複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて 【第二部開始】 ( No.69 )
- 日時: 2014/04/06 01:54
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: rWLc9jDy)
第参話 そいつの名は朱天童子・後編
「えへへへ♪朱羅様とふたりきりなんて凄い久しぶりだな♪」
「そうだな。お前との付き合いも随分長いもんな、黄猿」
朱羅と黄猿はふたり、ゆったりと街道を行く。
しかし周りには他の仲間の姿が見当たらない。
これはどういう事なのか。
話は数時間前に遡る。
「クジ引き?」
朱羅が首をかしげる。
みんなも首をかしげる。
千璃はここぞとばかり、得意げに話し出す。
「そうどす。このまま大人数でいても、また訳のわからん阿呆がわんさか寄って来はります。そこで、人数を分けて旅を再開します。少人数で行動すれば目立たず、『蛇』の監視や追手からも目を付けられ難いどす」
「なるほど、それで同行人を誰と組むのかクジで決めるのじゃな」
幽魔が手を打って言う。
「えっ?でもわざわざクジなんて使わなくても適当に決めればいいんじゃないか?」
瑠華が疑問顔になる。
「ふうっ・・・、瑠華はんは分かっておりまへんなあ。これは戦争どすえ?悲しいけれど。愛しい人とふたりきりになれる絶好の機会なんどす・・・!!」
千璃がチラチラと赤い顔で朱羅を盗み見る。
「?」
キョトンとする朱羅。
「その案乗りましたわ!!」
「オイラも!!」
燕黒と黄猿が身を乗り出す。
「儂は誰でも構わん。好きにしろ」
「あたしも別にいいや」
幽魔と瑠華は不参加。
男たちは論外、会話も無し。
「んじゃ、俺様は・・・」
朱羅が輪に入ろうとするが。
「景品は控えてくださいな!!!!!」
「!!? お、おう?」
千璃に一喝されて、たじろぐ。
千璃、燕黒、黄猿が火花を散らす。
千璃が用意した木の小枝、三本。当たりには印が付いている。
(くくくっ、ここには当たりはありまへん!!さあ、早く引いて敗北しなはれ!!!そして最後に残ったあちきが当たりをすかさず取り出して勝者に!!!!)
千璃は心の中で邪悪な笑みを浮かべた。
「じゃあ、最初に千璃さんが引いて。言い出しっぺだからね」
「そうです。先攻をどうぞ」
「え?」
千璃はハズレ棒を手にしたまま地べたに突っ伏していた。
「これで一対一ですわね、黄猿」
「負けないよ?オイラ」
新たに用意したクジ棒を間に対峙し、睨み合うふたり。
そして、決着の時が訪れた。