複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて ( No.28 )
日時: 2014/03/08 01:13
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: jJL3NZcM)

 第弐十四話 俺とお前とアイツとアタシ

 
 大江山の頂上、御社の広場で向かい合う朱羅と瑠華。

「いよいよ師匠にアタシの修行の成果をお披露目する時が来たのだ!」

 腕を組み不敵な顔で踏ん反り返る茨姫童子・瑠華。

「大した自身だな。だが俺様は何度もお前の相手をしてるんだぜ?闘い方は誰よりも判ってるつもりだ。それでもるのか?」

 腰に手を当て面倒そうに聞く朱天童子・朱羅。

 「ふっふっふっ、アタシの『本気』を甘く見ない方が良いですよ。でないと、師匠が大怪我しますから・・・」

 ニヤリと答える瑠華。

 「・・・ほう、だったらお前の言う『本気』を俺様に見せて貰おうじゃないか?」

 朱羅もニヤリと笑う。


 一瞬で場の空気が変わり圧倒的なプレッシャーが支配する。時の流れが極限まで緩やかになり、無音の世界が構築され、広がる。

 瑠華が素早く体勢を整えて構えを取る、がそれよりも早く朱羅の指先が音を鳴らす。

 「爆炎滅陣ばくえんめつじん
 
 無音の世界が破られ、指を鳴らす小気味の良い音が鳴り響く。次の瞬間、瑠華は炎に包まれ、耳を塞がんばかりの爆音と共に巨大な炎の柱が噴き上げ立ち昇る。

 「だから言ったぜ?何度戦っても・・・」

 朱羅は途中で言葉を止めた。そして今だ燃え盛る炎の奥に立つ者に鋭い視線を向ける。

 炎が収まるとそこには煤だらけで黒くなった瑠華がドヤ顔で立っていた。所々焼け焦げているが傷は大して無い様だった。

 「・・・げっほっ!げほっ!・・・だから言ったでしょう師匠?甘く見るなと。今のアタシは茨姫童子では無い。『真・茨姫童子』なのだ!喰らえ!必殺!!狂乱棘鞭きょうらんしべん!!!」

 瑠華はそう高らかに宣言すると朱羅に己の掌を向けて無数にとげのある触手を生み出した。

 何本もの刺々とげとげしい茨のツルがうなりをあげて、朱羅の眼前に迫る。

 「・・・炎竜爪破えんりゅうそうは

 朱羅は右腕に激しく揺らめく炎を纏わせると横一閃に薙ぎ払い襲い来る茨の波を炎の渦で瞬く間に燃やし、消し炭に変える。
  
 だが茨のツルは完全には燃え尽きず、焼け残った部分が瞬く間に再生し、むしろ、その勢いを増したかの様に新たな茨を無数に増殖させた。

「!? コイツは・・・!!」
 
 その無数の触手が幾重にも襲い掛かり、拘束する様に身体に巻き付き朱羅を縛り上げた。