複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.40 )
- 日時: 2014/03/13 12:12
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: NWPS2NZD)
第参十六話 その者、狂暴につき
「!!!」
突然の可愛らしい双子の幼女の声と存在に驚きつつも同時に迎撃の体制を取ろうと掌を向けようとする千璃だが、
「遅ーい♪」
いつの間にか真上に出現した少女が頭上から拳を振り下ろす。その細い腕と小さな拳から想像できない程の凄まじい力が発生し衝撃波となり床板諸共、囲炉裏場を破壊する。
空間がぶれ、離れた場所に千璃が姿を現す。その腕に意識を失っている朱羅が抱かれている。
「くっ!こんなに早く嗅ぎつけはるとは・・・!やはり朱天はんの力に反応しはったようやな。・・・火硫草が裏目に出はったかも・・・」
苦しそうに呟く千璃。朱羅を抱く腕は血が滴っている。
「逃げるの上手だね、狐のお姉ちゃん♪」
真後ろからもう一人の少女の声。
零距離から勢いよく撃ち出された拳の衝撃波をもろに受けて千璃は御社の壁板を突き抜けて外へと吹き飛ばされた。
その瞬間、拘束が解けた幽魔達と頼光達。幽魔はすかさず両手で印を組み双子の少女達に照準を向ける。
「水連爆撃!」
瞬時に巨大な水弾が何発も撃ち込まれる。そして間髪置かず印を組み直し術を紡ぐ。
「氷刹結晶陣!!」
撃ち出された無数の水弾が一瞬で氷の結晶となり辺り一面を凍り付かせ銀氷の世界に変える。
「今の内じゃ!瑠華!朱羅を連れて逃げるのじゃ!!」
油断無く印を結んだまま幽魔は瑠華に叫ぶ。
「解ってるのだ!!」
瑠華は意識の無い朱羅を背中に抱えて外に飛び出す。
「・・・人間共、死にたくなければとっとと逃げるがいい」
幽魔は武器を構えて警戒する頼光達に一別する。頼光達は納得がいかない顔をしつつも外に退避する。
それを確認した幽魔が振り返ろうとした時、氷が砕け双子の少女達のしなやかで細い二本の腕が幽魔の腹を貫いた。
「がふぁっっ!!!?」
交差するように身体を貫かれた幽魔は大量の血を吐き、ガクリと項垂れた。
「いきなり氷漬けにされて凄く冷たかったヨ、ねえ、兎那♪」
「いきなり氷漬けにされて凄く寒かったワ、ねえ、須狗♪」
双子の少女が楽しそうに喋り、その腕を抜こうとするがびくともしない事に気付いた。
「あれ?ボクの腕が抜けないヨ、兎那?」
「あれ?アタシの腕も抜けないワ、須狗?」
首を傾げる双子の少女。
「くっくっくっ・・・ かかったな」
項垂れていた幽魔が血濡れの口元を歪め邪悪に笑う。
「「!!?」」
幽魔は素早く印を組む。
「轟氷爆砕必滅殺!!!!」
御社は凄まじい冷気の嵐に包まれ瞬時に凍り付き、鋭い氷の槍が無数に幾重にも貫き出て家屋を破壊する。
そして周りの森ごと巨大な氷の塊が辺りを覆い尽くした。