複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて ( No.27 )
日時: 2014/03/07 00:39
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: wgp3kh6n)

 第弐十参話 友達という名の絆


 廃寺で一夜を明かした頼光達は坂田金時という少女を仲間に加え、再び大江山を目指し出発した。

 「それじゃあ金時はずっとお爺さんと一緒に暮らしてたんだね」

 「うん、オイラ他に知り合いは居なかったよ。まともに相手をしてくれたのはじっちゃんだけだったし」

 頼光と金時が歩きながら互いに話をしている。

 「じゃあ、こうして知り合いになった僕達は『友達』だね!」

 「ともだち?」

 頼光の言葉に首を傾げる金時。

 「そうだよ!こうして僕達は仲良く話をしている。それってもう『友達』って事だよね!!」

 嬉しそうに金時の両手を掴みブンブンと上下に振る。

 「『友達』・・・。仲良くなると友達。・・・そうか!じゃあ、オイラと頼光は友達か!!」

 金時はニパッと笑い頼光に掴まれた手を掴み返し勢いよく振り返す。

 「金時と僕は友達だよ!」

 「頼光とオイラは友達だな!」

 お互いニコニコして笑いあう二人。綱と貞光は優しく見守り、卜部は暖かい視線を送る。

 「・・・頼光様は同年代の友達がいませんでした。同じ年頃の金時殿と出会えたのが嬉しいのでしょう」

 綱はしみじみと話す。


 上に立つ者としてあるべき姿を望まれる周りからの期待感。心無い大人達の邪まな思惑。貴族としてあるべき、武士としてあるべきだと様々な重圧が少女の小さな肩に圧し掛かる。

 唯一、歳が近い綱でさえその微妙な距離感を埋められずにいたのだ。姉妹や友人の様にはいかず、どうしても主従の関係になってしまう。

 ただ自分をひたすらに押し隠し、周りからは上辺だけの物差しで測られ、本当の自分は誰にも理解されない。

 頼光はそんな自分と金時が似ていると感じたのかもしれない。

 互いに許す、許し合う関係を築き上げる。


 そして少女はやっと己の心を許せる友が出来たのだ。