複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.45 )
- 日時: 2014/03/15 18:33
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: btsyIDbw)
第四十壱話 相対する者達・中編
幽魔と綱の激しい攻防の中、千璃と瑠華の前にも刺客が行く手を遮っていた。
「悪いが此処は、このあたい、碓井貞光様が通さないよ」
背丈を遥かに超える長槍を容易く片手で振り回し矛先を千璃達に向け、ニヤリと不敵な笑みを作る貞光。
「・・・オイラは坂田金時。あんた達に恨みは無いけど友達のために討たせてもらう」
その隣で巨大な戦斧を構える金時、だがその表情はどこか心伴い。
「う〜ん、あんさん等にかまってはる暇は無いんどすけど・・・。まあ、あちきの都合で無理矢理呼びはりましたから、少しだけお相手しまひょうか?」
千璃は困った様に人差し指を顎に付け、小首を傾げながら言う。
「お、おい、あたしは朱天童子を背負ったままだぞ?」
瑠華も困った様に小首を傾げる。
「・・・茨姫はん、戦いとは常に己との真剣勝負でありんす。逆境にこそ、己の潜在能力を開花させ、真の強者へと至りはるんどす!あちきは茨姫はんが新たなる伝説として語り継がれると信じてはるんどす!!」
千璃はその瞳に炎を宿し、燃える様な熱い眼差しで瑠華を見つめる。
「そ、そうか!?そうだな!これぐらいの足枷、あたしには屁でも無いのだ!!この状況を覆して、あたしは更なる強さを手にするのだ!!!人間がなんぼのもんじゃーい!!!!」
瑠華はメラメラと闘志を燃え上がらせる。
「その調子や!茨姫はん!!かっこいいっ!!(ちょろい♪)」
「作戦会議は終わったか?そろそろ、戦して貰うぜ?」
貞光が槍を構えて問うと、千璃は貞光達に振り返る。
全ての者を虜にする様な魔性の微笑で。
その微笑みを見た瞬間、貞光は、自身の『思考』が一瞬、空白になったのを感じた。
「!?」
それは刹那の間だった。
貞光が我に返り気付いた時、背後から彼女の首に白い艶めかしい腕を絡め、耳元に唇を寄せる妖狐の姿が在った。
千璃は囁く。
優しく、穏やかに、蠱惑的に、残酷に。
「・・・あんさん、『死相』が出てはるどすえ」
白魚の如き細指の爪は鋭利に伸ばされ凶刃と化し、貞光の喉元に添えられていた。
そしてその首を掻き切った。