複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて ( No.35 )
日時: 2014/03/11 12:22
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: zWzUF/vQ)

  第参十壱話 蝕み


 大江山の頂上では朱羅によって破壊された現状の復興の為、幽魔の監視の元、瑠華がその能力で植林をしつつ木々を成長させ森林や御社を修復していた。

 「・・・なんでこの茨姫童子様がこんな事を。壊したのは朱天童子なのに・・・」

 木々を一気に大木に成長せながら瑠華はブツブツと文句を垂れる。
 
 「そこっ!手が休んでおるぞ!!お主にはこの山だけではなく他の山の修繕活動もやって貰うのじゃからな!!」

 幽魔が一喝して檄を飛ばす。

 「何でお前がアタシに命令してるんだ!関係ないだろ!!(このツルぺタ絶壁河童が!!)」

 「全部聞こえておるぞ!!お主の心なぞ駄々洩れじゃわ!!!」

 幽魔が手をかざすと瑠華の足元から噴水の如き鉄砲水が勢い良く撃ち出され、瑠華を空高く吹き飛ばす。

 「ぎゃあああああああああっ!!!やめ!あばばば!ぐぼぼ!!!」
 
 「はははっ、おーい、ちょとは手加減してやれって」

 それを横で切り株に腰かけ酒を飲みながら見ていた朱羅は笑いながら言う。

 「・・・朱羅よ、お主がそれを言うか?」

 幽魔達とそんな会話をしながら朱羅は酒瓶を口に運ぼうとして、突然右腕に鋭い痛みを感じ、酒瓶を取り落し割ってしまった。

 「痛ぅっ・・・!!?」

 その痛みは腕、そして肩、背中へと広がり、焼ける様な熱さを持った激痛になっていく。

 「どうしたのじゃ!?朱羅!何事じゃ!?」

 半身を庇う様に苦しむ朱羅の尋常ではない様子に気付き幽魔が慌てて駆け寄る。そして朱羅が抑え込むようにしている右腕の朱色の篭手をそっと外す。

 その腕の変わり様を見て幽魔の顔が引きつる。


 その腕は『蛇』の紋様が絡みつく様に刻まれており、まるで生きているかのごとく不気味に脈打っていた。しかもそれは腕だけではなく肩、恐らく背中の方まで続いているのが判る。

 むしろ、その『蛇』は背中の方から伸びて来ているかの様だ。



 「・・・朱羅。お主、『呪痕じゅこん』が・・・」



 そう呟く幽魔にただ苦い顔をする朱羅だった。