複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.100 )
- 日時: 2014/04/28 13:41
- 名前: 姫凛 (ID: WfwM2DpQ)
「あの」
ヒスイはカンフー兄弟の目の前で止まり声をかけた。
「アァ?」
「なんだネ、チミは?」
兄カンは凄まじい形相でヒスイを睨みつけ、弟フーは口を突き出しむぅ〜と体ごと傾けヒスイを睨みつけている。ヒスイは黙ったままだ。
「おいっ、カン。コイツ、ワレらに殺されたいようダ!」
「フッ、命知らずなヤツめ」
「おーーと、極悪カンフー兄弟はなんとっ!可憐で可愛らしい、盲目の少女に狙いを定めたようだーー!」
カンフー兄弟はポーズを構え、戦闘態勢へと入る。ヒスイは黙り立ったままだ。ヒスイが危ないっ!ルシアンがそう思ったその時だった、
「ごめんね」
ヒスイが口を開き何故かカンフー兄弟に謝った。カンフー兄弟もなにがどうゆう意味なのかわからず、首を傾げ顔を見合わせる。
「これから、私が貴方達にすることを、先に謝っておくね」
「コレカラ、する事…だト?」
「コレカラ、される事の間違いネ」
カンフー兄弟はヒスイが言う事を全然聞かず、真正面からいつもの連携プレイでヒスイに襲い掛かろうと飛び上がった。
ヒスイは手に持っていた棒切れの様な物をゆっくり、体の手前に持ってきてスーと抜き去る。すると、中からは銀色に輝く刃先が現れた。
「あれは…?」
「……日本刀!?」
「にほんとう?」
「はい、和の国特有の武器です。主にサムライが使っていると言われていましたが…」
「えっ?じゃ…ヒスイさんは、サムライ?」
「…たぶん」
見物席ではルシアとムラクモがヒスイについて話していた頃、リングでは決着がつこうとしていた。
「貴方達になんの恨みもないけど、さようならっ」
「ガハッ……」
「ゲハッ……」
ヒスイはその場から一歩も動かずに、カンフー兄弟を一瞬で撃破した。カンフー兄弟の胸からはドクドクと大量の血が流れ出している。リング上にいる猛者共はカンフー兄弟の死体?見てヒィィとさらに震え上がっている。
「ォ……オォォォォォ!!」
「な、なんということだーー!!極悪非道なカンフー兄弟に狙われ悲劇のヒロインだった、盲目の少女が兄弟を一撃で倒してしまったーー!!何者だー、あの少女はーーー!!?」
「「な、なんだあのガキはー!?」」
会場は一気に盛り上がる。観客たちはヒスイに惜しげの無い拍手を贈り、もっとやれーと殺せと要求している。
だがヒスイは……
「……」
「「なんのまねだ…?」」
日本刀を足元に置き自分は、武器は持っていない戦う意思がないと手をあげ
「どうか、武器を置いて、私はこれ以上、闘うつもりはない」
とリング上にいる猛者達全員に聞こえるように言った。だが当然
「おーと、これは命を助けてやる代わりに、棄権しろコノヤロー宣言かぁーー!?」
「「ブーブー!!」」
「なんという、つまらない発言でしょうかーー!!」
観客たちはヒスイにブーイングの嵐を浴びせる。
「つまらないって、人の命をなんだとっ!!」
ムラクモは司会者に文句を言ってやろうとした、ルシアの肩を掴み黙ったまま首を横に振った。ルシアは行き場のない怒りは地面にぶつけた。
「こんなところで…」
「此処までやっとこれたのに…」
「今更負け犬なんてレッテル張られたりしたら…」
「「俺達は終わりだーー!!そんな事されてたまるかよっ!!」」
追い込まれた猛者達は逆ギレしだし、
「「偽善者めっ!」」
「……どうして?」
「みんなーーこの偽善者を殺っちまおうぜーー!!」
「「おおーーー!!」
「「やっちまえぇーーー!!」」
変な方向で意気投合し百三十五人、全員で一気にヒスイに襲い掛かって来たのだ。観客たち達や見物人も殺せ、殺せと一斉に言っている。
いくら強いと言っても一度に百三十五人を相手にするのはさすがに無理がある。ヒスイ本人も死を覚悟しそれを受け入れたその時、
「フーーーー」
何処からか冷たい風が吹いてきた。その時は少し肌寒いな、程度だったのだが一秒後、それは凍てつく風と変わりヒスイ以外の百三十五人は皆、生きたまま氷のづけにされてしまっのだ。なにが起きたのか誰にもわからず数秒間、無の間があった後トゲトゲしく冷たく感じる女の声が……
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.101 )
- 日時: 2014/04/29 14:48
- 名前: 姫凛 (ID: GlabL33E)
「ほんま、怖い人達やわ。こんなか弱い少女大人数で襲い掛かるやんて…」
「あ、あのお方はーー!!」
「やはり来たか」
「ふーん、あのおばさんも来たんだっ」
トゲトゲしい言い方をしリングに現れたのは、濃い紫色の髪で美しい着物を着た一見遊女のような出で立ちの女。
「我らドルファ四天王が一人、裏社会のボス、ナナ様だぁーー!!」
「「キャー!ナナ様だわー!!」」
「「おぉナナ様だ、なんと今日も美しい…」」
「あの人ってたしか…」
ドルファ主催のパーティーで司会をしていた女の人だとルシアは思い出した。あることに疑問を持った。そもそもドルファ四天王ってなに?と。
「ドルファ四天王…?」
その思いがつい口に出ていたみたいで、隣に居たムラクモが教えてくれた。
「ドルファが雇っているプロの始末屋です」
「えっ!?始末…って殺し屋ってことっ!!?」
ルシアが目をまん丸くして驚いているとムラクモはクスクス笑い出し、笑いながら
「クスクス……冗談です」
「な、なんだ…」
ルシアは少しホット胸をなでおろす素振りをした。さすがにムラクモが言っていることが冗談なんかじゃなく、真実ではないのかというくらいは分かる。
今まで散々殺し合いを見さされたのだ、こんな悪行を行っている企業が白く潔白のわけがない。…でもムラクモは真実を知らず、騙されているんだと思いたいルシアだった。
「じゃあナナさん…ユウさんの他に…あと二人いるの?」
「そうでしょうね。四天王ですから」
「そ、そうですよねっ!四天王ですからね…!」
「………?」
少しムラクモが不思議そうな表情をしていたが、あはは〜と変な笑い方でその場を何とかごまかし、収めた。
ルシアは心の中で、ムラクモはあと二人の四天王の一人に入っていませんように…と女神に祈った。
突然リングに現れたドルファ四天王一人、ナナはゆっくりとした足取りでヒスイに近寄り、いつもからは想像も出来ないような優しい声で
「大丈夫やったか?ヒスイ」
と声をかけた。ヒスイは答える代りにこくんとと頷いた。その後ナナはユウ、次にムラクモ、そして最後に
「…え?」
ルシアを睨みつけた後、ヒスイと一緒にリングを出て行った。その後、係りの者が生きたまま氷漬けになってしまった、猛者達を回収する。だがもう彼らが生きて今までどうりに生活することはない。海に捨てられるか、死体置き場に捨てられるかだ。
ここでは“敗者に用はない”
リングと参加者控え室をつなぐ間の通路。今は誰もいない。コツコツとヒスイが日本刀の鞘で地面を叩いている音がだんだん近づいてきている。
「…二階席におった坊ややね」
不意にナナが自分の斜め後ろを歩くヒスイに向かって、振り返らずに行った。
その声は先ほどリングでヒスイにかけたていた優しい声とは違い、いつもの冷たくトゲトゲしい攻撃的な声だった。
「…はい」
「そうか、あの坊やが…」
ふーんと少し不気味な笑みを浮かべた後、ナナは振り返らずに続けて
「そのまま監視を続けてときぃ」
「…はい」
ルシアをそのまま監視続けろとヒスイに命令したのだ。どうやらヒスイとナナはただの知り合いと言うわけではないようだ。
「そうや。あとチャンスがあれば、ムラクモは殺しとくんやで?」
「……」
「あいつはいずれ妾達の敵になるさかいに、返事は?」
「……はい、わかりました」
「まぁ、殺るときは慎重にな。あんたもわかってると思うけど、あいつは一筋縄ではいかんさかいからね」
「…はい」
「それじゃ、頑張りや。ユウも中々に、強いさかいにね」
「…はい」
参加者控え室手前でヒスイはナナと別れ、何事もなかったかのようにルシアとムラクモの元に戻った。
ごく普通にいつもどうりの自然な態度、話し方、で二人に接した。当然のようにルシアはコロッと騙されて、次僕の番だから頑張るよっと元気いっぱいにリングへ向かって行った。
ルシアの出場したcブロックと名もなき戦士たちが出場したDブロックでは、対して面白い事が起きなかったため割愛。
「えぇーーー!!?僕あんなに頑張ったのに…」
cブロックで勝ち上がったのは当然、ルシア。
Dブロックで勝ち上がったのは名もなきモブ。
彼はモブ過ぎて没となり、そのショックでコロシアムから逃げ出た負け犬となり、そして星になったとしておこう。
そしていきなりだが決勝戦から物語は始まる——