複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて 【第二部開始】 ( No.68 )
日時: 2014/03/31 22:34
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: QgoEX629)

 第弐話 そいつの名は朱天童子・中編


 一瞬にして赤鬼の巨躯が燃え尽きた。

 紅蓮の焔が全身をぶすぶすと焦がし消し炭に変える。

 突然の自分たちのボスが人間の女に殺され焼かれてしまった。すぐに女に報復すべきだが、身体が動かない。

 それは本能的な畏怖。

 眼前の朱髪の女から放たれる、殺気。

 女の赤い双眸。髪は燃えるように逆立ち、歯をむき出す。

 まさに激昂。もの凄く怒ってるのが判るがそれが何に対してなのかは妖魔たちには最後まで解らなかった。

 そして右手に燻らす炎を妖魔たちに叩き付けると、妖魔たちは断末魔の悲鳴を上げて一匹残らず消滅した。




 「・・・ああ、胸糞悪りぃぜ・・・。これで何匹目だ・・・?」

 朱羅はうんざりして言う。

 「お主を語る輩が多い事、多い事。もう数えておらん」

 幽魔も呆れて言う。

 「それだけ朱羅はん名が知れとるんどすなあ。有名税だと諦めや?」

 「あたしを語る奴がいないのは何故だ!?」

 千璃が朱羅を慰め、瑠華は愕然とする。

 「嗚呼、朱羅様。お怒りになる御姿も素敵です・・・」

 「さすが朱羅様、瞬殺だね!」

 燕黒がうっとりとした眼差しをし、黄猿が憧れの眼で見る。

 「あの程度済んで良かった、良かった」

 「俺たちも燃されるかと思ったぞ」

 竜星と虎熊がほっとしたように言う。


 朱羅たち一行は夜魔堕大蛇の本拠地、比叡山に向かっていたのだが、行く先々で襲ってくる人間の盗賊、下等妖魔に出くわして、お世辞にも順調な旅路とは言えなかった。

 「ああああ、面倒だぜっ!!片っ端から焼き尽くしたい!!!」

 「これこれ、癇癪を起すでないぞ」
  
 朱羅は地団駄を踏み、幽魔がたしなめる。

 美女ばかりの女六人、男は除く。兎に角目立つのだ、絡まれないというのは無理な話。このまま進んでもまた不逞の輩が現れるのは目に見えている。

 ならば・・・。

 「それぞれ別行動で比叡山を目指すというのはどうでっしゃろか?」

 突然の提案に皆、彼女に注目した。

 千璃はにやりと意味深に微笑んだ。