複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【六章執筆中】 ( No.136 )
- 日時: 2017/02/09 08:42
- 名前: 姫凛 (ID: v5g8uTVS)
【第三階層】
「……ん ここは」
瞼を開けると見えたのは、リンクさんの家。
僕たちは雪と氷で囲まれた外の街から 氷漬けになった家を見ているといった形、みたい。
「この世界は…どうして凍ってるんだろう…?」
「……ごめんない」
ひとりごとのつもりで言ったつもりだったのに、また知らず知らず パピコさんを気づつけてしまったみたいだ…。
パピコさんは悲しそうな顔をしてなんだか肩身が狭そうだ。
『………』
「あ。リンクさん、おかえり」
パピコさんの様子を伺っていると、ショボショボと元気がなさそうにリンクさんがお家へ帰って来た。
彼女には僕の姿は見えてないし、もちろん声も聞こえてない。でも元気のないリンクさんを見てたら、「おかえり」って声をかけずにはいられれなかった。
ガチャ
とドアを開けてリンクさんは家の中へと入って行く。その後を僕たちも追いかけて家の中へ入る。
***
『ただいま……』
『ん? ああ、お帰りアルト』
家の中へ入ると、お父さんがなにやらゴソゴソ忙しそうにいていた。なにをしているんだろう?
『…父さん?』
リンクさんも不思議そうな顔をしている。
『ご飯は冷蔵庫にあるから、好きな時にチンして食べなさい。電子レンジの使い方はわかるね? 』
『……うん。わかるよ だいじょうぶ』
「冷蔵庫に入れられたご飯! そしてチンしての一人晩御飯!」
っと大きく言った後今度は小声で わかります、わかりますよ、今のアルトさまの気持ち! とパピコさんが熱くなにかをぶつぶつ語ってる…。
たまにおかしなスイッチが入るみたい…。
ガサガサ
お父さんは先程からずっと、忙しそうになにかをしている。なにしてるんだろ?
階段を上って二階に行ったと思ったらすぐに降りて来て、今度は階段を下りて地下室へと向かう。でもやっぱりすぐに戻って来て…
「あれ? …手になにか持ってる?」
地下室から戻って来た お父さんの腕の中には沢山の書類? 資料? 紙の束が抱えられていた。
抱えられている真っ白い紙には細かい字が細かくビッシリ書かれてる。
『……?』
リンクさんも僕たちも、お父さんを不思議そうな目で見つめる。…でもお父さんはリンクさんに目もくれず、紙の束を綺麗に整えてから大事そうに大きな旅行鞄に入れている。
あの四角くてコロコロと回るが付いてて背負ったり手や腕に持たなくても、引っ張るだけで運べるあの旅行鞄に紙の束と一緒に日用雑貨や数枚の洋服を入れている。
「…どこか旅行にでも出かけるのかな?」
「娘を置いて一人で、ですか?」
「…あ そうか」
家に入って来た時 お父さんはリンクさんに「ご飯は冷蔵庫の中にあるから」って言ってたから、家族旅行ってわけではないんだった。
「じゃあ……お仕事かな? 書類っぽいもの持ってたし…」
「そうですかね…」
パピコさんの歯切れが悪い。気にしちゃ駄目だとはわかってるけど……気になるな。…なにを隠しているんだろう。
隠し事なんて自分が辛くなる一方だと僕は思う。秘密は独りで抱えてるよりもみんなで…誰かと共有して楽になった方がいいと思う。
楽しい気持ちも悲しい気持ちも誰かと半分こした方がずっと楽しいし、悲しさも半分になるから。
『…今度はいつ 帰ってくるの?』
ずっと俯いて黙り込んでいた、リンクさんが口を開いた。
「今度は…? 前にもこんな事があったのかな」
とか僕が考えていると、お父さんは顔を上げずに
『う〜ん。出来るだけ早く帰ってこようと思っては…いるけど、いつになるかは今はわからないな…』
と答えた。
『…そう』
リンクさんも俯いたまま静かにそう言った。
『ごめんなアルト。いつも寂しい思いをさせてしまって……』
俯いたままのリンクさんを見てお父さんは彼女の頭を優しくなでてあげる。
リンクさんは顔を上げて
『だいじょうぶだよ。ちょっと寂しいかもだけど、イイ子にして待ってたら父さんが早く帰って来てくれるって、知ってるから』
『平気だよ』ってリンクさんは、お父さんに心配かけまいと頑張って作った笑顔で言っている。
この笑顔を見ていると胸が締め付けられるように痛い…。僕もヨナに似たようなことをしていたから…。
狩りや仕事でちょっとニ三日家を空ける事があった。そんな時はいつもヨナには家でお留守番をしてもらっていた。
狩りや仕事から帰って来た僕ををヨナはいつも笑顔で出迎えてくれていたけど…本当はこんな寂しい思いを…ヨナ。
『じゃあ、そろそろ行ってくるよ。戸締りと…』
『火事厳禁! あと知らない人が訪ねて来ても知らんぷりっ!』
『あっあぁ、そうそう』
『もうわかってるよ なんども言わないでっ』
『あははっごめんごめんっ』
『…もぅ』
玄関先でお父さんは旅行鞄を片手にリンクさんの頭をぐしゃぐしゃに撫でまわす。
この親子を見ていると…ヨナと自分を見ているみたいだ…。ヨナを無事、連れ戻せたら今度はヨナの好きなことを好きなだけさせてあげようう。
ずっと寂しい思いをさせていたかわりに……なるかどうかはわからないけど…少しでも楽しい思い出を作ってあげたい。
『…いってらっしゃい。父さん』
ガチャ
寂しそうな 悲しそうな 辛そうな 気持ちを押し込めて隠した笑顔でリンクさんはお父さんを見送る。お父さんも笑顔で何処かへ向かって家を出て行きドアが閉まった
「…また」
ところでまた世界が凍った。音もなく一瞬で。
特殊なプリンセシナ。まだ二回しかプリンセシナに入ったことのない 僕だけど、リンクさんのプリンセシナはシレーナやシルさんのと比べてなにかが違う、変なのは素人でもわかる。
そしてその答えをパピコさんは知っている。
「………」
どしてか教えてくれないけど。辛そうな顔をしている彼女に僕は無理強いは出来ない。…気にはなるけどね。
「この階層は終わりのようでございます」
「そうみたいだね。次の階層へいこうか」
「はいっ」
パピコさんはあくまでも今まで通り普通の態度で僕に接しようと頑張っている。
僕が彼女のあの笑顔を踏みにじったら駄目だよ。…僕も出来るだけ普通に見えるように頑張らないとっ。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【六章執筆中】 ( No.137 )
- 日時: 2017/02/10 10:11
- 名前: 姫凛 (ID: 8.dPcW9k)
【第四階層】
「ピヨ? ピヨヨヨヨォ〜ン」
「ん…」
変な鳥の鳴き声を合図に瞼を開ける。するとここは誰かの部屋?
白い壁に、窓にはピンクのフリル カーテン、棚の上には可愛いらしい動物のぬいぐるみが飾ってある。
勉強机と思われる机の上には学校の教科書と思われる本やノート、なんかの勉強道具などが散乱としていた。
当然、凍っているけど…。
『んん』
ベットの方から人の声が聞こえた。女の子の声だったと思う。
近づいて行き覗いて見ると
「…ぁ リンクさん」
『すぅ…』
ベットの中で気持ちよさそうに眠っていたのはリンクさんだった。
『…すぅ』
「…よかった生きてる」
リンクさんの寝顔は、ここ(アルトのプリンセシナ)に来る前に見た 床の上に横たわったまま永遠に目覚めない眠りについた、リンクさんを思い出させる…。
ついっ不安になってしまう。でも寝息をたて胸が上下に動いている姿を見ると"生きている”と感じられて安心する。
「わっ!?」
リンクさんの寝顔を観察していると、パチッと目があった。
僕はビックリして思わず、尻餅をついちゃった。
『ふぁ〜 もうあさぁ〜?』
リンクさんはベットから起き上がり、んん〜と腕を伸ばして背伸びをする。
『はぁ〜 眠い… でも着替えないと…』
「えっ!? 着替えっ!?」
ちょ ちょっと待って!!
僕の声はリンクさんには聞こえてない。それはわかっているけど、待ってと着替えるのを止めようとする。
「お 女の子の着替えを覗き見るために、ここに入ったわけじゃないくて…僕は…」
「ご主人様?」
「あ あの えっと」
「後ろを向けばよろしいのでは?」
「え…?」
あ…そうだね。そうすれば万事解決だったね…。気が動転してて全然気が付かなかったよ…。
僕はパピコさんの言った通り、リンクさんが着替え終わるまで後ろを向いて目に手のひらを当てて待つことにした。
数分待っていると
『よしっ! 着替え終わった。次は父さんを起こしに行かなくちゃっ』
と言ってリンクさんは部屋を出て行った。
「僕たちもいこっか」
「はい♪」
リンクさんを追いかけて僕たちも部屋を出る。
この部屋は二階にあるみたいだ。リンクさんが階段を下りている後ろ姿が見えた。
それを追いかけて僕たちも階段を下りる。
***
リンクさんは一階に着くとある部屋の前に立ち軽くノックをしたあとガチャッとドアを開けて部屋の中へ入って行こうとしていたんだけど…?
『お父さーん…?』
『ん?』
リンクさんの声が気ごちない。とゆうよりドアを開けたところで直立不動で固まっている。
「どうしたんだろう?」
心配になってリンクさん傍に寄って部屋の中を覗いてみると
『………?』
坊主頭で真っ黒い肌で紅蓮の鎧を着た男の人が、ソファーでコーヒーを飲んでまったりとしていた。…誰だろう? お父さんの知り合いかな?
「ご主人様、あの方が着ている鎧…」
「鎧がどうしたの?」
「あの紋章、深紅の騎士(しんくのきし)のものですよ!」
「…深紅の騎士?」
たしか深紅の騎士は和の国の治安を守る騎士団の名前だ。…じゃあこの町は和の国にある町?
でも前に行った和の国とは雰囲気が違ったような…?
『え? え? あのっ どちらさまです』
『アルト! 今起きたのか?』
『父さん!!』
知らない男の人が家の中にいる恐怖に震えるリンクさんの前に、地下室へ続く階段から大量の紙を持ったお父さんが現れた。
『リンクさん、この子は?』
男の人がお父さんに質問をする。お父さんは紙の束を机の上に起きながら
『ああ、すいませんオルトマンさん。この子は私の娘で、アルトです』
お父さんは男の人を「オルトマンさん」と呼んでリンクさんを紹介した。リンクさんはドアの前からまだ動けないでいる。
『そうでしたか。はじめましてアルトちゃん。私は君のお母さんの事件を調べている オルトマンと言います』
『お母さん……? 事件……?』
『オルトマンさん!』
『えっ? あっ!!』
オルトマンさんが「お母さん。事件』の事を言おうとしたら、お父さんがオルトマンさんを慌てて止めた。二人ともしまったと言いたげな顔をしている。
『父さん……事件って……なんのこと…?』
『アルト! いいから、部屋を出なさい!』
『でも……』
『いいからっ!! 出てい行きなさい』
『……うん』
どうしたらいいのか、なにが起きているのか、わからなくて不安がるリンクさんにどうしてかお父さんは怖いかをしてリンクさんを部屋から追い出した。
リンクさんはしょぼんと悲しそうな顔、もしかしたら涙もでていたかもしれない。…をしていた。
リンクさんが部屋を出て行ったのを合図に世界は凍る。
お母さん。事件。
この二つが鍵? リンクさんの闇?
わからないことだらけだ。ともかく僕たちは次の階層へと向かうことにした。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【六章執筆中】 ( No.138 )
- 日時: 2017/02/12 07:32
- 名前: 姫凛 (ID: EjFgzOZO)
【第五階層】
「……温かい」
第五階層に来て最初に感じたのは
パチパチ パキパキと、なにかが燃えている音となにかが折れる音
全身を包む暖かい空気だった。瞼を開けてみると、ここは暖炉のある部屋みたいだ。
「氷ってなくて最初から溶けているのは初めてのパターンだね」
「そうですね。今回はアタリ階層ですね♪」
当たり階層? くすりと笑いがこぼれる。
『……父さんまだかな…』
「ッ」
声がして今気づいたんだけど、リンクさんがお父さんの特等席 ロッキングチェアに座ってユラユラ、なんか遊んでいた。
そうか、今回は最初からリンクさんがいる場面だから世界が凍っていないんだ。いつもは途中からリンクさんがやって来て、リンクさんがどこかへ行くと世界が凍るから。
…なんとなく僕は、この世界(アルトのプリンセシナ)の方式(ルール)がわかったような気がした。
『父さん せっかく長旅から帰って来てくれたと思ったのに、帰ってきたと思ったら今度は自分の部屋に閉じこもっちゃって…。
なにしてるんだよ…もう。ご飯くらいは食べてよね……』
ぶつぶつとロッキングチェアに座ったまま、リンクさんはひとりごとを呟く。
第四階層からは何日かたっていて、お父さんが長旅から帰って来たけど、でも今度は部屋に閉じこもってご飯も食べずになにかをしていると……
「……なにしてるんだろ?」
「さぁあ?」
僕もパピコさんも首をかしげるしかない。
二人して首をかしげ考えているとドアがガチャリと開けられ
『アルトいるかい……?』
弱く痩せ細った印象のお父さんがドアから顔を出して部屋を覗き込んだ。
『なに 父さん?』
リンクさんは不機嫌そうに 少しイライラした様子で答える。
お父さんはそんなのお構いなしと
『明日、騎士団屯所に行くぞ。お前もついてきなさい……』
それだけ言い放つとドアを閉めようとする。リンクさんは慌てて、ドアを閉めようとするお父さんを止めにはいり
『なんで私が騎士団の屯所なんかに行かないといけないのよ!?』
と強く言い放った。それを聞いたお父さんは、下を向きぶつぶつとなにかを呟いている。良く聞こえない。それはリンクさんも同じみたいだ。
『…なに、言ってるの? 父さん』
『母さんに会いたくないのか?』
「えっ?」
『なんで…?』
ぶつぶつとなにかを呟いていると思っていたら、最後にお父さんはリンクさんに向かって「母さんに合いたくないのか?」と言って今度は強引にでもドアを閉めて行った。
この場に居る全員が唖然だ。なにが起こったのか理解が追いつかない。口をあんぐりと開けて棒立ちだった。