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複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.24 )
- 日時: 2014/03/08 17:41
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 1kYzvH1K)
第弐十壱話 見定める者・後編
夜の帳がその深さを増す中、酒を酌み交わす者が二人。
「時に博雅、殿中で変わった事はないか?」
晴明が盃を傾けながら博雅に尋ねる。
「貴族院でか?う〜ん、特に最近は事件も起きてないからなぁ」
博雅は酒を飲みながら答えるとふと、思い出しように声を上げる。
「ああ、そういえば頼光殿が大江山の鬼を討伐しに行くという噂を聞いたことがあるぞ」
博雅の言葉に酒を飲む手がピタリと止まる晴明。
「頼光?あの源頼光殿か?」
「ああ、羅生門で俺達と一緒に戦っただろう?なんでも大臣直々に指名されたという話だ」
安倍晴明はそんな話を聞いたのは初耳だった。俗世に興味は無くても式神を用いて常に様々な最新の情報を入手しているのだ。もちろん表には出ない裏の事情も詳しく調べてある。
それなのに噂を晴明は博雅がこうしてここで話すまで知らずにいた。
鬼等の凶悪な妖魔退治は本来なら晴明のもとに依頼が来るはずだがそれも無かった。
晴明はチラリと後ろに控える従者兼式神の松虫に視線を送ると松虫は首を横に振る。
どうやら何者かが何らかの力で情報を遮断し晴明を孤立させていた様だ。
「・・・この私を出し抜くとは、都にはまだ私の知らない闇が潜んでいるようだな」
不敵な笑みを浮かべ一気に酒を飲み干す晴明。
「ん?どうした、晴明。仕事が回って来なかったのが不服か?」
晴明の空になった盃に酒を注ぐ博雅。
「・・・いや、頼光殿なら心配はいらないだろうと思ったのだ」
「そうだな、あの少女ならどんな手強い鬼でも斬り伏せるだろうな」
晴明達は羅生門で共に戦った見目麗しい少年の様な少女の事を思い浮かべた。
鮮烈に克明にその戦いぶりが眼に焼き付いている。
鬼神の如きその姿を
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