複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.29 )
- 日時: 2014/03/08 11:34
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 7BG7SBHA)
第弐十五話 俺とお前とアイツとアタシ・中編
瑠華の放った茨のツルは朱羅の両手足、身体、首に幾重にも巻き付き動きを拘束する様に締め上げる。
「チッ・・・!俺様とした事が・・・!」
ギリギリと茨が身体に食い込み、苦悶の表情を晒す朱羅。
「くっくっくっ、どうですか?苦しいですか?痛いですか?無様な格好ですねえ、師匠。・・・いや、朱天童子!!」
嘲笑う瑠華の表情が歪み、邪悪なものに豹変する。
「・・・貴様に山を追われ、格下のカス妖魔共にさえ馬鹿にされ、挙句の果てに憎い貴様に弟子入りだと?フザケルナ!!!時を待っていたのだ!!朱天童子、貴様を殺す時を!!!」
瑠華の瞳は暗い光を灯し、狂気を宿す。
「ぐぅ・・・、調子に乗るんじゃねえぜ、瑠華?」
朱羅の全身から凄まじい炎が噴き出し拘束する茨を焼却する。だが茨はまるで、その炎を喰らうかの様に吸収しツルを太く大きく成長させていく。
大きく成長し力強さを増した茨は朱羅の身体を更に締め上げる。そして茨から紅い巨大な花が幾つも咲き誇る。
「うぐっ!・・・ぐうぅ!こ、この花は、やっぱりだぜ・・・!瑠華、てめえ、『火硫草』を使ったな?」
苦しげに呻く朱羅に得意そうに指を指す瑠華。
「そうだ、朱天童子よ。貴様の炎を封じる為に伝説の仙草『火硫草』を手に入れたのだ!どうだ?得意の炎が使えんだろう?火硫草が貴様の炎を吸収してしまうからな!!」
残念な胸を反らし自慢げに語る。
「・・・瑠華、てめえ、どうやって火硫草を手に入れた?コイツは霊峰『不死山』の火口にしか生息しねえぜ。結界に護られた霊峰に妖魔が入り込んで無事な訳がねえ、俺様でもヤバイぜ」
朱羅の眼が吊り上り、炎の如き紅い双眸の瞳で瑠華を睨む。
「な、何を言ってる!ア、アタシの実力があれば容易い事だ!嫉妬か!?アタシの力にビビッているんだな!?いくら凄んでも怖くないぞ!力を封じられた貴様はもはや死んだも同然だ!!」
挙動不審になる瑠華を尻目に朱羅は薄く笑う。
そして鋭い牙を剥き獰猛な笑みに変化する。
「・・・久々に『本気』になるぜ」