複雑・ファジー小説

Re: 朱は天を染めて ( No.8 )
日時: 2014/03/09 11:51
名前: Frill (ID: TW1Zh9zP)

 第六話 朱天童子討伐作戦


 「ようこそおいでくださいました。源頼光様、渡辺綱様」

 頼光と綱は朱天童子の話を聞くため都のはずれにある陰陽寮に訪れていた。陰陽寮は陰陽師の育成、術の開発、妖魔の研究が行われ最先端の技術と情報が交錯する場所である。

 「ここが陰陽師達の最後の楽園、陰陽寮か!凄いっ!!ねえ、綱!良く判らない物がたくさんあるよ!!」

 「あんまりはしゃぐと転びますよ、頼光様」

 はしゃぐ頼光とそれを微笑ましくたしなめる綱の前に白い外套を頭から被った怪しい人物が現れる。

 「お初に御目に掛かります。私は、卜部季武(うらべの すえたけ)と申します。お話は伺っておりますゆえ、こちらで詳しく・・・」

 卜部と名乗る陰陽師に二人は来賓室に案内される。




 

 
 「では、朱天童子にその『神酒』を飲ませ、弱らせた後に討伐という事ですか、卜部殿」

 来賓室に案内されお茶を飲みながら話をする。

 「ええ〜!?鬼を弱らせちゃうの?僕、つまんないよー!」

 朱天童子を討伐する作戦を聞いて駄々を捏ねる頼光。

 「頼光様、朱天童子は謎が多く実力が不明な妖魔です。確実に倒すためには必要なのですよ」

 外套を外し美しい素顔を晒した卜部が困ったように頼光を説得する。

 「頼光様、卜部殿を困らせてはなりませんよ。それに必ずしも策がうまくいくとは限りません、その時は頼光様の御力が頼りなのです」
 
 綱がふてくされる頼光を慰める。

 「・・・綱がそう言うならそれでいいよ」

 大人しくなった頼光に内心溜息をしつつ、卜部は直轄の上司にこの作戦を完遂せよとの理不尽な命令を受けた事を思い出す。

 朱天童子という鬼が無類の酒好きというのは噂で知っているが本当にこの作戦がうまくいくのかどうか疑問だ。

 

 卜部は心の中でもう一度大きな溜息を吐いた。