複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【勇気の試練編】 ( No.186 )
- 日時: 2017/10/17 09:20
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: Xhss9HRk)
「どうすればいいんだよ……」呆然とその場に立ち尽くす。
ここまで苦楽を共にしてきた仲間たちを見捨てることなんで当然出来るわけがない。そして海の国で起こった事件、リオンの城であり家であった本屋が爆破された事件。雪白の騎士団は店主であるリオンは死んだと報告し発表した、遺体がまだ見つかってなかったのにもかかわらず。でも今となってはそちらの方が良かったのかもしれない。遺体が見つかっていればもうこんな形ではあるが、再会を望めなかっただろうから。
「それでお決まりになりましたか」選択を催促するシュヴァルツァー。確かにそろそろ決断しなければならない。こうしてルシアが悩み考えている間にも水嵩はどんどん増えてゆき、鳥籠は完全に水の中に沈み終わりそうだ。
——考えろ。考えろ考えろ。考えろ考えろ考えろ。考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろといくら考えたところでなにも浮かばない。いい案なんてそもそもないのだから浮かぶわけがないのだ。
「リオンを助けてくれっルシア!」
「ぁ……リアさん」
水の中に沈みゆく鳥籠の中で仲間たちは自分達に出来る精一杯の作り笑顔で「あたしたちならだいじょーぶだから! 逃げ出して見せるから!」と言い「だからリオンを助けてあげて!!」とルシアに全てを託した。ルシアは「……わかった」小さく呟き頷いた。
「お決まりになりましたかルシア様?」
「ええ——僕は」
-[リオン]の命を救い [仲間]の命を救い犠牲とする。
「ありがとう」不意に誰かから何かを言われた気がした、でも気のせいだろう。
——パチンッとシュヴァルツァーがもう一度、指を擦り音を鳴らすと、リオンが入っていた鳥籠を繋ぐ鎖がからくりによって引きずり上げられ、かわりに天秤の反対側にのっていた仲間たちが囚われていた鳥籠は物凄い勢いで水の中へと沈んでいくその光景を見てルシアは「……大丈夫……大丈夫……みんなならきっと大丈夫」だと物々呟きながら自分に言い聞かせ精神を安定させようと、自分は悪くないと正当化させようと。
「自己暗示など情けない」
「……」
「そんなにお気になるのでしたらお見せしましょう」
「……え」
さらにもう一度シュヴァルツァーが指を擦り音を鳴らすと、仲間たちが囚われていた鳥籠がゆっくりと引きずり上げられた。
鳥籠が自分の元に運び込まれる前に駆け寄りルシアは鳥籠の扉を開けた。
「……う……そ……でしょう?」
ごろりと転がり出て来た大きな物体。大きな黒い塊は仲間たちの
——死体でした。
「特異点を殺してしまうなんて貴方にはガッカリですよ」
振り返えらなくてもわかる。頭の後ろに突き付けられた丸い筒状のもの、そしてカチャリと安全装置が解除された音はいつでも発射できる準備が整った証拠。でもいい。もうそんなことどうだっていいのだ、大切な仲間を殺したルシアにとってそんなこと——パァン!!! 一発の銃弾が頭蓋骨を突き抜け貫通していった。
「またやり直しですか……そういえばエンリの方はどうでしょうか。まだまだ遊ぶ事にしか興味のないお子様ですが、少しは役にやってくれているといいのですけどね。
また別の世界軸を探すのは骨の折れる作業ですからね」
男は消えた。その存在した痕跡すら残さず、彼が此処に存在したという記録すら残さずに一瞬で消え去った。
勇気の試練-終 見損ないend