複雑・ファジー小説

Re: 猛獣を手繰り寄せる、瞳のさきには。 ( No.8 )
日時: 2014/04/29 14:57
名前: 羽瑠 ◆hjAE94JkIU (ID: ouuVQhrA)

参照100突破記念。
まさかこんなにも、早く突破するなんて。
感謝。感謝の言葉に尽きます。
そんな信愛なる読者の皆様に。
めいいっぱいの感謝の意を込めて。
連載小説「記憶の断片。」との連動企画、第2弾!
「記憶の断片。」の番外編を、どうぞ。

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Ege In Frame_2 どおして。死んじゃったのかな。<rin>[*閲覧注意]


「りん。だから、ダメって言ったでしょう?」


わああ。またやってしまった。
りんの零したジュースのせいで。ぐっちゃぐちゃの。つくえ。
テーブルクロスを、また。洗わないといけない。
お母さん。ごめんなさい。いつまでたっても。
成長できなくて。ごめんなさい。
ぽたぽたと涙を流す。
なんだか、最近、泣くことがやけに多くなった。
悔しいのだ。年下の弟でさえ、こんな失敗はもうしない。
お兄ちゃんなんか。当たり前だ。
どおしても。りんだけが上手くできない。
そして、何故だか最近。お母さん機嫌がわるい。
パートだの家事だの育児だの、で。
すっごく疲れているみたいだ。
そんな時に、りんが迷惑かけてるみたいで。
ごめんなさい。ごめんなさい。


「これで。何回目だと、思ってるの……?
 さすがに、今日はお仕置きです」


え。なに、なに。それ?
りんを無理やり引っ張るお母さん。
いやだ。いやだ。いやだあああ。
ぼろぼろ泣きながら、抵抗をする。


まだ、寒さの残るお外へと放り出す。
えええ。うそでしょ?するりとドアが閉まる。
ガチャン。鍵がしまる音。







__……もしかして。りん。できそこないだから、
  お母さんに、見捨てられちゃったのかなあ……?__







そう想うだけで、涙が止まらなくなる。
おかあさん。お母さーん。おかあさん……!
もう、悪いことしないから。お願いだから。
おうちへ、入れてよ?りん、さぶくて死んじゃうよ。
ばんばんばんばん。ドアを叩く。
いっこうに、開く気配が無い。
びっくりするほど。ない。



どおしよう。どおしよう。どおしよう……!
わんわんと泣く。りんは、ひとりぼっちになっちゃうの?




唐突に、黒い物体が。りんの目の前を通り抜ける。
……ああ。あれは黒猫さん。りんの大好きな、くろねこさん。
今日は、追っかけてみようか。どこまでも。




涙を拭いて、立ち上がる。歯を食いしばる。
べつに。りんは、ひとりでも歩けるんだから。
お母さんが、想ってるよりも。とっても。とーっても。
つよい子なんだ、って証明してみせる。


黒猫さんは、住宅街をするりするりと駆け抜けていった。
やっぱ。くろねこさんは、とっても素敵だ。
りんも、こんな風に軽やかに生きてゆけたら良いのにな。
垣根を抜け。塀のうえと。歩き。
しっぽで、バランスをとって。
楽しくなってきて、わたしはいつまでも。
黒猫さんのあとに、付いてゆく。


気が付けば。見慣れた住宅街を抜け。
おおきな幹線道路まで。来ていた。
不安だけども。その時にはもう。
楽しさの方が。りんのこころのなかを支配していて。
黒猫さんは、おおきな幹線道路を、わ、た、る……、


「くろねこさん、あぶないーーーっっ!」


気が付けば体が動いていた。
黒猫さんを、道路の真ん中から。
外へそとへと。めいいっぱいの力で押す。
軽いからだの黒猫さんは、ふわっと。宙を舞う。
碧い瞳が、びっくりしていた。
ああ。やっぱり黒猫さん。あなたは美人だ。
気が付けば、りんは。道路のど真ん中。




あれは。ものすごくおおきな。トラックだった。
ぎいいいいいいいい。ぎいいいいいいいいい!
タイヤが擦れる音が。耳を塞ぐ。
怖さは、存在しなかった。茫然と立ち尽くしていた、だけ。
よく。憶えていないけど。痛さもなかったと、想う。
あまりにも。あっという間の出来事で。
りんは。何が起こったのかも、全然覚えていない。
そして。いまも。全然理解できていない。







とりあえず。黒猫さん、ありがとう。
りんは、くろねこさんに救ってもらった気がします。
ほんとうに。ほんとうに。ありがとう。

                    End.