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複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.2 )
- 日時: 2014/03/07 01:20
- 名前: Frill (ID: wgp3kh6n)
第弐話 紅蓮の悪鬼
心臓を貫こうとする槍。
腹を抉ろうとする鎖鎌。
首を落とそうとする太刀。
無数に飛来する手裏剣。
四方から同時に襲い掛かる武器の雨あられ、並みの妖魔なら一溜まりもなく即死だろう。
勝負は着いた、と、この場の誰もが思った。
だが、朱天童子と呼ばれた鬼は不敵な笑みでニヤリと笑った。
その刹那、
凄まじい爆音と熱風、そして天を奔る豪炎が辺り一面を飲み込んだ。
燻ぶる煙、焦げた大木、生き物が焼ける匂いが鼻をつく。広場は焼け野原となり見る影も無い。
先程まで人だった形をしたものが消し炭となって転がりその屍を無残に幾つも晒している。
「くくくっ、その程度の腕でこの『朱羅』様を殺れると思っていたのか?随分と舐められたもんだぜ」
鬼はその身体に赤々と燃ゆる炎を纏わせ悠々と瀕死の男に歩み寄る。
「俺様が何で『朱天』童子と呼ばれてるのか教えてやるよ」
「ぐっ・・・!ば、化け物め!!」
男は瀕死の身体をよろよろと引き起こし懐から短剣を取り出すと鬼に斬りかかった。
「・・・だから、てめえ等の腕じゃ無駄だっての」
鬼はさも面倒臭そうに男に一別し指を鳴らす。その瞬間、男は炎の柱に飲み込まれ断末魔の絶叫を上げる。
炎が収まると男の姿は灰も残らず燃え尽き消え去っていた。
「・・・俺様の炎は天をも朱色に染め上げるからだよ」
朱天童子『朱羅』は誰も居なくなった焦土と化した広場でぼそりと呟いた。
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