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複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.34 )
- 日時: 2014/03/10 17:45
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: F1B4nr3O)
第参十話 タダより高いモノは無し・後編
瑠華は白面九尾に火硫草を密かに貰った事を正直に話した。
唐突に現れていきなりくれたという。どうやって入手したのか聞くと妖しく微笑んで、秘密だと言ってはぐらかされた。
「・・・その時、正直アタシはこれでやっと朱天童子に勝てる!と思ったのだ。でも、今思えばなんでアタシにそんな貴重な物をくれたのか不思議なのだ」
地面に正座し、瑠華は朱羅の顔色を窺うようにチラチラと見る。
「・・・うむ、嘘は吐いておらんな。じゃが、白面九尾、千璃め、何を考えておるのじゃ?朱天童子を倒すにしてはあまりにも策が拙いぞ。まるで遊んでいるようじゃ」
幽魔は釈然とせず、腑に落ちなさげに言う。
「・・・本気で遊んでるんだろうよ、アイツはそういう奴だぜ」
腕を組み朱羅は憮然とした表情で答える。
白面九尾、千璃。強大な力を持ちながら特に己の存在を主張するわけでもなくいつも遠巻きでニコニコしている不気味な妖魔。
朱羅と幽魔はお互い付き合いは長いが千璃が何時、どこから現れたのか判らなかった。気付いたら何時の間にかいたのだ。まるで最初からそこにいたかのように、当たり前の様に。
敵対する事もなく、群れる仲間がいるわけでもなく、ただそこに在る。
そして何故か朱羅は異様に好かれていた。
「朱羅よ。お主、厄介な奴に憑かれたものよのう。同情はするが巻き込まれるの勘弁じゃぞ?」
「別に俺様も好きで付き纏われてる訳じゃないんだぜ?」
人間と違い妖魔に『愛情』というものがあるのかどうか疑問だが白面九尾の行動も一種の愛情表現なのかもしれない等とはこの場にいる者達には考えもつかず、知る由もなかった。
千璃自身がそれを理解しているのかは、本人にしか判らない事だったのだから。
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