複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて ( No.62 )
日時: 2014/03/24 02:58
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: lAbz4I/2)

 第五十八話 おおいなる力


 朱羅の発言に皆、一同に驚く。

 「朱羅様!?それ、本当か!?お願いだ!頼光を助けてくれ!!!」

 黄猿が土下座をし、頭を下げる。

 「朱天童子!!頼光様を、頼光様をどうか救ってくれ!!!」

 「私からもお願いします!!!どうかお願いします!!!」

 綱と卜部が必死に懇願する。

 「・・・あたいからも、頼む・・・もう、失いたくないんだ・・・」

 いつのまにか意識を取り戻した貞光が朱羅に頼む。

 千璃はそこではたと気づく。

 「あ!朱羅はん、体は何ともないんどすか!?妖力をほとんど感じまへんが・・・!」

 朱羅はニヤリと意味ありげに笑う。

 「問題ないぜ。蛇の毒が抜けたからな。むしろ、気分が良いくらいだぜ」

 そして人間達と黄猿に言う。

 「そんな顔しなくても助けてやるぜ。ちょっとそこをどきな」

 そう言って周りをどかせると、頼光の前に歩み寄る朱羅。右手を掲げ力を集中させる。

 「流れる血潮は猛き焔。燃ゆるは曇り無き己の魂」

 右手が燃えて激しく炎が巻き上がる。

 「形成かたちなすはまことなる神の御剣つるぎなり!!!!」

 燃え盛る炎は凝縮され、一振りの真紅の剣を創り出した。

 「・・・朱羅はん、それは三種の神器・・・」

 千璃の言葉に驚く卜部。

 「さ、三種の神器!!本当に実在してたなんて・・・!!」
 
 「ああ、天叢雲剣だぜ。俺様の力の源みたいなもんだ、でも」

 真紅の剣を逆手に持ち替え、事も無げに言う。

 「俺様にはもう、必要ないぜ」

 そして剣を頼光の胸に突き刺した。

 「「「「!!!!」」」」」 

 全員が驚愕して凝視した。

 突き立てられた剣は大きく燃え上がると頼光の胸に吸い込まれていった。

 炎が収まると頼光の傷は跡形も無く消えて無くなり、静かな呼吸音が聞こえてくる。胸の肉腫があった部分はその痕跡も無く少女の柔肌に戻っていた。

 「あ、ありがとう!!朱羅様!!オイラ優しい朱羅様が大好きだ!!」

 黄猿は感激し朱羅に抱き着く。

 「・・・感謝する、本当に感謝する・・・」

 綱は涙を流し何度も礼を言う。卜部も貞光も涙を浮かべている。

 幽魔は腰に腕を当て憮然とした態度で朱羅に問う。

 「朱羅よ。お主、妖力が無くては戦えんだろうが。どうするつもりじゃ?」

 それを聞いて瑠華が得意げに言う。
 
 「ふふふ、あたしが守ってやるのだ。感謝するがいい!これからは、あたしを師匠と、うげっ!!」

 千璃は瑠華を尻尾で首を締め黙らせ、心配そうに朱羅に聞く。

 「朱羅はん、どうするおつもりどす?」

 ここに残っているのはほとんど戦えないものばかり。瑠華と黄猿だけしかいない。

 朱羅は再びニヤリと笑う。

 「くっくっくっ、俺様を誰だと思っていやがる。俺様は『朱天童子』だぜ」

 そして空中にいる両面宿儺を不敵な笑みで見上げる。