複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて 【第二部開始】 ( No.71 )
- 日時: 2014/06/14 07:43
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: WRKciX17)
第五話 旅は道連れ、世は行き当たりばったり(中編)
街道の手前で立ち止まるふたりの女性。
「ん? こんな所で分かれ道か。正しい道はどっちだと思う、黄猿?」
朱羅が小首をかしげ、隣の黄猿に問う。
「・・・う〜ん、多分右に行けば比叡山だと思うけど・・・何だろう? 妙な感じがして上手く方向感覚が働かない・・・? 何か結界らしきものが張られているみたいだけど・・・」
黄猿が腕組み、ふたつの枝分かれした街道の先を見詰める。何者かが意図して巧妙に術を掛けているのが解った。
これは噂の天狗の仕業なのか?
ふたりがそう思った時、街道の茂みの脇からひょっこりひとりの少年が現れ顔を覗かせた。
「・・・お姉さんたち。もしかして『此処』を通りたいのですか?」
山伏の格好をした十二、三ぐらいの歳の少年は辺りをキョロキョロ見渡しながら近付いてきた。
「まあ、そうだな。此処を抜けたいのだが、どっちに進めばいいのか考えていたとこだ。坊主は何か知っているのか?」
朱羅が少年の前に立ち、尋ねる。
その拍子に着物からも隠される事無く押し上げる豊満な二対の頂がブルンと自己主張するのを少年は凝視し、ゴクリと唾を飲み込み顔を赤くした。
「あ、はい。おふたりは此処を抜けたいのですね・・・ですが、この道はどちらも峠を抜ける事は出来ません・・・残念ですが引き返して別の道を探してください」
少年は申し訳なさそうに頭を下げて言う。
「・・・どういう事? 君は何でそんな事知ってるの?」
黄猿が訝しみ、ジロッと睨む。
少年は一瞬、怯むが再び頭を下げる。
「ご、ごめんなさい! 詳しい事は言えませんが、おふたりの安全のために此処は通る事をお勧めできません!! お引き取り下さい!!」
「・・・ふぅん、術で誤魔化してるが、この微かな匂い・・・坊主は『天狗』の一族か・・・それもまだ若い見習いの類か」
朱羅がにやりと笑う。
「え!? な、何故それを!? まさか、貴方たちは人間じゃない・・・?」
正体を看破された少年は数刻放心していたが、慌てて背中から黒い翼を生やしその場から飛び立とうとした。
しかし————
「おっと、逃げる事はないぜ。坊主には聞きたい事が山ほどあるからな」
いつの間にか少年をその艶肉の双球の谷間に顔面を埋めさせ、拘束する朱羅。
「!!!? ふがが!? うぅぐぐっ・・・!!!」
何が起きたか理解するのに時間を要した少年はジタバタと朱羅の腕の中で暴れるがやがて抵抗は止み、大人しくなった。
「朱羅様、何だか様子が変ですよ」
黄猿が抱き抱えられた少年を視て言う。
「あれ?」
少年は朱羅の胸に埋まり、盛大に鼻血を流しながら顔面蒼白で失神していた。
だが、何故か恍惚の表情だった。