複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.30 )
- 日時: 2014/03/08 22:54
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 1kYzvH1K)
第弐十六話 俺とお前とアイツとアタシ・後編
身体を拘束されながらも朱羅は餓えた猛獣の如く笑みを浮かべ、その牙を剥き出して大きく呼吸し力を込める。
「ハアァァァァァッ・・・!!!」
全身から凄まじい闘気が湧き上がり陽炎の様に揺らめき、そしてそれらが猛る炎となり朱羅の身体を取り巻く。
「ふんっ!いくら燃やしたって無駄だ!お前の炎を喰らって火硫草は無限に増殖する!そのまま全ての妖力を吸い取られてしまうがいい!!それともそのまま、茨のツルで全身の肉と骨を砕き潰されのが良いのか?・・・まあ、どちらにしても貴様の最後だがな!」
瑠華は勝利を確信し得意げに話す。
「・・・おしゃべりは、お終いか?茨姫童子」
「何だと?」
全身をミシミシと締め上げられながらも朱羅は余裕の表情を崩さない。
「見せてやるよ、てめえと俺様の格の違いって奴をよおぉぉ!!!」
瞬間、身体を取り巻いていた炎が渦巻きながら次々と朱羅の右手に収束されていく。
凝縮された炎の塊が早く暴れさせろと言わんばかりに激しくうねりながら燃え盛る。
その燃え盛る炎から幾重もの紅い閃光が走る。
全身を拘束する無数の火硫草のツルは瞬時に切り裂かれ、それらを再生させる間も与えず一瞬にして蒸発させた。
「な、何・・・だ、と!? そ、そんな馬鹿な・・・!!!?」
瑠華は信じられない物を見たかの様に驚愕する。
拘束から解放された朱羅は首をコキコキと鳴らす。その右手にはユラユラと火炎を纏い、不気味な輝きを放つ真紅の剣を携えている。
その剣から発せられる炎はまるで血煙の様な赤い揺らめきを帯びている。
「・・・『天叢雲剣』。てめえは幸運だぜ、瑠華。」
朱羅は炎を纏う剣をゆっくりと天高く掲げる。
その瞬間、眩しい光と熱風が包み込み、赤い炎の柱が空に向かって迸る。
凄まじい轟音と熱気と共に炎は瞬く間に雲を呑み込み太陽さえも覆い隠す。
大江山の上空を真っ赤な炎の渦が螺旋を描く様に覆い尽くし、赤々と空を舐め上げる。
天空を朱色に染める炎はまるで、これから全ての物を喰らい尽くしてしまう龍か大蛇を思わせるかの様な姿だった。
その光景をポカンと見上げる瑠華。
朱羅は右手に掲げた天空へと炎の柱を伸ばし燃え立たせる剣に視線を送り、その後に瑠華に戻す。
「これを見た奴はてめえで二人目なんだぜ」
そして振り下ろす。
「草薙之焔」