複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.111 )
日時: 2014/09/27 11:24
名前: 姫凛 (ID: mSfFkU1O)








第五章 美しき雌豚と呼ばれた少女-シルの封じた過去編-






アリーナコロシアム、景品受け渡し所。

「「シルさんっ!!」」
見事、狂気に狂ったドルファ四天王が一人、ユウを打ち負かしたルシアとヒスイはコロシアム出口に用意されてある、優勝景品受け渡し所にやってきた。
受けた渡し所の中央には、四角い猛獣用の檻の中でグッタリと倒れている、シルの姿があった。その腕には手錠がかけられている。
シルの姿を見るなりすぐにルシアはシルの元に駆け走った。ヒスイはコロシアムの従業員から、檻のカギと手錠のカギを受け取った。
ガチャリと檻の扉を開き、ルシアはグッタリと倒れこんでいるシルを抱きかかえた。
「シルさんっ!」
「………ルシアさん」
シルは弱弱しく、ルシアに抱き付き小さな声で「ありがとう、ありがとう」と感謝の意を伝えた。


『あらあら〜まぁまぁ〜、ずいぶんとなかつつましいことですことぉ〜』
「えっ!?」
突然頭の中に何者かの声が響いた。
甘く気だるくかつ、ハイテンションで少しウザ臭がするこの声は……

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.112 )
日時: 2014/09/29 10:44
名前: 姫凛 (ID: f..WtEHf)





この声はまさか…!?
「パピコさん…ですか?」
『ウフフフ』
頭の中にパピコの高笑いが響き渡る。中々の頭痛が…。
「…?どうしかしたの、ルシア」
苦い顔をするルシアに違和感を感じたヒスイは心配そうに尋ねた。
「えっ?あ、いや、なんでもないよ」
「…?」
ヒスイはまだ納得がいかないと言いたげな表情をしていたが、とりあえずは理解してくれたようだ。
『フンフンフ〜ン』
パピコの鼻歌が聞こえる。
どうやらパピコの声はルシアにしか聞こえないようだ。何故だろう。
パピコと面識があるのはルシアだけだから、だろうか。それとも…不思議に思ったルシアはパピコに聞いてみることにした。
『パ、パピコさん』
『パイ〜?』
『どうして僕にだけパピコさんの声が聞こえるんですか?』
『それはですね…』
『それは…』
ゴクリと唾を飲み込む。意味深に間を貯めに貯めた後、パピコは重そうに口を開いた。


そして
『それは、私とご主人様の愛の力がなせる技でございます!!』
『………』
シーーーーンと重たく冷たい空気があたりを包み込む、数時間に感じられるくらい重たい数秒間後…
『チッ、こんなんじゃ騙されないかっ』
パピコの聞こえたは行けない心の声が聞こえて来た…。
なんか聞いてはいけないものを聞いてしまったという罪悪感を感じた、純心な心の持ち主のルシアはパピコが言った事を気にせず必死に忘れる努力をすることを決めた。
『ハイハイ、嘘ですよー。本当はご主人様に差し上げた、ブレスレットの効力です』
『…ブレスレット?』
シレーナがプリンセシナで彼女自身が無意識のうちに封じた過去と向き合わせ過去を乗り越えた際、帰り際パピコが引き皆笑みを浮かべて渡してきたブレスレットの事を言っているのだろう。
あの時のパピコの笑みがあまりにも不気味だった為、ルシアは言われたとおりはなみ放さず身に着けていたのだ。


『はい、ご主人様がはなみ放さず大切に扱ってくださったので、ブレスレットに魔力が宿り、プリンセシナ外での意思疎通が出来るようになったのです』
『なるほど…あ、じゃあランファともこうやって会話していたんですか?』
『いえ』
ルシアの質問にパピコは即答で答えた。パピコの迷いのないキッパリとした返事にルシアはビックリしてしまう。
『私あのガキ嫌いです』
『ハ、ハァ…』
『ですので、必要最低限の事しかお話しませんわ』
『………』
改めてランファとパピコの仲の悪さを知ったルシアであった。なんか女の子は複雑だなぁ〜と感じ思った。確かにルシアの周りにいる女子達は皆、個性的かついろいろ複雑な思いを抱えている物ばかりだ。


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.113 )
日時: 2014/09/30 14:37
名前: 姫凛 (ID: g3crbgkk)







『まぁそんなことよりも、ですっ』
『…?』
先ほどまでのオチャラけた会話から一転し重々しい口調になる。
『今ご主人様に抱き付きやがっている、その小娘!』
『えっと…シルさん?』
『名前なんてどうだっていんです!キィー、私なんてまだ手も握ったことありませんのにぃーー!!』
『………』
パピコが悔しそうに歯を食いしばっている姿が目に浮かぶ。
ちらりとシルへ視線を落とすと、シルは苦しげに呼吸している。額には冷や汗が。
『その小娘。デスピル病に感染しています』
「えっ!?」
「やっぱり、なにかあったの?」
パピコの言葉に驚き、思わず声に出てしまった。何かを察しているような口調でヒスイはもう一度、ルシアに尋ねた。
だがルシアは「なんでもないよ」と愛想笑いで言い、その場をごまかした。
いざ説明しようにもどういったらいいのかわからないからだ。説明するにはまずデスピル病の存在や脅威からしなければならないだろうし、第一まだシルが本当にデルピル病に感染したのかわかっていない、憶測で皆を混乱させるのは良くない事だ。
『…本当なの?』
『本当です。とゆうか、何故私が愛するご主人様に嘘をつかなくてはならないのですか!!』
いや…さっき嘘ついてたような…と心の中でひっそりとルシアは思った。
『……なにか?』
何故かその思いはパピコにバレていた。「なにか?」の一言は、パピコからは聞きたくなった、と思うくらい強烈的に精神に恐怖を受け付ける声だった。


『と、とりあえずヒスイに相談してみるよ』
パピコが言うにはデスピル病は感染すること自体は、人体になにも危害はないらしい。だが一度発病してしまえだ、光の速さで病魔が広がっていき穢れ化するらしい。
シルはまだ感染状態。前にデスピル病にかかったシレーナとは違い、まだ穢れ化まで少々の猶予がある。
まずは慌てず、深呼吸をしシルを安全な場所へ運び、自分自身の疲労ももちろんだがヒスイの協力及び精神的有職をし万全な準備をしてから、シルのプリンセシナへ向かう事となった。


「ヒスイ」
「…うん」
「シルさん」
「……ぅ」
ヒスイは静かに返事をし、シルは力を振り絞り小さく返事をした。
ルシアは大きくスゥーハァーと深呼吸をした後、
「僕がこれから言う事、信じられないかもしれませんが聞いてください。大事な事なんです」
「「…………」」
二人にデルピル病の脅威とこれまでの旅で学んだことを必要な部分だけかいつまみ伝えた。
途中色々反論などが来ると思っていたルシアだったが、以外にも二人は最後まで静かに聞いてくれた。二人とも少しながらにもデスピル病の事を知っていたようだ。