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複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜復帰! ( No.129 )
- 日時: 2017/01/31 12:56
- 名前: 姫凛 (ID: sxkeSnaJ)
第六章 闇と欲望の国-アルトの封じた過去編-
ガポー
「うわぁー 高い〜」
「すごーい」
ルシア達ご一行は上空三千メートルを跳ぶ飛行船の中。
窓から見える景色に、ルシアとシルは無邪気な子供のように大興奮だ。
「二人は飛行船初めて?」
「はい」
「うんっ こんな鉄の塊が空を飛ぶだなんてびっくりだよ!
落ちたりしないのかな?」
「ルシアさん 怖い事言わないでください。もし本当に落ちたらどうするんですかっ」
「あわわっ ごめんなさい」
二人の愉快なやり取りにヒスイは思わず口が緩む。
「この飛行船は仮面の科学者達が今現在の科学技術をすべてつぎ込んで作ったハイテク機なんだよ?」
「「へぇー そうなんだ」」
ルシアとシルから驚きが止まらない。
ずっと森の中でヨナと二人きりだったルシアにとって、外の世界は驚きの連発だ。
[仮面の国〜当機は旅の終着点 仮面の国へと着陸いたします]
「着いたみたいだね」
飛行船はゆっくりと着陸した。ルシア達は飛行船の出入り口に向かう事にした。
出入り口では仮面の国への入国審査が行われているようだ。
検査官っぽい服装の男二人が出入り口を塞ぎ 飛行船に乗っていた客を一人一人 ボディチェックしている。
「はい。おけぃ。次ー」
チェックはベルトコンベヤー作業のように緩やかに 速やかにささっと済まされ客達はどんどん飛行船を下りてゆく。
「じゃ僕たちも…」
入国審査を受けようと続けようとしたルシアの言葉をヒスイが遮る。
「待って」
「え?」
「こっち」
何故かヒスイはルシアの手を引き出入り口は反対方向へと連れて行く。
不思議に思いながらもシルも二人のあとをついていく。
ヒスイは盲目の少女。いつも歩くときは杖が欠かせない。
なのに今は杖なしで飛行船内を駆け足で行く。飛行船の業務員たちにみつからないように 慎重にそして大胆に。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜復帰! ( No.130 )
- 日時: 2017/01/31 13:55
- 名前: 姫凛 (ID: sxkeSnaJ)
「ここ」
ヒスイが立ち止まったのは飛行船の一番後方にある従業員用出入り口だった。
「ここから出よう」
「どうして?怪しまれる」
少しヒスイへの警戒心をあらわにシルが訊く。…がヒスイはなにも答えない。
ヒスイにはヒスイなりの考え合っての行動なんだろうとルシアは、考えることにした。
ヒスイのいう通りに従業員用出入り口から出て、ランファ達との待ち合わせ場所へと向かうことにした。
「あーー!!ルーシーアー!」
待ち合わせ場所に着いた途端、ランファが大きな声で手を振りながらルシアを出迎えてくれた。
「ランファ!それにシレーナとリアさん! みんな無事だったんだね」
ランファの傍には、もちろんシレーナとリアの姿がある。
みんなに近づくとランファがルシアに抱き付いた。勢い余って強く閉めすぎている、少し苦しい…。
「…ぅ」
「ルシア…元気そうで…よかった」
「シ シレーナ…もね。 ランファ苦しいよ」
苦しいので腕を放して離れてくれるように頼んでみるが、ランファは全然聞く耳を持ってくれない。有頂天だ。
「それにしても〜 へぇ〜」
なにやらニヤニヤと邪な笑みを浮かべたリアが、ルシアとシルとヒスイの三人を順番に見ていく。
そしてルシアにひとこと
「両手に花で羨ましいですなぁ〜ってな ニヤニヤ」
「なっ!?」
かぁーとルシアの顔が赤くなっていく。耳まで真っ赤だ。
「あー!私が認めた人としかダメだって言ったのに〜〜このっ浮気者〜〜!!」
閉められていた腕が放されて苦しくなくなったのは良かったが、今度はポカポカッと頭を殴られ始めた。…痛い。
「い、痛いってば! それにシルさんとヒスイとはそんな関係じゃっ」
「ソンカンケイって〜? ニヤニヤ」
リアの茶化しはまだ終わらない。ついでにランファのポカポカも。
こんなにからかわれたら、いくら温厚で優しいルシアでも反撃にでる。
「そういうリアさんだって、両手に花じゃないかっ!」
ランファとシレーナの二人で。…という意味でルシアは言ったつもりだったのだが
「は?俺のは片手に花だけど?」
全然効果がなかった。みしろどちらかと言うと
「えー!?ひっどいんだー、シレーナさんこんっっなにカワイイのに数にいれてあげないんなんて〜」
ランファの方に効果を発揮したようだ。まぁ…だがすぐそれも
「いや 君のことだけどもね」
「へ?」
「俺 子供にキョーミないんだよね〜」
と論破されてしまうのだが…。
「ムキー!!」
子供かっ。とツッコミを入れたく動作でランファは怒りを表現している。
足をバタバタして 地面を踏みつけて 腕をブンブンとめちゃくちゃに振り回す。
「まぁ…まぁ…落ち着いて」
ルシアがなだめようとするが効果なし。
そんなのお構いなしとリアはシレーナの手を取り
「…ってことでシレーナさん、俺とどこか デートに行きます?」
口説き始めた…。
シレーナはそっとリアの手を自分の手から放し、静かに
「…女装癖は…ちょっと」
「えぇ〜」
フッた。
それを見たランファは
「きひひっ。や〜い、フラれてやんのー」
元気復活!ベロベロべーとリアを馬鹿にしてお尻ペンペン!
こんなアホくさいことでも目の前でやられたら誰だって、イラッとくるものだ。
もちろんリアも
「こらっ待てー」
「きゃ〜、リアが怒ったー」
イラッと来てランファを追いかける。喧嘩してるのに二人は楽しそうだ。とてもいい笑顔で笑っている。
知らない人が見れば、だたの兄妹喧嘩にしか見えないのだろうな。
ランファとリアの二人が自分の知らない間に随分と仲良くなったんだな…と少し寂しくも嬉しく思うルシアなのでだった。
「そうだ、シレーナ。ランファからの手紙でヘルプって書いてあったんだけど、なにがあったの?」
プイッ。顔を逸らされなにも答えてくれかった。
なんか怒っているようだった。だがルシアにはシレーナを怒らせた原因に心当たりが全くなかった。
なんでシレーナは起こっているのだろと、考えていると肩をつつかれた。ふり返るとシルが
「彼女さんなにか勘違いをしてるみたいですよ?」
「か、彼女!?」
「違うの?」
「違いますよ!僕とシレーナはただの幼馴染ですよっ」
「ふーん」
顔を真っ赤にさせたルシアは慌てて訂正する。シルはまだなんか納得がいってないような顔だ。
近くにいたヒスイはよくわからないと言いたげな顔をしている。
そしてシレーナを見てみると
「ひっ」
何故か先ほどよりも怒っているようだった…。無言の圧がすごく怖かった。
「ほらっ つーかまえた!」
「わ〜ん つかまっちゃった〜」
「あ。 あっちも終わったみたいだね!」
なんかこの空気に耐え切れなくなってきたルシアは、話題を変えようと追いかけっこをしていたランファとリアの話をする。
…が三人の女の子は無言のままで、空気もなんか重たいままだった。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜復帰! ( No.131 )
- 日時: 2017/01/31 15:15
- 名前: 姫凛 (ID: sxkeSnaJ)
戻って来たランファとリアと合流し、ここに来るまでにあった事を説明した。
「コロシアムすげー!」
最初に口を開いたのはやはりランファだった。ガッツポーズでおぉぉと唸っている。
まぁそんなアホな子は放っておいてだね。
「…私達も…菊の牢獄って場所に…監禁…されてた」
「えっ!?そうだったの?」
ランファ達もまたルシア同様、ドルファに睡眠薬入りのジュースを飲まされ気づいたときは牢獄の中だったらしい。
皆口々にドルファは変だと言い出した。
世界最高峰のドウファ。光輝かしいドルファの裏の顔。
もはや善とは言い切れない悪行の数々をルシア達は目撃してきたのだ。
「そういえば僕に用ってなに?ランファからの手紙にはヘルプって書いてあったんだけど…」
「へ?」
ランファとリアは首をかしげる。・・・と少し間があく
「ぁぁー!?」
忘れてぁぁぁぁと二人は大きな声をあげた。いや忘れてたのっ!?その他メンバーから一斉にツッコミが入る。
ポケポケの二人なので軽く メンゴメンゴと流され、
ルシア達は本題の助けてほしい゛ある少女”の家へと案内された。
貧民街にの隅にひっそりと建つとある家に案内された。
家に到着の間 貧民街の住人達とすれ違ったが皆 生気がない。
げっそりとやせ細っている、骨と皮しかない状態と彼らの事をいうのだろう。
衣服もボロボロだ。髪もバサバサで女の子と男の子の境目がない。
皆上で苦しんでいる。そんな印象を受けた。
家の中へ入るとこの街の住人らしくない綺麗な黒髪の少女が床に横たわっていた。
寝ている?初めて彼女を見たルシアの感想はそれだった。
「この子、デスピル病患者なんだ」
「…!」
かなり重度の…とランファが続ける。もう一刻の猶予もない程にヤバイ状況らしいのだ。
だからこの世界で雄一デスピル病を治すことのできるルシアに助けを求めたのだとランファは語った。
彼女がかなり危険な状態なのはランファ達の顔を見ればすぐにわかる
「…でも」
見ず知らずの他人の心に中にずかずかと土足で入るのは当然躊躇する。
「頼む、ルシア!こいつには菊の牢獄から逃げ出すときに色々世話になったんだ。
だから今度は俺たちが助けてやる番なんだっ」
「「リア(さん)!?」」
あのお調子者で人を小バカにしからかうのが大好きな、あのリアが「頼む」とルシアに土下座をしたのだ。
「頭を上げてっ」
とルシアは言うのだが、リアは頼むと繰り返すばかりだ。
どうしよう…と考えていると 頭の中に
『ご主人様。ここは受けて差し上げるのがよろしいかと思います』
『パピコさん!?』
ラブコール。…いやパピコさんの声がしてきたのだ。
『でも…見ず知らずの僕が彼女の過去を見るなんて…』
『優しいだけでは駄目なのですよ?』
『…え?』
『優しさは時に人を傷つける凶器にもなるのですよ』
「………」
床に何度も何度も額をこすりつけるリアを見る。
こんな行動彼のキャラではない。それは本人も分かっている。
だけどそれだけのことをするに値する人なのだ、このアルトと言う名の少女は…。
「わかった」
「ルシア…?」
「僕にどれだけのことが出来るのかわからないけど、やれることはやってみるよ」
「ほんとかっ!?」
やっと頭をあげてくれた。リアの額は床にこすりつけてすぎて、真っ赤になっている。
だがその涙でくちゃくちゃの顔は良い笑顔だ。
黒髪の少女 アルト・リンク。
ランファ達が菊の牢獄から逃げ出す際に色々世話になったらしい少女。
彼女に救う闇を晴らすためルシアはアルトの胸元にブレスレットを持っていく。
ブレスレットからは眩い光があふれ出す。
「私の時もこんな風だったんだ…」
「…私の…時も…」
ルシアに心の全てを見られた二人の少女はそうつぶやいた。
眠っていた彼女達には心に入る瞬間は見えていないから。
「リンクさん。貴方とは初めてあったばかりだけど。貴方を助ける為
プリンセシナに入ります。ごめんなさい!」
目をつむるとブレスレットから発せられた光がルシアを包み込み、やがて光の中へ飲み込んだ。
「行っちまったな…」
「そーだねー」
「…うん」
「そうですね」
「……ええ」
残された者達は、
これからどうする? なにして待ってる? すぐには帰ってこないよねー?
と呑気な会話で和んでいた。
人の気も知らないで。…とルシアがいたら思うのだろうね。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜復帰! ( No.132 )
- 日時: 2017/02/03 11:24
- 名前: 姫凛 (ID: 13XN7dsw)
【第一階層】
アルト・リンクさんのプリンセシナ内部到着したとき、真っ先に僕が感じたのは それは…
「寒いっっ!!」
本当に身が凍るような寒さだった。
目を開けてみると、映った光景は雪と氷で覆われた 幻想的な銀世界だった。
「ここが…リンクさんのプリンセシナ…?
雪国ってことなのかな。そういえばパピコさんは?」
いつもは僕がプリンセシナについてすぐに、どこかからやって来て話しかけてくれるのに 辺りを見渡してみてもいない。
どこにもパピコさんの姿ないんだ。どうしたんだろう?
「ぅぅ…それにしても寒い」
体の震えが止まらない。自然と体が勝手に歯をカチカチしてしまう。
「このままここに立ってたら、凍死しちゃうよ…。
動いたら少しは温まるかな」
僕はパピコさんとリンクさんを探すのを兼ねて、ちょっと辺りを探索してみることにした。
***
「あ。 街道だ」
少し雪道を適当に歩いていると、石畳の道を見つけた。
たぶん街道だと思う。石畳の道の先からは、モクモクと白い煙が上がっているのが見える。きっと街だ。
「よかった。ちょっとあの街で休ませてもらおう」
軽装備で雪山はきつい。寒い。
僕は真っ直ぐ続く街道を歩いて行くことにした。
雪道とは違って薄く氷の張った石畳の道は、滑りやすいみたい。なんどもこけそうになって…こけて尻餅をついちゃって…。
「あっちこっち痛い…。文句言ってもしょうがないんだけどね…」
とかいろいろ思っていると、民家が見えて来た。
もうすぐ街だ!っと思って走り出しりだすと
「うぎゃ!?」
また盛大に顔から地面にダイブしちゃった…。雪道って本当に大変なんですね…。こんな道を毎日歩いてる 雪国の人尊敬します…。本当に。
***
「………」
街についた。
でも僕は街の光景に言葉を失った。思考が停止した 脳が 体が 心が これを拒絶している。
だって
家が
人が
街にあるすべての者が凍り漬けにされていたから…。
「……」
「……」
街の住んでいた人たちはみんな嗤ったまま
お店の人 商品を買うお客さん 洗濯物を取り込むお母さん 料理を作るコックさん 楽しそうに遊ぶ子供たち
街の人たちは日常生活を送っている風景で止まってる。
凍り付けにされて、その風景のまま 写真に撮った絵のようにみんなの時が止まっている。
「すごいですよね〜。動植物もカチコチなんですよ?」
「パピコさんっ!」
街の風景を見て固まっていたら、いつの間にか傍に居たパピコさんに声をかけられた。
動植物も…?
パピコさんにそう言われて、足元を見てみると…本当だ。
お花や草木、鳥も虫も、生き物やそうでないものすべてが一瞬で氷漬けにされたように止まっていた。
鳥や蝶なんかは空中にいるまま凍ってる…。
「元からこんな風景だった…てことはないよね?」
そんなことあってほしくないとゆう願いを込めて、パピコさんに聞いてみた。
でもパピコさんは何も答えてくれなかった。苦しそうな重たい表情で、顔を逸らすだけだった。…そんなまさか?
『きゃー! 遅れちゃうー!』
「えっ?」
女の子の声が…。
まだ生きて 氷漬けにされていない人がいるの!?
「いた!」
街の中央だと思う広い通りに出てくると、十二歳くらいのウサギの耳が生えた黒髪の女の子が走っていく後ろ姿が見えた。
僕たちは彼女を追いかけてみることにしたんだ。彼女にこの街のことを聞いてみるため。
もしかしたら、彼女以外にもまだ生き残りがいるかもしれないから。
***
『ハァハァ……』
彼女は息を切らせながら走っている。
さっき「遅れちゃう」って言っていたし…どこかへ向かおうとしているのかな。でもどこへ?
色々思考を巡らしてみるけど さっぱりわからない。
隣を走るパピコさんを見てもずっと暗い顔をしたままで、いつもの元気がない。
街や人が氷漬けになっていることが、正常とは思わない。
でもだったら これが異常なことなら、原因があるはず! なにか解決方法があるはず!
パピコさんは頑なにそれを話そうとはしない。訊こうとしても「ごめんなさい」と返されるばかり。
だから僕も気にはなるけど、無理には訊けないんだ。
今は黒髪の女の子の後を追いかけて、パピコさんが話してくれるのを待つしかないんだ。
***
彼女を追いかけていると氷漬けになった民家に辿り着いた。
「ここが彼女の来たかった場所?」
「そのようでございますね」
彼女はタッタッタと家の玄関の方へ走って行き、ドアノブに手をかけるすると
「えっ家が!」
氷漬けになっていたはずの家が光を発し、光が消えた途端氷も溶けていた。
『だだいまァ!!』
と言いながら彼女はドアをガチャリと開けて家の中へ入って行ってしまった。
「どうゆうことパピコさん。なんで彼女が触れたら氷が…」
「とにかく今は彼女を追いましょう」
「…あ うん」
僕たちも家の中へ入ることにした。
「温かい」
「ですね〜」
家の中は外と違って温かかった。中を見てみると暖炉があって、ゴウゴウと音をたてながら勢いよく炎が燃えていた。
「やっぱり雪国には暖炉は必須だね」
「寒いですもの。当然ですよ」
「だね」
『お帰り、アルト』
『ただいま、父さん!』
「…ぁ」
暖炉に気を取られて忘れてた。僕たちは彼女を追いかけてここまで来たんだった…。
彼女はロッキングチェアに座って本を読んでいた、三十代くらいの見た目のメガネをかけた男の人に駆け寄って行く。
男の人は彼女の事を「アルト」と呼んで愛しい者を見る目で優しく頭を撫でてあげている。
アルトと呼ばれた彼女も嬉しそうに、男の人を「父さん」と呼んで彼の膝の上に座る。
「…あの少女がアルトさまですか」
「パピコさん?」
なにやらパピコさんは難しそうな顔をしている。
ここに来てからずっとパピコさんの様子がおかしい。大丈夫かな…?
『今日学校はどうだった?』
『んぅー。いつも通り楽しかったよ!
あっ、でもぉ友達の掃除当番を急遽 変わってあげたから大変だった。
帰りが遅くなっちゃったし…』
『ははっ それは大変だったな』
『もぅ父さん! 笑い事じゃないよ。本当に大変だったんだからね!』
『ごめんごめん』
『むぅ〜』
「仲のいい親子なのですね」
「そうだね。ん?これは…」
温まっている暖炉の上には写真立てが置いてあった。
中に入っている写真はもちろん、家族写真。
今よりももっと小さいリンクさんと若いお父さんと……リンクさんよりも少し大きい金髪でエメラルドの瞳をした女の子が写っていた。
「この子は?」
「お姉さまですかね? なんとなく姉妹にております」
「そっか」
確かにこの二人の女の子 なんとなく似ているような気がする。
『うしっ』
と小さくつぶやくとリンクさんはお父さんの膝の上から降りて
「ちょっと、待っててねっ。すぐにご飯作っちゃうから♪」
くるっと振り返ってお父さんに向かって言う。お父さんは
『いつもすまないねぇ〜』
『おとっつさん、それは言わない約束だろ?』
『『ぷっ、はははははっ』』
僕にはわからない、親子の漫才を始めた。
「本当に仲がいい親子なんだね。僕の…父さんも…生きていたらきっと」
「ご主人様…」
リンクさんは台所へと入っていく。
僕たちはどうしようかな…と考えていると、お父さんが立ち上がって台所の方へ向かうのが見えた。
なんとなくついでで、僕もついていってみることにした。
『アルトどうしたぁ〜? 手が止まっているぞ?』
台所に顔だけ覗かせてお父さんはリンクさんを茶化すように言う。リンクさんは
『へ? あ、なんでも無いなんでもないよー。
それよりも! 私が料理してるときは、キッチンに入ってこないでっていつも言ってるでしょ!!!』
『ああ、ごめんごめんっ』
『もう〜〜!!』
包丁片手にお父さんを怒って追い出しちゃった。ヨナも大きくなったらああゆう風になるのかな…??
それはちょっと寂しいかも…。お父さんはふぁとあくびをし頭をポリポリかきながら、暖炉があった部屋へと戻っていく。
『はぁ〜。なんかくだらないこと考えちゃった。
さっさとごはん作っちゃおっと!』
くだらないこと?
リンクさんはそう言うとまたトントンと包丁を動かし野菜を切り始めた。
「ご主人さま。厨房男子はいらず!ですよ?」
「?」
よくわからないけど、とにかく出て行けってことらしい。
仕方ない。寒いし僕も暖炉の部屋に行こうかな。
***
『……』
暖炉の部屋へ戻ってくると、お父さんが本棚でなにかを真剣な顔して見ている。
なにを見ているのだろうと、覗いてみようとしたんだけど
プルルルッ
通信機が鳴ってそれは遮られた。
お父さんは壁に駆けられた通信機の 通話口を手に取って
『はい』
誰かと話し始めた。会話の内容はノイズが混じりよく聞き取れなくてわからなかった。
所々で聞こえて来た単語は
゛事件”
゛犯人”
゛アリサと言う女の人の名前”
の三つ。事件・犯人・アリサ?なんのことだろう。なんだか嫌な予感しかしない…。
『父さーん、料理できた…よ?」』
リンクさんが料理を持って部屋に入って来る。
お父さんはまだ通話中。
『そうですか…… 私の方にも…… えぇはい そうですね…。
あのアリサは一体どこに……?』
『……アリサ?』
ガシャン!
彼女は持っていた料理を足元に落としてしまった。
『ッアルトいたのか!?』
お父さんはリンクさんが居たことに酷く驚いている。
『……』
どんどん彼女から血の気が引いていくのが感じられた。青ざめていって表情は絶望? たぶんその表現が一番合っているような気がする。
絶望一色。といった顔をしている。
彼女はアリサという女の人を知ってるのかな。だからこんな顔を…?
また音もなく静かに世界が凍り付いた。
今度はリンクさん親子も含めて すべてが
暖炉の火も 砕け散ったお皿の破片も 料理も
僕とパピコさん以外 ここにあるすべてが氷漬けとなった
本当に それは
瞬きする間の 一瞬の出来事だった——
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【六章執筆中】 ( No.133 )
- 日時: 2017/02/03 11:28
- 名前: 姫凛 (ID: 13XN7dsw)
【第二階層】
「ん…ここは?」
次に現れたのは木材で出来た壁と床の部屋だった。当然氷漬けになってるけど。
窓があって右側にの壁には緑色の板があってそこには「今日の日直」と 読めないけどたぶん人の名前のようなものが恥に書かれてた。
その上には「みんな元気にごあいさつ」って書かれた紙が貼ってあって
左側の壁には書道で「夢」「希望」「未来」と書かれた紙が貼られている。
その下の荷物を置きの棚があって水槽や本が置かれてて升目みたいに個別で鞄が置かれている。
中央には木で出来た机と椅子が置いてある。小さいから子供用かな?
「ここは学校の教室のようですね」
「がっこう? きょうしつ?」
???
首をかしげているとパピコさんが教えてくれた。
ここは学校と呼ばれる、子供たちが大人から勉強を教わるところなんだって。
きょういくきかん? ってやつらしい…。
教わる子供たちは沢山いて、生徒と呼ばれていて
きょうしつと言うのはその生徒たちを振り分けた場所? なんだって。
僕は森で育って、近所のお爺さんやおばあさんたちに教わっていたから、学校なんて行ったことがなかったんだよね…。
そうかここが学校。今は氷漬けになってて寂しい感じだけど、本来は子供の声で活気あふれる場所だったんだろうなぁ。
通いたかったな…僕も。でもヨナなら…まだ。
***
『キモイんだよ! お前っ!』
「ん?」
部屋の外から子供の声が聞こえてきた。
どうしたんだろ…なんか嫌な胸騒ぎがする。
『うさぎの耳が生えてるなんてへんなの〜』
『そうそう、へんへーん』
『おまえの父ちゃんにはウサギの耳なんて生えてなかったぞー?』
『え〜そうなのぉ? じゃあ、本当の子じゃなかったりぃ〜?』
『うわぁ。捨て子だぁー菌をうつされるぅ〜。 キャー!!』
『……そんなことないもん』
様子を見に廊下に出てみると、何人かの子供たちがリンクさんを囲んで何か話しているみたいだった。
いや話しているというよりあれは…
「イジメでございますね」
僕が言うより先に、パピコさんが言った。
そうだ。一方的なイジメだ。シレーナの時と同じように。
『なぁーなぁー、なんでお前には母ちゃんが居ないんだよー?』
『知らない。私には…最初からいないもん。
父さんとお姉ちゃんしか…いないもん』
『えー?そんなのおかしいわ。
私の妹はお母さんから生まれてきたもの』
『そ、そうだ! ボクのママも ママからボクは生まれたんだよ って言ってたぞ!!』
『もしかして捨て子だからぁ?』
『『そうかも〜〜〜』』
『ちがうもん!!』
『ちがわないわ! だってしょうこにアナタのお姉さんもどこかへ行ったきりかえってこないじゃないっ』
『ッ!?』
リンクさんのお母さん。家族写真にも写ってなかった…。
そしていなくなったお姉さん…。
確かに、僕たちがリンクさんの家に行ったときはお父さんしかいなかった。
お姉さんの姿はどこにもなかった。出かけてるだけだと思ってたけど…。
『知らない……私は何も知らない!!』
タタタタタタタタタッ。
『『あ、待てぇーーーー!! うさぎ女!』』
『ウッ…グス……ウウッ わぁぁぁぁん!!』
泣きながらリンクさんは走り去って行った。
リンクさんが走り去って彼女の事を「うさぎ女」と言い放って、子供たちは音もなく静かに凍った。
前の階層で見た、リンクさん親子が一瞬で氷漬けになったみたいに…。
「子供は素直だから、時にあんな残酷なことでも平気に言えるんだよね…」
シレーナの時に見たみたいに。
「そうですでございますね…。純粋だからこそ、わからないのでしょうね」
「うん」
純粋だからこそわからない。
ヨナはどうなのかな? ヨナには人間の汚い部分を見てほしくない、と僕は思う。
でもそれは、僕のただのエゴじゃないのかって ときどき不安になる。
ヨナ…。僕は…どうしたらいいのかな?
ここまま進んでもいいのかな…ヨナ。
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