしか無かった事。
老人は少女に感謝の言葉を述べる。少女と出会い幸せな日々であった事。最後に人として生きられた事。そして自分の我がままに付き合わせてすまなかったと。
老人は穏やかにその生涯を終えた。
老人にとって少女との日々は自らの罪滅ぼしに過ぎなかったのかもしれない。だが確かにそこには絆があった。
少女はずっと昔に失くした大切なものの欠片を取り戻した気がした。
少女は老人の墓を作り形見の戦斧を肩に担ぐ。
そして少女は自らの名を共に過ごしたその者の名前に変えた。
『坂田 金時』と。
少女、坂田金時の話を聞いた綱はふと疑問を口にした。
「では、何故我々を襲ったのですか?」
金時はバツが悪そうに目を泳がせて答える。
「オイラは悪そうな奴等を狙ってたんだ。そしたらあんた達が来て・・・」
「私達が悪党に見えたと・・・」
溜息を吐く一同。
「ごめんよ!なんでもするから許しておくれ!!」
金時が何度も頭を下げる。
そんな金時を見て頼光がにこやかな笑みで言う。
「じゃあ、一緒に鬼退治に行こう!」
キョトンとする金時。
「鬼退治?」
「うん、大江山の『朱天童子』を退治するんだ!」
「しゅ、てん、どう、じ?」
金時の中でなにかが激しく揺らめいた。『シュテンドウジ』その言葉は彼女の心をひどく揺さぶるものだった。とても懐かしくとても暖かく老人と暮らしていた時に感じた不思議な既視感を。
「その鬼退治、オイラも連れってくれ!何故だか行かなくちゃならない気がするんだ!!」
金時はこの感覚を確かめなければならないと強く想った。その朱天童子という鬼に会えば判るかもしれない。自分の失われた何かが。
「うん!もちろんだよ!僕は源頼光。よろしくね!」
頼光達に新たな仲間『坂田金時』が加わった。