複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン〜小さな箱庭〜 ( No.26 )
日時: 2014/03/12 13:38
名前: 姫凛 (ID: UMqw536o)







廊下を歩いていると
「ねぇーねぇーちょっとー」
「えっ?ランファ?」
今シレーナが寝ている彼女の部屋から顔を覗き出したランファが、こっちこっちと手招きしている。
よくわからないが呼ばれたので取り敢えず行く。ルシアが部屋に入るとランファは他に誰もいないかを確認した後、ゆっくりドアを閉めて鍵もかけた。
ベットに静かに眠るシレーナに視線がいく。元々色白で美しい肌だったが今は少し青白く死んでいるのではないかと呼吸を確かめたくなるほどだ。
「ん〜、これは相当ヤバイですなぁ………」
「……そうだね」
顎に手を添えて腕を組み難しそうな顔で言うランファに寂しそうな声であいずちする。
「このままだと、穢れになっちゃいますなぁ……」
「そうだね………ってえ?……けがれ??」
そうだねと受け流そうとしたが、聞きなれない単語に躓く。慌てて聞き返したが
「うん。穢れ。これは…デスピル病の第一段階ってヤツですなぁ……」
「…ですぴる病?……闇病じゃなくて…?」
「……闇病?なにそれ?」
質問に質問で答えないでほしいと思う。ランファは質問した後「ああっ!」と思い出したかのように声をあげた。


「そうかっ!まだこの時代は、ハッキリとした病状とかわかってなかったから、闇が突然すべてを奪い去る病。闇病って呼んでたんだっけ」
「………??」
ポカーンとクエスチョンを頭に浮かべたような顔をしているルシアを放置し一人でそうかそうかと納得したランファは何を思ったか突然怒りだした。
「でもっあたしはデスピル病の方が言い慣れてるから、今日からはデスピル病って呼ぶことっ!いいねっ!!」
「あっ…うん」
迫力の押しに負けうなずく。
「それで…あのさっき言ってた、けがれって?」
「あぁっそうだった!こんなとこでのんきにおしゃべりしてる場合じゃないんだった!!」
また一人でパニックになり頭を抱えてどうしようどうしようと考えはじめ…
「あれだよっ!あたしと貴方が初めて会った時にヨナちゃんを襲っていたあいつっ!」
「あいつ…?」
ランファと初めて会った時のことを思い出す。
あの時はたしかいつものように隣町で仕事を分けて貰い、近くの森でイノシシ狩りをして帰り道、パジャマ姿でふらふらと歩いてるヨナを見つけて……声をかけて気が付かなかったから駆け寄ろうとしたら……そう、空から突然降ってきた化け物だっ!
「あの化け物がどうかしたの?」
「どうもなにもっ!このままほっといたら、シレーナさんはあんなバケモノになっちゃうのーー!?」
「えーーーー!?じゃぁ……ヨナもいずれ…。どうすればいいの、ランファ!?」
どうにか治す方法はないのかとランファに問うが、なにやらポンチョの下から肩にかけて下げていたショルダーバッグをガサゴソとあさりだしはじめ


「あれ〜〜?どこにしまったっけな〜?あれ〜?」
「ねぇ…ランファ…」
「ちょっと待って…あっ!あったー」
「それは…?」
ご機嫌に取り出したのは綺麗な薄水色のただの石ころだった。大丈夫かなこの子と思いながらルシアはランファを見つめる。
「パラパラッパラ〜〜〜精霊石〜〜〜」
「……せいれいせき?」
何故か何処かの猫型ロボットのような声で精霊石を取り出した。
心配そうな顔で自分を見るルシアにランファは、偉そうな態度で
「まぁあれだ。習うより慣れろって奴だっ。行ってらぁ〜〜」
「へっ?わっわわわぁ〜〜〜」
急に石をルシアの方へ向けたかと思うと、突如石が光だして石の中に体が吸い込まれて行ったのだ。
精霊石に吸い込まれていったルシアを見送った後、ランファは精霊石をシレーナの胸元へ持っていき
「まぁ、後はパピコが上手いぐわいにやってくれるよね?シレーナさん、後もう少しだけの我慢ですよ」
と言うと精霊石をシレーナの心臓めがけて差し込んだ。精霊石は溶けるようにシレーナの中へと入っていった…。


Re: シークレットガーデン〜小さな箱庭〜 ( No.27 )
日時: 2014/03/13 14:15
名前: 姫凛 (ID: eK41k92p)

(-ルシアside-)











暗い-







暗い-







真っ暗で何も見えない-







何もない-







音も人もいない-







ここはどこ-









僕はだれだ-








自分の呼吸音も-









心臓の音も-







聞こえない-







体を動かそうとしても-








激痛が走りまったく動かない-








僕は死んだのか-








だからここにいるのか-









ならもうすべてを諦めてここで永遠の眠りについていいのかな-






-もう終わりにする







-まだ、諦めない















--いやっ諦めてたまるかっ!まだ終わるのは、許されないっ。
僕には……僕には……ヨナを……ヨナを……助けに行かないといけないんだっ!
こんな訳のわからない場所で意味もなく消えるのはおかしい。
行かないと…。痛くても恐くても、行かないと。前へ進まないと…。
だって…だって……ヨナが助けを求めているんだからっ!!


「その魂ちょ〜〜〜っと、待った!暫く、暫くぅ!何処の誰とかぜーんぜん存じませんが、その慟哭、その頑張り。他の神様が聞き逃しても、私の耳にピンときました!宇迦之御魂神もご照覧あれ!この人を冥府に落とすのはまだ早すぎ。だってこのイケメン魂、きっと素敵な人ですから!ちょっと私に下さいな♪」

ガラスが砕ける音がして、共にこの空間に光がともった。僕はどうやらうつ伏せの状態ではっていたみたいだ。
軋む体をどうにか起こして、頭痛に耐えながら辺りを眺める。
空間の中央にはいつの間にか、ぼうっと何かが浮かび上がりつつあった。
その姿は——


外見はほとんど普通の人と変わらない。だけど違う。明らかに。
ここへ来るまでに出会った敵などとは比べ物にならないほどの、人を超越した力。
触れただけで蒸発してしまいそうな、圧倒的なまでの力の滾り。
それが彼女の体の内に渦巻いているのが、嫌でも感じ取れる。

「謂われはなくとも即参上、軒轅陵墓から、良妻妖精のデリバリーにやってきました!」

青紫色髪のツインテールで妖精みたいなキラキラした羽を生やした女の子がビシッと決めポーズを決めて何か言っているみたいだけど…正直、何言ってるのかわからない……。

「あ、なんかドン引きしてません?えーと、貴方が私のご主人様……でいいんですよね?」

「えぇ!?ちっ、違います!」

心配そうな顔で言っている彼女には悪いけど、僕にはご主人様なんて呼ばれたい趣味はない。

「……あの〜もしかしてマスターから何も聞いていらしゃらないのですか?」

「ま、ますたー……?」

「はい。ランファ様です。あのデスピル病の根源を倒しにいらっしゃったんですよね?」

「……………」

何も聞いてない…。そうだった…だんだん頭がハッキリしてきたぞ。
そう急にランファが綺麗な薄水色の石……精霊石だったかな?それを僕に近づけて…それから精霊石に体が吸い込まれて……そうだ!こんな訳の分からない所へ来てしまったんだった!

「(あのマセガキ〜〜〜面倒な事は全部、私に押しつけやがって〜〜〜!!絶対、今回の仕事を最後に契約解除してやるぅ〜〜〜!!)」

僕の今置かれている状況を察してくれたのか、彼女は地面を蹴ってジタバタした後クルリと回って自己紹介をして笑顔でここの説明をしてくれた。
彼女の名前はパピコさんと言うらしい…。こういっちゃなんだけど、ランファとは別の意味でめんどくさそうな人だ…。

「ここはプリンセシナの…ロビー的な場所でございます」

「……ぷりんせしな?」

「はい。人の記憶や心が形になった世界。人の心が創りだした迷宮とでもいいましょうか」

「人の心が創りだした迷宮……プリンセシナ」

「プリンセシナは最大十階まである巨大迷宮。デスピル病は、このプリンセシナに魔物を拡散させて最下層にあるといわれる、本能とすべて感情が眠る場所と呼ばれるシークレットガーデンを目指し徘徊し、人の記憶を栄養分として成長しそして!最終的には人を穢れに変えるのです」

「穢れ…」

説明を聞いているとヨナの事を思い出す。あれからもう数週間…ヨナも遅かれ早かれあの穢れと呼ばれる化け物に……残された時間はあまりないはずだ。

「ですが焦ってもいけません」

「え?どうして?」

「デスピル病は心の病。治す事は患者の心、誰にも見せたくない封じた過去を闇をさらけ出さないといけないんです」

「そうか……」

「下の階へ行けばいくほど闇は濃くなりなります。患者との絆の深さで行ける階層も違います」

「じゃあ、最下層のシークレットガーデンで行くには僕とシレーナが深い絆で結ばれていないといけないんだ」

シレーナとの絆の深さか……。

「はい♪ですからまずは気長に私との絆を深めて愛の巣を作ってから、また来ましょう?」

「……シレーナとの絆か」

「あの〜ご主人様?」

「ねぇ、今僕とシレーナの絆度だったらどこまで行けるか調べられない?」

「えぇ〜出来るは出来ますけど、まずは私との絆を〜」

「お願いします!」

「ぅ〜む、仕方ないですね」

パピコさんはめんどくさそうだったけど渋々、空気上に画面のようなものをだしてそれをタッチしながら操作している。
すごい…こんなのみたことない…他国ではこんなすごい技術があるんだ…。
(今現在の技術力ではタッチパネルのモニターなど到底不可能)

「え…嘘!?なんなんですかー!これー!?」

「ど、どうしたの…?」

「どうしたもこうしたもないです!ヒドイです、ご主人様!このパピコちゃんを差し置いて、他の女性と絆度Maxなんてっ!!」

「絆度Maxってことは……シークレットガーデンに行けるんだねっ!?」

「え…?ま、まぁそうですけど…それよりも!」

「ありがとう!パピコさんっ。僕行ってくるよ」

「えっ?行くってどこに?ってえぇぇぇ、待ってくださいー置いてかないでーーご主人様〜〜」


プリンセシナ第一階層と書かれた扉の前に立つ。慌てて追いかけて来てくれたパピコさんも僕の横にぜーぜー言いながら立つ。…すみません。
ここをくぐった先はシレーナの心の世界。…誰にも知られたくない事が封じられた場所。
ごめんね、シレーナ。あとでどんなに怒られても殴られても構わないから、君の封じた誰にも見られたくなかったであろう闇の過去を盗み見るね。
扉に手をかざすと音もなく小さな光を発して僕たちを包み込む。
この先にはいったいどんな世界が広がっているんだろう…。



Re: シークレットガーデン〜小さな箱庭〜 ( No.28 )
日時: 2014/03/13 14:04
名前: 姫凛 (ID: 344/XKJR)

第一階層








「ここは……」

「森のようですね」

……森。第一階層と書かれた扉をくぐった先にあったのは南の森みたいに木々が青々していて春の陽気で小鳥たちが楽しそうにさえずる森。
…でも違う。明らかに。この森からは生命力を感じられない。
鳴き声は聞こえるのに…姿は見えない。……不思議な森だ。

「人の心が創りだした迷宮って言っていたから、すごい迷路みたいな物だと思ってたよ」

「迷宮と一括りに申しましても、プリンセシナは人の記憶を元に創りだした物。十人十色。人それぞれで皆違うのですよ」

「へぇ……」

と言った後にパピコさんは追加で、特に大切な思い出や濃く覚えている場所とかが迷宮の舞台として現れやすいと教えてくれた。
じゃあこの南の森に似て似つかないこの不思議な森もシレーナにとってはなにか意味深い場所だったのかな?

『お父さん。お母さん。見てみてっ!粘土でパンダの置物を作ってみたの』

「あれは……」

しばらく歩いていると一軒の家を発見した。
家の前ではヨナくらいの女の子と仲好さそうなご夫婦がみんな仲良く日光浴をしていた。
女の子は可愛らしいパンダの子供かな?の小さな置物を持って嬉しそうにお父さんに駆け寄っていってる。

『おお、シレーナ!すごいじゃないか!』

「えっ!?シレーナ!」

「しっ!お静かに。気づかれてしまいます」

思わず声にだしてしまってパピコさんに注意されてしまった。
シレーナ。たしかにあの女の子のお父さんはそう呼んだ。
ここはシレーナの心の中だから……これはシレーナの記憶の一部?

『本当にすごいわ、シレーナ。今日は特別にあなたの好きなものを作ってあげましょう♪』

『本当!?やった!』

『『ふふふふ』』

『わーい!わーい!ワタシもっともっと勉強して、いろんな事出来るようになってお父さんとお母さんを、もっとも〜と喜ばせてあげるんだからっ!』

『まぁ!』

『ほぉそれはそれは楽しみだな』

『ふふんだっ!』


楽しそうに話しているシレーナたち親子を見て僕は小声で

「昔のシレーナってちょっとお転婆だったんだ」

「おや?今は違うんですか?」

「うん。今はどちらかと言うと物静かであまり感情を表に出さないな…」

「へー。少女も一皮むけて大人になったと言うことでしょうか」

「うーん…そうゆう事はよくわからないな」

「ま、ご主人様可愛い♪」

「………」

でも本当に大人になったから、性格が真逆に変わったのかな…。
他にもなにか重大な事があって、変わらず得ざる負えないかったとか……。いや、さすがに考えすぎかな。


『お父さん。ワタシちょっと近くの川に行ってくるね』

『はい。ここには魔物がいないからって、安心し過ぎずに気を付けて行ってくるんだよ。いいね?』

『はーい』

「おや?移動するみたいですね。ついていきますか?」

「うん。魔物はいないって言ってたけど、あのくらいの女の子にとっては魔物以外も十分に危険だしね」

「ご主人様ったらお優しい。ますます好きになっちゃいますぅ」

「あはは……どうも…」

やっぱりご主人様って呼ばれるの慣れないな…。

『うわーきれー』

川につくと大きな滝があって沢山の魚が元気に泳いでいた。そういえば、僕の家の近くにある小さな川もここくらいに透き通るように綺麗な水だったな。

「ここでピクニックをしたら気持ちよさそうですね」

「そうだね。魚釣りもいいかもね」

「おぉ、ご主人様。魚釣りおやりに?」

「いやっ僕はしたことないんだけど、死んだ父さんがやってたんだ」

「ほう。なるほど」

『キャーーー!!』

「「えっ!?」」

パピコさんと何気ないしゃべりをしていると、川の上流の方からシレーナの悲鳴が聞こえてきた。

「行ってみよう!」

「あっはい!」

慌てて悲鳴がした方へ行ってみると…見たこともないようなバケモノがシレーナを襲おうとしていた。

『いっいや……』

「あれは、魔がい物!」

「まがいもの?」

「はい。前にも説明しました、デスピル病のウイルスみたいな魔物です。あいつが私達よりも先にシークレットガーデンへ到達されると、シレーナさんの心は壊れ荒れも無残な穢れになってしまいます!」

「どのみちここで倒さないといけないんだねっ!」

「お待ちくださいご主人様!」

「なにっ!?」

「魔がい物は絶対にご主人様が今腰に下げているその剣で、彼らのコアがある胸元へ一突きで倒してください」

「父さんの形見のこの剣で一突き…わかった」

「……私には案内と応援しか出来ませんが…頑張ってください」

「うんっありがとう!」

パピコさんにお礼を言うと一目散にシレーナの元へ駆け寄り、

「はぁぁぁ!!」

[ぎぎゃぁぁぁぁ!]

魔がい物のコアを一突きに突き刺した。魔がい物はこの世のものとは思えないほどの恐ろしい悲鳴を上げた後、黒い煙のようになって消え去った。

「君っ大丈夫!?」

『…ぁ。……ぁ』

シレーナは放心状態で何かを言おうとしてたみたいだけど、家の方角へ走り去って行った。

「まぁなんですかあの子は!?助けてもらったお礼も言えないなんて、礼儀知らずにも程があります!」

「ま、まぁまぁ…」

プンプン怒るパピコさんをなだめながら、あんな怖い思いをしたんだから言えなくてもしかたないよね。
それに僕はシレーナがケガをしていないんだったならそれでいいんだし。

[ギギギギィ]

「あっ扉が!」

「ここでのイベントをクリアしたので次の階層への扉が開いたみたいですね」

「次の階層か…」

第一階層でシレーナが昔はお転婆だったって事がわかったけど、次はなにがわかるんだろう…?
いや人の過去を盗み見てて楽しみにしちゃ駄目なんだけど。……気になるな。
不謹慎にも少しワクワクしながら僕たちは第二階層と書かれた扉をくぐった。





Re: シークレットガーデン〜小さな箱庭〜 ( No.29 )
日時: 2014/03/13 15:41
名前: 姫凛 (ID: jk2b1pV2)

第ニ階層




「ん……ここは村?」

「みたいですね。のどかでいいですね」

「そうだね」

「私とご主人様の愛の巣もこんなのどかな場所に建てたいですね♪」

「………」

パピコさんの最後の言葉は置いて。村を探索する。

『そうね〜』

『それでね〜』

『きゃはははっ』

『待て待てー』

おばさん達が井戸端会議をしていたりちょっとやんちゃすぎる感じの子供達が、駆けまわっている。

「もうっ!元気よすぎますよねっ。ぶつかったらどうするんでしょう」

「まぁまぁ。子供は元気が取り柄なんだからさ」

「も〜〜ご主人様は優しすぎです!」

まぁまぁとパピコさんをなだめているとさっきまでにぎやかだった村が一気に静かになってみんなある一定の方向を見てる。…僕も見てみるとそこには

「あ……シレーナ」

紙袋を抱えて俯いて歩いているシレーナだった。
第一階層でみた元気な覇気がなく今のシレーナに少し近いような暗く元気のない表情。

『えいっ!』

『キャッ!』

「えっ!?」

ある一人の男の子がシレーナに向かって石を投げつけた。
石はシレーナの目の近くに当たって頭から血が流れ出す。それを見た子供たちは次々に石をシレーナに投げ始めた。

『出て行けーーー!!』

『出てけー!』

『魔女ー!』

『………』

「まじょ?」

『まぁ汚らわしい!もうこの村には寄り付かないでと言ったはずでしょ!』

『いやぁ〜ね。見てくださいよ、リブスさん家のお子さんがまた外に出てますよ』

『そうですね。まったく、汚い菌をこっちに移さないで欲しいわね。魔女の子が!』

『そうですよねぇ〜』

子供だけでなく大人たちまでシレーナを汚いもののように見て陰口をたたいている。

『うぅ………』

『あっ!魔女が逃げたぞっ。ははっ、そのまま森の化け物に食われちまえっ!』

何ながら立ち去っていくシレーナに向かってヒドイ言葉を吐く子供達。

「あの!」

『なっ、なんだいあんたは』

「ちょっ!?ご主人様」

居ても立っても居られれず、大人たちを問い詰めた。

「どうして彼女が魔女なんですか!?」

『な、なんでってねぇ〜』

『そりゃあねー』

『あんな両目の色が違う子なんて魔女以外の何者でもないわよね〜』

「そんな…そんな理由で……」

『なんだいあんた!あの子の肩もとうってのかい?』

『こいつらも魔女の仲間だーー!』

『きっとそうだわ!キャー』

「……僕はっ!」

「ご主人様。お気持ちはわかりますが、ここは引きましょう。次の階層への扉も開きましたから」

無理やり引っ張るパピコさんに負けて僕は石やナイフを投げてくる村人たちから逃げ村を後にした。

「……知らなかった。こんなイジメにあっていたなんて…」

次の階層への扉へ向かっている途中僕は自分が情けなくて……言葉が出た。

「プリンセシナは、誰にも知られたくない封印した記憶が創りだした世界、なんです」

「………」

分かってはいた。理解してたつもりだったけど……ここまで辛いものだったとは…。僕の覚悟は半端なものだった。

「……帰りますか?」

僕の事を心配してパピコさんは言っいる

「このまま下へ下へと進んで行くと今のよりもっと重く苦しい記憶の一部を見ることになりますよ。それでも進みますか?」

もしここで僕が引き返せばシレーナは確実に穢れになってしまう。
僕が…僕が頑張らないと!

「いやっ行くよ。こんな所で諦めたら駄目なんだ!」

「キャンッ♪それでこそ私の惚れたご主人様でございます」

「行こう、パピコさん!」

「はい♪」

止まっちゃ駄目だっ!辛くても押しつぶされそうでも止まったらそこで終わりなんだ。
僕には助けを待ってる人がいるんだ!だから前へ前へ進まないといけないんだっ!!
新たに覚悟を決め直し第三階層と書かれた扉をくぐった。
たぶん。シレーナは僕が想像してたよりも重たく辛く壮大な人生を歩んで来たんだと思う…。だからこそ僕がしっかりしないとっ!



Re: シークレットガーデン〜小さな箱庭〜 ( No.30 )
日時: 2014/03/14 17:22
名前: 姫凛 (ID: I3friE4Z)

第三階層






「ここは……誰かの部屋?」

「まぁ見てください、ご主人様。このタンスほこりだらけですよっ」

パピコさんは、タンスの上をスーと指で擦ってほこりまみれの指を僕に向けてまたプンスカ怒っている。
勝手に人のタンスの上なんて調べていいのかな…。

「もしかして…パピコさんって潔癖?」

「いっいえ……べつにそこまでではありませんけど…。汚いのよりは綺麗なのがいいです」

「確かに…」

僕も昔はよくヨナに掃除の心得的なことをたたきこまれてたなぁ…。ヨナも綺麗なの好きだったし…それに掃除すること自体が好きだったからな…。

『もうっいい加減にしてよっ!!』

「!?」

急に女の人の怒鳴り声が聞こえた。

『そんなに怒鳴ることないだろう!』

次に男の人の怒鳴り声が聞こえた。あれ確かこの声は……。

「はっは〜ん……これは夫婦喧嘩ですね」

パピコさんは何か閃いた的ななんか意地悪そうな顔で言っている。夫婦喧嘩でなんであんなにも楽しそうなんだろう…。

「覗き見行ってみましょう♪」

「えぇ……」

強引にパピコさんに連れられて、ある部屋の前に立ち聞き耳をたてる。

『なぁシレーナにはやっぱり友達を作らせてあげたほうがいい。でもきっと、この村じゃ友達は作れないだろう……。だから村を出て新しい場所へ引っ越さないか?』

『何言ってるのっ!?友達なんて人必要無いわ。人なんて、いつかは裏切るんだら、友達なんていらないわよ!あの子は、勉強だけしてればいいのっ!』

『どうしたんだ、最近のお前はなんか変だそ?家事もまともにしないし、シレーナには勉強、勉強って……。昔は村のみんなと、少しでもいいから仲良くなりたいって言ってたじゃないか』

『そんなの昔の話よ。人は絶対裏切る……。貴方だって本当は、もう私を裏切って他の女の人と浮気してるんでしょ!』

『何を言ってるんだ。そんなわけないだろう?』

『ウソよっ!嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘……!!』

『おい、落ち着けって!』


「………」

あれはシレーナのお父さんとお母さんだ…。
…でもどうしてなんだろう?あの二人はあんなにも仲良さそうでラブラブだったのに……。

「………あの人。少々様子がおかしいですね」

「え?」

夫婦喧嘩を覗き見しだしてからずっと黙っていたパピコさんが不意に真剣な顔つきで言った。
おかしいと言えば確かにいろいろおかしいけど……一体何が?

「あの、シレーナさんのお母様でしたっけ?あの人…極度に人間不信になってます」

「あっ確かに…」

前見たときはもっと明るくて積極的で気さくそうな感じったけど、今は誰にでも牙を向ける猛獣みたいな感じだ……。なにかあったのかな?

「シレーナのお母さんがどうかしたの?」

「これはおそらく……いえでもまさか…」

「……?」

「すみません、ご主人様。まだ私の中で推測のいきを出ないのです。ですから、確信が持てるまで待っていただけません?」

「え……あっうん。わかったよ」

「ありがとうございまーす!」

何故だかすっごく嬉しそうに言ってる……。僕にはパピコさんの考えてることが読めないな…。パピコさん。難しい人。


次の階層への扉が開いたから僕たちは次へと進むことにした。…シレーナのお母さんこの先どうなっちゃうんだろう。大丈夫かな?


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.31 )
日時: 2014/03/15 11:07
名前: 姫凛 (ID: TaHLTR3K)

第四階層





「ここは…?」

「テーマパークですね。デパートの屋上とかにある」

「てーまぱーく…?でぱーと…?」

都会の方にはそんなのがあるんだ。すごいなぁ…。
テーマパークと言うところには公園みたいに、沢山の遊具があって沢山の子供たちがキャッキャッと遊んでいる。
こんな楽しそうな所に来たって事はシレーナのお父さんとお母さん、仲直りしたんだな、きっと。じゃないとこんなとこ来ないよね。

パピコさんと一緒にシレーナ親子を探していると…

「あっいた。あれでも……」

沢山のお店が並んで椅子やテーブルが沢山置いてある食事処……パピコんがフードパークって言うところらしい。
そこで何故かしんみりとした空気で楽しくなさそうにオレンジジュースを飲んでるシレーナと挙動不審でイライラしてる感じのお母さんがいた。

『ねぇ、シレーナ』

『なに?お母さん』

『もしお父さんとお母さんが別々に暮らすことになったら、シレーナはどっちと暮らしたい?』

『………』

えっ!?これってまさか…!

『……お父さん』

『……そう。シレーナ、あなたもお母さんを裏切るのね……』

寂しそうに苦しそうな表情で言うお母さんを見てるとなぜか胸が苦しくなってくる…。

記憶の場面が変わってまたシレーナ家に移る。
ここは玄関?ちょっと待って!じゃあやっぱり……。
今まさにきっと起こるであろう事を止めようとした僕を無言でパピコさんは止める。そして

「これは過去に起きた記憶の再現。今貴方様が関与したところで未来は変わりません」

「くそうっ」

パピコさんが言うことはもっともで正しいことなんだって、わかってるけど、頭ではわかっているけども!心じゃわからないよ……。

『じゃ、行きますね』

『あぁ……あっちでも元気でな』

『えぇ』

『お母さん……?』

『シレーナ!?どうして!起きて来たら駄目だと言っただろう?』

『ぅ……』

『いいのよ』

『しかし……まだ十歳の子供にこんな光景みせるのは……』

『よく聞いてシレーナ』

『な…に?』

『お母さん。このお家を出て行くことになったの』

『え……?な…んで』

『ふふっそれは……あなたのせいよ』

『おいっ!』

『ぇ…』

『あなたがお母さんを裏切るからよ。村の人たちがあなたをいじめるのもぜ〜んぶ、あなたが悪い子だからなのよ』

『やめろ!この子には関係のないことだろう!』

『ふふふっあはははっ』

『私の…せい。私が……悪い子だから…』

『シレーナ!シレーナいいか、よく聞きなさい。お前は悪い子なんかじゃない。お母さんはお前のせいで出て行くんじゃないんだ、いいね』

『ぁ…ぁ……ぁ』

『あはははっ、それじゃあごきげんよう。もう会う事なんてないでしょうけど!あはははっ』

ヒドイ……自分の子供なのに。どうしてあんなにヒドイことが平気な顔で言えるんだ!

「やはり……」

「パピコさん?」

「あの人。デスピル病にかかっています」

「えっ!まさかじゃあ!?」

「はい。きっと急におかしくなっていったのも、すべてはデスピル病のせいで心が壊れていったのが原因かと」

「デスピル病……」

「早く次の階層へ行きましょう。なにか善からぬ事が起こるような気がします」

「……うんっ。行こう!」

新たに解った真実。シレーナのお母さんはデスピル病患者だったんだ。
だから挙動不審だったり言動がおかしかったりしたんだ。
デスピル病…なんて恐ろしい病なんだ。かかったその人だけじゃなくて周りにいる人にまで不幸し絶望させ闇に落とすなんて……許せない。絶対に。


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.32 )
日時: 2014/03/16 11:01
名前: 姫凛 (ID: 1Lh17cxz)

第五階層





「うっ!」

次の階層の記憶の舞台もシレーナの家だった。だけど……

「ほこりくさっ!」

「物が全部ほこりで真っ白になってるね…」

第三階層では指ですくうと少しほこりが付く程度だったけど、第五階層じゃ……。
置いてある物すべてほこりで真っ白になってて、部屋中ほこり臭くて息ができない。ここにずっといたら絶対、体の何処かに異常がでそうだ。

「奥様が出て行って、さぞ苦労されているのでしょうね」

「…うん」

そうか…。シレーナは今お父さんと二人暮らしなんだっけ。
…男一人ですべての家事をやるのは大変だよね。わかります。

「ここにまた連れて来られたって事はまたここでなにかあるってこと?」

「はい。正確には“あった”ですねどね。…おそらくは何かあります」

「……二人を探そう」

「ご主人様積極的〜♪」

パピコさんのからかいの言葉はこの際無視して、僕は一つ一つ丁寧にドアを開けてシレーナとお父さんを探した。
…どの部屋も長年使われていないのかな?ほこりまみれで白く染まっている。

「…あ」

「居ましたね」

第三階層でお父さんとお母さんが夫婦喧嘩していたリビングで楽しそうにお喋りしているシレーナとお父さんがいた。
心なしかお父さん。痩せ衰えたように見える…。やっぱりいろいろ辛く苦しいんだな。
それにシレーナも明るく元気に振る舞っているけど、どうみてもあれは空元気だ…。

『なぁシレーナ。二人で何処かに旅行に出かけないか?』

『旅行?行きたい!行きたいっ!……あっ、でもお父さん。お金は…どうすの?』

『大丈夫。お父さんの親戚の家に遊びに行くだけだから。旅費は全部その親戚の人が代わりに払ってくれるんだ。って……あっ』

『あぁー!?お父さん今、親せきの家に遊びに行くだけって言ったー!!もうっそんなの旅行じゃないじゃんっ』

『ごめんごめん。でも遠くに行くから少しは旅行っぽくなるよ。なんてたって国境を超えるんだから』

『……こっきょう?』

『そうだよ。海の国から隣にある森の国へ行くんだよ』
 
『わぁー外国に行くの!?言葉は大丈夫かな?』

『あはは。大丈夫大丈夫だから。さ、準備しておいで』

『はーい。森〜森〜♪』

『………』

良かった!家が荒れていたからどうなるかと思っていたけど、旅行に行けるなら大丈夫だよね!
二人とも元気になって良かった。

「本当にそう思います?」

「……えっ?どうゆう意味?」

「見てください」

パピコさんが指さすのはせっせっと旅行に行く準備をしているシレーナを温かい目で見守っているお父さんだった。
普通の光景だと思うけど…それがどうしたんだろう?

「シレーナさんは準備しているのに、ご自分は全く準備していません」

「もう準備してたんじゃないのかな?自分で計画したんだから、早めに…」

「そうだとしてもおかしくありません?」

「どこが…?」

一応聞き返してみたけど本当は僕もうっすらとは気が付いていたんだ。親戚の家に行くというこの“旅行”の本当の意味を……。

「……認めたくないのはわかります。辛い現実ですからね」

「認めたくない??なにを。全然わからないよ……パピコさん」

「やはり私の口から言うのは少々おこがましい…でしたね」

「?」

「ささ次の階層へ参りましょう。真実はやはり他人の口よりご自分のその目でお確かめくださいまし」



Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.33 )
日時: 2014/03/18 13:28
名前: 姫凛 (ID: 13XN7dsw)

第六階層





……。

『わぁ……大きなお家だね。…お父さん』

『あっ、ああそうだね……』

この町…。この家……見たことある。いや毎日のように来ていたんだから見間違えるはずもないか……。

『(なんか今日のお父さん変だなの)』

……。わかってる。最初からわかっていたんだ。

『ガチャ』『おおよく来たのぉ〜』

この独特の話し方のお爺さん…。

『お久しぶりです』

『こっこんにちは……』

『大きくなったのぉ〜。シレーナちゃん……』

『そ、そうかな…?』

『うんうん……よしよし』

『えへへ……』

この時のシレーナはこんな風に笑っていたんだ…。

『……この子をよろしくお願いします』

『ああ。シレーナちゃんのことはワシに任せなさい』

『えっ?……任せる?ねぇ……なんのお話してるの。お…とう……さん…』

……シレーナもこうなるってわかっていたのかな?
いやそれほどまでに残酷な話はないよね。こんなのって!

『……っさようならシレーナ!』

『お父さんっ!お父さんっ!』

……くぅぅぅ。

『私を捨てないでっ!私を一人にしないでっ!お父さんっ!お父さーーーん!!」

『シレーナちゃん。駄目だ!行ったら駄目だっ!』

『はなしてっ!お父さんっ!お父さん………』

シレーナのお父さんはただの一度も振り返らずに走り去って行った。

[……みんな…みんな……私を……置いて何処かに行っちゃうんだ……]

「えっ!?この声はまさかっ!」

「…?」

パピコさんには聞こえていないのかな?彼女の心の叫びが——

[私が悪い子だから?]

違う……違う!

[お母さん…お父さん……会いたいよ……もう一度…一目でもいいから会いたいよ……そうだ…アレを使えば…]

アレ?アレって?シレーナ!シレーナ、あれってなんの事!?

「……」

「ご、ご主人様?急に黙られて……そ、その…大丈夫ですか?」

「…うん。僕は大丈夫だよ」

「そ、そうですか…でも…あまり顔色が…」

「大丈夫だって言ってるだろ!」

「きゃっ」

「あ、ごめん……」

「いえあんな物を見た後じゃ精神的におかしくなっても不思議ではありません。やはり…休憩を……」

「ううん…。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。次へ行こう」

「ご主人様がそうおっしゃるなら……。でもご無理は禁物ですよ」

「わかった」

……パピコさんにはああいったものの本当は結構きてるんだよな。精神的に。
でもここで諦めるわけにはいかない…。たぶん次が最後の記憶だ。
シレーナが言ってたアレ。今の僕以上に精神がおかしくなっていた彼女がやることだきっと危ないことに違いない。
止めないと……。過去に起きたことの再現だから現実にはなんの影響がないとしても……。止めないと。



Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.34 )
日時: 2014/03/18 14:06
名前: 姫凛 (ID: KP9MPHtc)

第七階層







「ここはシレーナさんのご実家!?」

気が付くとそこは何度も来たシレーナにとって大切な思い出の場所。
お父さんとお母さんとの楽しいのも悲しいのもすべての思い出が詰まった大切な場所。
やっぱり…やっぱり…最後の記憶はここなんだ。

「……シレーナを探そう」

「………っ。はいっ!」

パピコさんは察しがいいから助かるな。時間もあまりないし話をする暇もないから……。
ひとつひとつ丁寧に部屋を見て回る。どこもかしこも誰も手入れしていないせいかボロボロだ。
でもだいぶ前までは誰かが生活していたような跡がある。これは…もしかしてお父さんの?
……シレーナを親戚の家に預けてからもここで暮らしていたのかな?

「ご主人様、見てくださいこれっ!」

「こっ…これは……」




『お父さん。これでまた会えるよ……』

……いたっ!
家の地下室で血文字で魔方陣?みたいな物の上に腐敗した、たぶんお父さんの死体を虚ろな目で見つめているシレーナを発見した。


「この錬成陣は……危険です。離れて!」

「パピコさんどうしてっ!?」

「とにかくなんででもですっ!」

『ふふふっ……』

ポタンッとシレーナが不気味に笑いながら自分の血を魔方陣みたいな物の上に一滴垂らすと眩い光を放ちながら魔方陣みたいな物が光り出し…。なんなんだ…あれは…。

『ギロッ』

『ぅ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

「シレーナーーーーー!!」

「ダメーー!」

目玉!?大きな目玉が一つ陣の中心に現れて黒い無数の手の様な触手の様な物が沢山陣の中から出てきた。
シレーナはそのウニョウニョした変なのに囲まれている。
助けようと手を伸ばしたけど…

「ッ!?」

なんだ…今の痛み!今まで感じた事のない痛みが全身を走った。
斬られるでも叩かれるでもない不思議な痛み。でも激痛。

すべての事が終わった後にあったのは——

『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』

『なっ…なに…あれ……?』

「……ぁ」

「………穢れ」

「穢れ!?」

一瞬、意識が遠のいていたけどパピコさんの一言で戻った。

「でも僕が見た者とは全然ちがっー」

「ええ。あれは何十年も穢れと同化したために独自に進化したのでしょう。もしくは…誰かの人体錬成の失敗作」

「……じんたいれんせい?」

「人が人を再構築し生き返らせるという禁忌の術です」

「死んだ人を…生き返らせる術……」

の失敗作が…あの穢れ。もしくは…独自に進化した穢れ。
…どちらも嫌だな。

『やめてっ!お父さんを食べないでっ!!』

『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』

『……イタッ!えっ……なに?え?うっわわわわぁぁぁぁぁ!』

シレーナの左足が…ないっ!?

「人体錬成の対価です」

「えっ?」

「人体錬成を行うには、対価を支払はないといけないのです」

「それが……左足?」

「いえっ。実際には体の一部ですが……」

シレーナの場合は左足だったと言うことなんだ。

『ないっ!私の腕が無いっ!イタイッイタイ!……ぁ』

[ああああああああああああああああああああああああああああっ!!]

「「っ!?」」

またっシレーナの叫び声!?

「大変ですっご主人様!」

「どうしたの!?」

「さっきの穢れが開いた扉から、シークレットガーデンに!!」

「ええぇーーー!!」

「きっと、あれがすべての元凶。シレーナさんの心を侵すデスピル病の親玉だったんですよー!」

「早く追いかけないとっ!」

シークレットガーデンが壊されたら全てが終わってしまう——


Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.35 )
日時: 2014/03/18 20:40
名前: 姫凛 (ID: M.fbnnZK)

最下層 シークレットガーデン











「……ここがシークレットガーデン」

クリスタルでできた木々に囲まれた様な感じの場所だ。
中心にはクリスタルでできた花のつぼみみたいなものがある…。色鮮やかに内部から光っていて綺麗だ。

「ご主人様!見とれている場合じゃありませんよ」

「へっ?あ、あぁそうだった」

「もうしっかりしてくださいまし」

「ごんめんなさい……」

パピコさんに怒られて気をしっかり持つ。
辺りを見渡すと……

「……いた」

『ガウッ グチャッ バクッ バクッ ウグッ』

「今は卵で言う殻の部分を食べているみたいです。時間はありませんよ」

「…うん」

ゆっくりゆっくり相手に近づいて行く……。十分に近づいたら

「はぁぁぁ!」

『グぐぐぐ……』

「まだです!」

「はぁーー!」

[やめてーー!!]

「えっ!?」

クリスタルのつぼみの中からシレーナが何かを訴えている…。
あれは幻?それとも……

[やめて…お願い…ルシア……]

「シレーナ…?」

『ガウウ…』

「ご主人様!」

「うわぁぁぁ!!」

シレーナに気を取られている隙に穢れが襲ってきた。

[……それは…その人は私のお母さんなの!]

「ま、まさか……」

[私のせいで…穢れになってしまった…お母さんは……私に復讐しにきたの……だから……殺させてあげて]

「なに…言って…」

[ルシアが…助けに来てくれた。嬉しかった…でも……死にたかった]

「う…く…」

『ガウッガウッ』

[私が…悪い子だから。ルシアにもみんなにも迷惑かけて……。だからお父さんは私を捨てて……]

「違う!!」

『グアアッ!?』

伝えなきゃっ!シレーナにお父さんの本当の想いを伝えてあげないとっ!

「君は勘違いしているんだ!」

[かん…ちがい…?]

「そうっ。君のお父さんは、君が悪い子だから、君を捨てたんじゃ、ないっ!」

[嘘…嘘だよ。ルシアは優しいから嘘ついて…]

「ううん。本当の事なんだ。これが証拠だよ」

第七階層でシレーナを探していた時に見つけた。お父さんが最期にシレーナへ書いた手紙を手渡した。

【シレーナへ

この手紙を君が見ている頃にはもう私はこの世にはいないだろう。

君を捨てた私を恨んでいるかい?いや優しい君はむしろ、自分が悪い子だからだと自分を責めて罪に苦しんでいるんだろうね。

ごめんな、本当の事を言えなくて…。

君のお母さん…私の妻、ユリアは闇病と呼ばれる心の病にかかっていたんだ。

急に言動がおかしくなったり人間不信に陥ったりするらし…。治し方は現医療技術すべてを用いても不明。
誰にも治せない不治の病。

ユリアが闇病で入院していると知ると、元医者の私はどうしても治してあげたかったんだ…。

でも闇病は感染症。まだこれからの未来ある君にまで感染してしまってはいけない。君の未来を奪う権利なんて誰にもない!

…と思った私はああする事しか出来なかった。

君を捨てた。君を助ける為であってもその事実は変わらない。

本当にすまなかった。許してほしいとは思わないよ。

ただ…どうか自分をもう責めないであげてほしい。自分を許してあげてほしい。

君は悪い子なんかじゃない。とても心優しい良い子なんだ。

シレーナ。君は私とユリアの大切な…大切な宝物だよ。

お父さんとお母さんは天から見守っています。どうか幸せになってください。

お元気で】


[お父さん……お父さん……]

「あの手紙にはそんな事が……」

「うん。ただ少し気持ちがすれ違っていただけなんだ。本当はみんなお互いを思っていたんだよ」

[うっ……うう……お父さん、お母さん……]

『ぐ……あぁぁぁ……』

「あっ穢れが…」

「闇が晴れて、浄化されてますね…」

「そっか…良かった」

「ご主人様」

「ん?」

「ご苦労様でした」

「ぁ…いや…」

「これをどうぞ」

「…ブレスレット?」

「用途はのちのちわかりますので♪」

「………ありがとう」

なんだろう…パピコさんの笑みが怖い…。
でもせっかく貰ったんだから身に着けておかないと悪いよね…?

だんだん意識が薄れていく。僕も元の世界に戻るんだ…。
プリンセシナ……初めはどんなところなのかわからなくて、不謹慎にもワクワクしていたけど、やっぱり人の心を見るのはあまり好い気はしないな…。
ここは二度とやるもんかっ!って言いたいところだけど。…また誰かが困っていたら助けに行きたいかないと。

——それが僕のヨナを助けるのともう一つの使命だと思うから








(-ルシアside-終)

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.36 )
日時: 2014/03/18 17:57
名前: 姫凛 (ID: jkT.oUcJ)





「ん……」
「おっはよーーーーー!」
「うわっ!?」
耳元で叫ぶランファの声に驚いてルシアはベッドから転げ落ちてしまった。
「い…ったた…。ランファ?」
「うん。ランファだけど…どうしたの?ハトが豆鉄砲くらったような顔して……」
「ランファ!このっ!」
「きゃっ。なっなにっ!?くすぐったい」
今までの感じた思いのすべてをランファへぶつける。くすぐるという形で。
きゃははと笑いながら二人は数分くすぐりあった。
「はぁ…はぁー。こんなに笑ったの久しぶり〜」
「ははっ、僕もだよ」
「……も、もうええかのぉ〜?」
「あっ!ジェームズお爺さん!?」
声がした方を見るとドアの隙間からこっそりと中を伺うお爺さんの姿があった。
「居たなら参加すればいいのに〜」
「いやっさすがにジェームズさんには無理あるから……」
「ワシも若ければ…」
「え?」
お爺さんが何かをボソボソ言っていたが、この際スルーする。ルシアはプリンセシナでパピコによってスルースキルを鍛え上げられたのだ。


「一言御礼を言いたくてのぉ〜」
「おれい?」
「わーい、おれい〜」
少し沈黙し溜めた後
「……シレーナを助けてくれてありがとうじゃのぉ」
「いえ…僕は……」
「二度も救われた。なにかしたいんじゃがのぉ」
「そ、そんなの…」
御礼なんていらないですよと断ろうとしたルシアの前に
「……ヨナちゃん探すの手伝う」
「えっ?シレーナ?」
すっかり元気になりしかもばっちり旅の準備をしたシレーナの姿が…。
「いやっ手伝うって…」
チラリとランファを見ると呑気にそっぽを向いて口笛を吹いている。確実にコイツがばらしたのだろう…。
「でもこれは僕の問題だし。…それにシレーナ病み上がりだし…」
「ワシも止めたんじゃがのぉ」
「行く」
「「………」」
シレーナの瞳には決意の炎がメラメラ燃えていた。
これは何を言っても無駄なんですねとお爺さんとアイコンを取ったルシアは大きくため息をついた後


「わかったよ…。でも危険な旅になるよ。それでも…」
「いい」
「………」
言い終わる前に言われてしまい。やっぱり頑なで頑固そうだったのでもう一度大きなため息をつき
「よろしくね。シレーナ」
「うん。よろしく」
「わーい仲間が増えたー!」
「そこっはしゃぎすぎないっ」
シレーナと固い握手をした。ランファはルシアが腰をかけているベットの上でジャンプジャンプと飛び上がりはしゃいでいる。
その姿を皆やれやれと言った表情で見守っているのであった。


旅に出発するのは明日の朝に決定し一人になったシレーナは、窓を開けて綺麗に輝く星空を見上げ自身の胸に手を添えて…
「お父さん、お母さん。…ありがとう。私、もう大丈夫だよ……。もう一人じゃないよ。安心してね」
小さく言うと電気を消して静かに眠りについた……。




















-シレーナの封じた過去編-終