複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【隠された真実編】 ( No.187 )
- 日時: 2017/10/18 10:02
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: hr/PPTT1)
スキップ物語(第八章 からくり遺跡-女神の試練-)
女神が誕生した場所と言い伝えられている巨大な遺跡。大昔は寺院としても使われていた場所。
さすがは神が誕生した場所と言われるだけあって辺りは神々しい雰囲気包まれている。吸い込む空気が清らかで体の中にある毒素を綺麗にしてくれそうだ。
遺跡の中央付近にまで辿り着くと謎の女性の声が頭の中に直接語り掛けてきた声は言う。
——この先。奥へ進みたいのならば試練を受けなさい。
[勇気の試練][知恵の試練][力の試練]どの試練を受けるのかはあなた(読者様)の自由
ただし誤った選択をすれば あなたの物語は終焉を迎えることになるでしょう——と。
[勇気の試練]
仲間達と相談しルシアが選んだのは勇気の試練。謎の声は五つある祠堂の中でも一番大きな祠堂へ向かうように勧めた。雫のような水色の模様が描かれた扉が誰も手をかけていないのに自動的に内側へ開き、ブラックホールのような吸引力をもった黒と白と藍と色々な色が混ざったような、漆黒の宇宙のような渦がルシア達をぺろりと飲み込むんだ。
祠堂の中は漆黒の宇宙のような闇が支配した世界だ。音も光もなにもない静寂な世界。「——ようこそ終焉の世界へ」と声をかけてきたのは火山灰を被ったような髪色をした二十代後半から三十代前半くらいの見た目をしら執事風の男。男は提案する「——ひとつゲームをしましょう」パチンと指を擦り音を鳴らすと辺りが明るくなり祠堂の全貌が明らかになる。ルシアの目の前には巨大な天秤。右側には鳥籠に入れられた仲間たち、左側には血まみれで虫の息となっているリオンの姿があった。男はルシアに問う「どちらを助けますか」何処からともなく溢れ出る大量の水、リオンを助ければ仲間たちは溢れる水で溺れ死に、仲間たちを助ければリオンが溺れ死ぬ。「英雄の刺客を持つあなたに問いましょう。たった一人の友人の命を救う為に仲間を、全を見捨て殺すのか——仲間の命を救うために友人を、個を犠牲とし殺すのか。選んでください」一か全か。救うべき命を選ぶデスゲーム。どちらも択ばなければ両方が死ぬだけだと男は微笑みを崩さないまま——言った。
[仲間]
苦渋の選択。仲間か友人の家族か。どちらか片方の命しか救えず、どちらか片方の命を殺さなければならない。そんな中でルシアが出した選択はここまで苦楽を共にしてきた仲間たちだった。
「うそ……でしょ?」大切な幼馴染が水の奥深くへ沈んでいくその姿をまじまじと見つめリティが吐いた一言。絶望に打ちひしがれた者の言葉。
たったひとつの選択で、選ばれた命。失われた命。
虚構を見つめるルシアにシュヴァルツァーはそっと耳元で囁いた「貴方はとても賢い選択をしました——だってあの青年はもう死んでいるのですから」嘲りシュヴァルツァーその場から消え去った。
助けた仲間達にからルシアに贈られたのは感謝の言葉でも温かい抱擁でもなく、罵倒でも罵詈雑言でもなかった。ただ——パァン!! 一発の銃声だった。
「あんたが悪いんだから」地面に横たわったルシアを蔑んだ瞳で見つめリティが吐き捨てる——怒りと悲しみ、後悔の念に囚われた哀れな娘によって友人を殺した殺人者は消去された。
勇気の試練-終 生贄end
[友人]
ルシアはその場に立ち尽くしていた。どうすればいいのか分からなくて。
——考えろ。考えろ考えろ。考えろ考えろ考えろ。考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろといくら考えたところでなにも浮かばない。いい案なんてそもそもないのだから浮かぶわけがないのだ。
こうして考えている間にもどんどん水嵩が増えもう完全に沈むまで数分といったところ。このままじゃ両方「——リオンを助けてやってくれ!」悩みに悩んでいたルシアに答えを授けたのはリアだった。自分達の事は自分でなんとかするから、こんな所から逃げ出すのなんてお茶の子さいさいだ、いつものようにふざけ笑いながら——水の中へと沈んでいった。ルシアがそう選択したから。
「そんなに会いたいのなら合わせてあげますよ」水から上げられた鳥籠からは目を見開き逃げようと必死にもがき苦しんだ表情で固まり絶命した仲間たちの
——死体だった。
「特異点を殺してしまうなんて、なんと勿体ない」高等部になにか丸い筒状のものを突き付けられる感触。振り返らなくても分かる。カチャリと鳴ったそれは発射準備完了の合図——パァン!! 一発の銃声がルシアの頭蓋骨を貫通した。
勇気の試練-終 見損ないend
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[知恵の試練]
仲間達と相談しルシアが選んだのは知恵の試練。謎の声は五つある祠堂の中で一番左にある祠堂へ行くように勧めた。緑色の風になびく木の葉が描かれた扉は誰も手をかけていないのに自動的に開きルシア達をその中へと招き入れる。「——あてしょんぷりーず♪ ヨウコソ知恵の試練へ〜〜〜きゃはは♪」中へ入ったルシア達を出迎えたのは幼い子供、幼女を思わせる無邪気な声だった。真っ直ぐ奥へと延びる通路、壁には子供の落書きだと思われる絵が壁一面に描かれていた。声は言う。「アタシが出すモンダイを全部コタエテねっきゃっはは♪」全て正解することに重点をおくのではなく、全て答える事を重要点にしていることが気はなるがここは声のいう通り、従うことにした。
最後の問題はリティへの質問攻め。過去の記憶を持たない彼女への質問は忘れてしまった過去の事について。リティは答えられないでいる。答えられなければ手に持ったリボルバーに弾薬が装填そうちゃくされる。弾数は全部で六発分。もうすでに五発分セットされてしまっているこの状況でやってきてしまった最後の質問。
「あなたの手によって——殺された。あなたにはもう愛するは家族はいない」
[嘘]
そんなの嘘に決まってる。さっき見えたモノがなんだったのかは分からない。
本当の家族とか記憶を失っている私に分かるわけない。
でも一つだけ確かなことがある。分かることがあるわ。
リオン。そしてリア。この二人は私の大切な友人であると同時に幼い頃からずっと一緒に育ってきた大事な家族も同然の存在。
彼らが居る限り、私は一人じゃない。家族は——いる! 六分の一の確率に賭けることにするわっ!
その質問の答えは嘘であると思ったリティは引き金に指をかけゆっくりと "それ"を引いた。——パァァァァァンッ!!! 祠堂内に響き渡る一発の銃声と「リティィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」祠堂内に響き渡る愛する者を失ったリアの嘆きの叫び声。スローモーションのようにゆっくり倒れ行くリティを受け止めたリアは大粒の涙を流し彼女を蘇生させようと頑張った——どうんなに回復魔法をかけてもなにをしてももう無駄な事——即死だったから。
[本当]
リティはゆっくりとリボルバーを持っていた腕を下へおろした。諦めたのだ。考えることを。生きることを。死を選んだリティをリアが優しく後ろから抱きしめ耳元で囁くように「もうわかっているんだろ?」その言葉を聞くとまるで欠けたパズルのピースがカチリッとはまるかのように、心にぽっかりと空いた穴が埋まった。
あぁそうか——そうだよね。私達ずっと一緒に居たものね。
リオンとリアと私の三人。年齢もバラバラで性格もバラバラで顔を合わせればいっつも喧嘩になっちゃう。そんな私達だったのに何故かいつも息ピッタリで一緒に行動していたわよね。話すことは喧嘩ばかりだったけど。
楽しかった…。すっごく。嫌な事全部忘れられる暮らしにずっこく楽しかった。楽しいからこそこの時間が終わるのが怖かった。
大きくなるにつれて少しずつ思い出されていく記憶。亡くしたはずの恐怖。封印したはずの忌まわしい過去。
それを大好きな人たちに知られるのがすごく怖かった。だから私は逃げたの。リリアン達の隠れ里へ。あそこならもう怖い思いをしなくていいから、みんな同類だから。
でも、もうそれもお終いね。前を向いて歩き始めなければいけない時が来たんだね。
ありがとう——リア。
リティはもう一度、リボルバーの銃口を頭に当て瞼閉じた。
これはある女性の物語。
彼女の愛する家族はもうこの世界の何処にも存在しない。そして血で汚れてしまった彼女の手はもう綺麗にはならない。
幼い頃、父親と自分と妹を捨てて家を出て行った母親。
幼い頃、突然現れた人攫いの屈強の男達。幼子にはどうする事も出来ず攫われてしまった。
幼い頃、自分を攫って行った犯人のボスはまさかの母親だった。マフィアのボスと再婚し地に落ちた母。
幼い頃、再開した母親は別人になっていた。護るため。自分の身を護り此処から逃げる為
幼い頃、初めて握ったナイフで料理をしました。肉料理です。
幼い頃、お肉は何度も刺すことで柔らかくなると誰かから聞いた事がありました。
幼い頃、初めてやった料理は失敗してしまいました。出来たのは肉塊。お肉の塊でした。
幼い頃、雪白の騎士だったリオンの父親に拾われました。
—そして今日まで至るそうです。オワリ。
知恵の試練-終
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【隠された真実編】 ( No.188 )
- 日時: 2017/10/20 10:58
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: PGYIXEPS)
[力の試練]
仲間達と相談しルシアが選んだのは力の試練。謎の声は五つある祠堂の中で一番右にある祠堂へ行くように勧めた。赤く燃え盛る炎が描かれた扉は誰も手をかけていないのに自動的に開きルシア達をその中へと招き入れる。祠堂の中には壁一面に無数の位牌が祀ってあり、床には無数の石で出来た棺が置かれている不気味で不思議な空間。
「ここでどんな試練が行われるっていうんだよ」
リアが不満げに呟いた。確かにそうだ。謎の声に従い祠堂に入ってみたのはいいが次の指示が何もないのだ。唯一の出入り口である大きな扉の前に立ち往生するルシア達御一行。
何も起こらない。何も起きない。——なら一度、外へ出てみるかと大きな扉を開こうと押してみるが……「開かない!?」先ほどは誰も手にかけていないのに開いたにも拘わらず、今度は押しても引いてもびくともしないしないのだ。
冗談まじりにリアが「まさかこの扉を開くことが力の試練だったりしないよな?」と言ってみたが、あながち冗談でもなさそうだ。頑丈な扉は相変わらずびくともしない。
どうしたものかとみんなで頭を悩ませていたところだった、
"祠堂の上座にある棺を開けよ”
——低い不快な気持ちにさせる声が頭の中に直接聞こえて来たのは。
その薄気味悪い声はどうやらルシアにしか聞こえていないようだ。仲間達は無反応。
声が言う棺とは祠堂の一番奥に置かれている、ひときわ大きな棺のことらしい。この棺の蓋を開ける王に何度もルシアの頭の中に直接語りかけてくるのだ。
さて どうしたものだろうか。
[棺を開ける]
このまま悠長に仲間達と開かない扉と押し合いっこしている場合ではないのだ。今、この瞬間にもバーナードに捕まったヨナがどんな目に合わされているか、分からないのだ。いつまで生かせてもらえているか、分からないのだ。
——だからこそ。
ルシアは謎の声に従う事を決意した。
石で出来た棺はまるで何かを封印しているかのように重く硬く閉じられていて、ふぬぬっと渾身の力を振り絞って開けてみると、中から黒い靄のようなものが勢いよく飛び出しルシアの体を包み始めた。
「なにっこれっみんな、たすけ——」
助けを求めようとしたルシアの声は虚しくも、口から体の中へ侵入してくる黒い靄によってかき消されてしまった。
—そして黒い靄が晴れた
「遂に手に入れた 肉体を
女神に封じられて 数億年
遂に現世に蘇った」
晴れた黒い靄の中に立っていたのはルシア、ではなく黒いローブをまとい大きな鎌を持つ
「我は—
”ディオス・デ・ラ・ムエルテ”なり」
髑髏の顔をした者だったという—。
[死神end]
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜【隠された真実編】 ( No.189 )
- 日時: 2017/10/24 16:49
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: dpACesQW)
[棺を開けない]
゛棺を開けるのだ ルシア”
゛棺を開けるのだ ルシア”
何度も何度も壊れたからくり人形のように何度も同じ言葉を繰り返し頭の中に聞こえてくる謎の声。
まるでルシアを洗脳しようとでもしているかのように何度も、同じ言葉が繰り返される。
頭が痛い。頭痛が治まらない。
いくら頭痛が酷く意識が朦朧としてきたとしても、ルシアが信じるものはいつだって、どんな状況にに陥ろうとも変わらない、仲間達の声ただ一つだ。
「貴方のいう事は聞けません」
"なんと……なんと……愚かなァァァァァァ!!”
低い声。地鳴りと共に響いたその声は必要に開けるように迫っていた棺の蓋を吹っ飛させた。封じる蓋をなくした棺からは黒い靄のようなものが勢いよく噴き出す、その光景はまるで火山の大噴火のようだった。
ルシアは棺から離れ仲間達の元へ駆け走る。此処は危険だ。独りでいるのはもっと危険だ。出入り口の扉の前に団子のように集まり様子を伺う。
"ウウウゥゥアァァァアアガガガガガアアァァ!!!”
この世の者とも思えない雄叫びをあげるナニカ。
少しずつ晴れてゆく黒い靄の中に薄っすらと見える人影——それは黒いローブをまとい片手に巨大な鎌を持った
「我は—
”ディオス・デ・ラ・ムエルテ”なり」
髑髏の顔をしたものだった。
かつての英雄達すらも封じ込めることで精いっぱいだったと言われる、死神”ディオス・デ・ラ・ムエルテ”との戦闘が始まった。
作戦はこうだ。
ルシアとリアが真っ直ぐ、一直線に死神に向かって特攻する。
真正面から敵に突っ込むなど無謀の策だと言いたいところだが、これも考え合っての事、真っ直ぐ特攻するルシアとリアの後方からリティは銃を撃ち死神の気を散らす。死神は真正面から向かって来る敵と不規則に飛んで来る弾に踊らされ気が散るに違いない。
そして隙だらけの横から、シルとランファが巨大な鎌を奪う。死神がどんな攻撃をしてくるか分からないこの状況。そしてあの鎌の切れ味は厄介だ。早めに奪っておくに限る。
最後に残ったシレーナはリティの後ろに隠れ、みんなをサポートする役目に徹する。回復魔法を使えるのは彼女だけだから。
「行くよ、みんな!」
「おう」「ええ」
仲間達が答える。ルシアを真っ直ぐ見つめる信頼の眼差しで。
◆
死神との戦闘は、ルシア達の勝利で終わった。
思えば、生まれ育った村を旅立ってからの初勝利だ。仲間達と分かち合う初めての勝利に、最初はなにがどうなったのか分からず皆呆けていた。
最初に口を開いたのは誰だったか? 誰かの「やった…の?」という一言でやっと理解した、自分達が勝利したことに。仲間達は喜び、抱き合い勝利の嬉しさを分かち合った。
"よくぞ倒されました"
ルシア達の勝利を祝福する謎の声。これは祠堂に入る前に聞いたあの声だ。
声は見事試練を乗り越えたルシア達を温かく向か入れる。此処へ入って来た扉がゆっくりと大きな音をたてながら開かれた——眩い光が視界を奪い瞼を閉じた。
"目を開けてみなさい_ルシア"
その声に従い、薄っすらと瞼を開け、まだ眩い光にを疎ましく感じつつも慣れた数秒後「——っ」ルシアが見た光景は。