複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン〜小さな箱庭〜 ( No.24 )
- 日時: 2014/04/09 17:53
- 名前: 姫凛 (ID: /JJVWoad)
-第一章 物静かな看護師の闇-シレーナの封じた過去編
悪趣味な人形兵たちとの戦いから数日後……。
町の娘たちが帰ってきた喜び、娘たちを助けてくれたルシアへの感謝の気持ちを込めて町の人たちは祭りをあげることにした。当然、本日の主役のルシアとそのお供のランファも祭りに参加する。
「僕……目立つの苦手なんだけどなぁ…」
「えーなんでー?あたしは目立つの、大好きだよー」
「……うん。だろうね」
「………なんか傷ついたーーぶぅ〜」
沢山の料理と歓声に囲まれたルシアは少し照れくさそうにランファ全く動じずいつも通りの態度で町のどの方向から見ても目立つ特等席に腰をかける。
「ささっ、ルシア様っ。どんーと食べて飲んでさわいでくだされっ」
町長が次々とルシアの前においしそうな果物や料理を並べる。ランファは何も言われる前からそれをパクパクと貧乏な子供が何日ぶりにかにご飯にありつけたかのようにしゃぶりついている。
「でも…町長さん。僕はすべてのさらわれた人たちを助けられませんでした……それなのに……」
申し訳なさそうに言うルシアに町長は優しく
「話は娘さん達から聞いています。ザンクとかいう残忍な男にさらわれ、殺し合いを演じさせられ、挙句の果てには殺される。そんな地獄の日々からルシア様が救ってくださったと……。
ですからそげーに自分を責めないであげてください。死んでいった娘さん達もけして貴方を恨んでなんかいませんから」
町長の言葉を聞いてルシアはどこか救われたような気持ちになった。自分は許されてもいいんじゃないのかと…。
「そうですか……そう言って貰えただけで気持ちが楽になったような気がします」
「それは…よかった」
優しい笑顔で言うと町長は祭りの次の演目の準備へと向かった。
しばらくするとまた大量の料理を持ってきて。
「ささっ、娘さん達の感謝の舞はじまりますぞよっ」
とまるで少年のようにワクワクキラキラした表情で言っている。
「シレーナもでるからしっかりと目に焼き付けるんじゃのぉ〜」
いつの間にやって来たのかルシアの隣にシレーナのお爺さんがカメラ片手にスタンバっていた…。
一度会場が静かになりそして……辺りから生演奏の美しい音楽が聞こえてきた。
音楽に合わせて町の美しい娘たちがセクシーな踊り子の衣装を身にまとい優雅で華麗で素敵な舞を披露する。男たちは皆その華麗な舞に心を奪はれる。
ルシアもシレーナの少し恥ずかしそうにでも懸命に舞っている姿に心を奪われそうになった。
ランファというと最初から最後まで
「うっめー」
町の主婦たちが作ったお袋の味料理に心を奪われっぱなしだった……。
曲もクライマックスに差し掛かり舞も派手になってゆく。薄汚い男たちが娘たちのパンチラを期待する中それは予兆もなく突然と起きた--
「………うっ!」
「キャーーーーー」
「シッ、シレーナ!?ど、どうしたんじゃっ!?」
突如苦しそうなうめき声をあげシレーナはその場に倒れてしまったのだ。
一気に辺り一帯に響いていた歓声は悲鳴へと変わった……。
祭りは中断しすぐにシレーナを家まで連れ帰り、医者を呼んで診てもらう。
ザンクとの事でいろいろあった為に物凄くシレーナの事が心配なルシアはこっそりとシレーナの容態をみてみると……
「(まさかこの症状は…ヨナと同じ……)」
シレーナの手先足先はまるで壊死しているかのように黒ずんでいた。
医者は…残念そうな表情で、
「…残念ながら闇病です」
「そっ、そんなぁぁぁ!!?じゃっ、じゃあシレーナは……シレーナは……」
闇病は医者が匙を投げるくらいに不治の病なのだ。
一度発病したら最後。もう現医学技術では絶対に助からない。たとえ医学が進歩しても助かる見込みはない…。
「……すまんが一人にしておくれ」
「ジェームズお爺さん……」
医者が帰った後、ひどく落ち込んだお爺さんにルシアは、何もかける言葉が見つからなかった。静かに部屋を後にする。
廊下を歩いていると
「ねぇーねぇーちょっとー」
「えっ?ランファ?」
今シレーナが寝ている彼女の部屋から顔を覗き出したランファが、こっちこっちと手招きしている。よくわからないが呼ばれたので取り敢えず行く。
ルシアが部屋に入るとランファは、他に誰もいないかを確認した後、ゆっくりドアを閉めて鍵もかけた。