複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて ( No.21 )
日時: 2014/03/07 20:08
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: HW2KSCh3)

第十八話 嵐の前の・後編


 朱羅は白銀の妖狐の視線を気にすること無く泉から上がりその引き締まった裸体を惜しげもなく晒す。月光が反射する泉の滴が肉体の曲線に沿って肌を流れ落ち得も言われぬ官能さを作り出す。

 「相変わらずええ身体してはりますなあ、久しぶりに味わいたいわあ」

 妖狐はうっとりとした表情をし薄紫の唇を赤い舌で舐めあげ、自分の体に指を這わせる。

 朱羅はギロリと嫌そうに妖狐を睨み、己の身体に炎を纏わせ覆う。その炎が一瞬にして普段見慣れた衣装となった。

 「・・・俺様の裸をわざわざ品評しに来たわけじゃねえんだろう?千璃センリ

 千璃と呼ばれた九尾の妖狐は名残惜しそうに朱羅の身体を見ていたが視線を合わせ微笑する。

 「ふふふ、近いうちに朱天はんの所に面白いお客人がぎょうさん来はりまっせ。」

 「・・・また悪巧みか、腹黒雌狐。何企んでやがる?」

 朱羅はうっとおしそうに髪を掻き上げる。

 「悪巧みなんて・・・あちきは朱天はんのためを想ってしてはるんどすえ?」

 千璃は悲しそうにしかしワザとらしく、しなを作りよよヨ、と朱羅に寄りかかりその豊満な双丘を押し付ける。

 「あちきは昔から朱天はんにぞっこんなのは、あんさん自身がようく知ってはるでっしゃろ?」

 千璃はそう朱羅の耳元で囁きながら白魚の様な手を朱羅の胸元に差し入れその感触を楽しむ。

 「・・・瑠華に羅生門を襲うように入れ知恵したのはお前だな?」
 
 朱羅は千璃の行動に気にすることなく問う。

 「茨姫はんには悪う事したと思っておりますえ・・・」
 
 千璃は朱羅の質問に怪しく笑みをたたえ答えながらも手の動きに集中し指先を奥へ這わせる。千璃の白い頬は僅かに蒸気し桜色に染まっている。

 その指先が魅力的な御山の頂の突起に辿り着こうとした瞬間、

 朱羅の身体から凄まじい勢いで炎が吹き上がり辺り一面の森を一瞬にして焼き尽くした。




 泉は蒸発し巨大なクレーターが穿たれている。燻ぶる煙が立ち込める。その中心に朱羅は立ち忌々しげな表情で虚空を睨む。


 「ふふふ、続きはまたにしまひょう、朱天はん♪」

 妖狐の声だけが月明かりに照らされ焦土と化した森に響き渡っていた。