複雑・ファジー小説

-スキップ物語-(アルトの過去編) ( No.146 )
日時: 2017/09/01 10:52
名前: 姫凛 (ID: KACJfN4D)




コロシアムでシルを助け出してから数日たったある日、ルシア達が止まっていたホテルに伝書鳩ならぬ伝書鷹が飛んできました。

鷲の足には手紙が。手紙にはみみずがはったような字で[ルシアー、ヘルペスミー!飛行船で、仮面の国へゴー!]とだけ書いてありました。

字や内容から察するにランファからの手紙でした。

飛行船に乗り込んでいざ仮面の国へ。

仮面の国に着くとまずは厳重なボディチェックが始まりました。なにもなければベルトコンベヤーのように流れていく作業です。

ルシア達も列に並ぼうとしましたが、ヒスイが「こっち」逆方向へ案内します。目が見えない彼女にとって杖は必需品。…なのに杖なしで飛行船内を歩けているのは何故でしょう—慣れているのでしょうか?

飛行船を下りて待ち合わせの場所へ向かうと、そこには先に来ていた仲間たちの姿が—。

嬉しさ余ってルシアを抱き絞め殺しかける、ランファ

シルとヒスイで両手に花だとからかう、リア

むすっと可愛くはぶてている、シレーナ

三人もルシア達とは違う牢獄に監禁されましたが、ある人物の助けのおかげで無事、脱出に成功したそうなのです。

ある人物、その人の名前はアルト・リンク。

齢15の女の子です。ですが彼女はデスピル病にかかり、今まさに生死を彷徨っている最中でした。

彼女を助けてほしいと願うランファ。助けてあげたい気持ちはあります。でも見ず知らずの人、今日あったばかりの女の子を丸裸にする、なんてこと、ルシアができるわけがありません。


ルシアは断ろうとしました。しかし、「頼む!」とあの自信家でお調子者のリアがルシアに頭を下げたのです。地面に何度も擦り付けたのです。

そこまでされて断るなんて、男じゃありません。ルシアは承諾しいざ、アルト・リンクのプリンセシナ内部へ—



プリンセシナは人それぞれ、十人十色の世界。誰ひとつとして同じものは存在しません。
…ですがアルト・リンクのプリンセシナは、その中でも一番特殊な世界でした。


一面氷漬けにされた銀世界。一瞬のうちにこ氷ってしまい、時が止まってしまったかのよう。

それにいつもプリンセシナ内では傍にいてくれたパピコの姿がありません。

ルシアこの世界の状況を探るとともに、パピコと合流するため歩き出しました。


ある親子の家でパピコと合流できました。

その親子の名前はリンク。このプリンセシナはアルト・リンクの幼い頃の記憶を再現した世界でした。

物語の登場人物達にルシア達の姿は見えていません。


主役のアルトが知っている光景だけ氷が融け、知らない光景だとまた氷漬けになりました。


プリンセシナの階層を下りていくと、ちょいちょい出て来る言葉ある。

アリサという名前の女性

アルトの母親は何らかの事件に巻き込まれて死んだ

その事件をオルトマンと言う深紅の騎士(しんくのきし)の人が調べている

この三つの言葉がアルトの救うために重要なってきそうだ。



アルトの父親が部屋にこもったきり出て来なくなった。なにかの研究に時間を費やしているらしい。そしてその研究は成果が出てしまった…。


父親はアルトを家の地下室へと呼んだ。地下室には血で書かれたアノ魔方陣…人体錬成が書かれていたのだ。


父親が研究していたものは錬金術、そして出した答えが人体錬成で亡くした妻を蘇らせることだった—


人体錬成は失敗に終わった

生まれたのは毛むくじゃらのバケモノ

傍らには父親と思われる肉片と、その傍でバケモノを殴り続けるアルト。



シークレットガーデン


全てが凍った世界



全てを憎み 嫌った少女


全てを拒絶し 死を望む


だけどそんなの 許さない— 


そんなことさせない だって 彼女が今 今日を生きているのは父親が己の持てる全てを捧げたからだ。

二度目の人体錬成は成功したのだ

愛する娘を己の馬鹿げた願いの為に巻き込み、死なせてしまった愚かな父の悪あがきが勝ったのだ。


その命を粗末にしてはいけない—とルシアは伝えたかった その思いはアルトに伝わっていた


なのに—



砕け散る シークレットガーデン


粉々に砕け散り 残ったのは 砕けた氷の破片のみ





救えなかった




アルトは死んだ。もう二度と蘇ることはないだろう



現実の世界に帰ったルシアは包み隠さず皆に事実を伝えた


怒りをあらわにする者、悔しさに自分を責める者、泣き崩れる者


ルシア達は三日三晩 涙が枯れても泣き続けた—