複雑・ファジー小説
- Re: 朱は天を染めて ( No.9 )
- 日時: 2014/03/07 20:10
- 名前: Frill (ID: HW2KSCh3)
第七話 それでも彼女はやって来る
「朱天童子っ!『茨姫童子』様が来てやったぞ!!尋常に勝負しろ!!」
大江山の頂上にある立派な御社の縁台に寝転がり酒をチビチビ飲んでいた朱羅の前にピンク髪のツインテールの小柄な美少女が現れた。
三本の緑色の角があることから鬼の一族のようだ。
「あれ?瑠華、お前は都に行ったんじゃなかったのか?」
寝転びながら朱羅が訊ねる。
「行ったぞ!そしたら変な人間共に襲われて、腕を斬られた!滅茶苦茶痛かったぞ!あっ、腕は新しいのが生えた」
瑠華と呼ばれた鬼の少女は何故か偉そうにその残念な胸を反らし得意げにしている。
「瑠華、わざわざ他に行かなくても此処に住めば良いじゃないか?此処はもともとお前の山なんだから」
かつて大江山を支配していたのは瑠華だったが後から来た朱羅が瑠華を倒してしまったので山の支配権が変わってしまったのだ。
「それは駄目だ!朱天童子!!好敵手であるお前の情けは凄く嬉しいがそれに甘えてしまってはこの『茨姫童子』の名折れ!お前との勝負に勝ってこそ真の強者となるのだ!!」
拳を天に掲げ熱く語る少女にポリポリと頬を掻く朱羅。
「じゃあ、もう一度勝負するか?」
「本当か!?よし、やろう!いますぐ闘おう!!」
朱羅の言葉に飛び跳ねて悦ぶ瑠華。
御社から少し離れた開けた場所。
朱羅と瑠華の二人が対峙している。
吹き荒ぶ風、足早に流れる雲、陽光に照らされた二人の影が長く伸ばされてゆく。
「ふふふ、この時をどれ程待ち望んできたことか・・・!覚悟しろ!朱天童子!!喰らえっ!必殺」
瑠華が朱羅にビシッと指を突き付ける。
そして格好良く構えを取り、技を使おうとするが、
「爆炎滅陣」
朱羅が指を鳴らすと瑠華の足元から炎が噴き出し包み込んだ。
「ぎゃあああああああああああああああああっっっっ!!!!!!」
茨姫童子は一瞬にして燃え尽きて消滅した。