複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.48 )
日時: 2014/04/09 18:23
名前: 姫凛 (ID: tO5N9Mr.)

第三章 大都市で起きた不可解な事件-宿での選択肢-







「おーきー。ちゅーおーれっしゃー」
「ランファー早く来ないと置いてくよー」
「あーん。置いてかないでー」
ルシア達は今、森の国と海の国の国境大橋を渡る唯一の巨大列車、中央列車の駅にいる。
列車は黒光りしていてモダンでアンティークな仕上がりで、記念写真を撮っている客やランファのように見とれて口を大きく開けてポカーンとしている客があちらこちらにいる。
そろそろ列車が出発するので慌てて乗り込むとそこには豪華絢爛の内装で寝室にはキングサイズのふかふかベットや泡風呂が楽しめるバスタブなんかがあった。
「でもたしかに…大きいよね」
それぞれの寝室に荷物を置いて一息ついていると、ルシアが部屋をキョロキョロ見渡しながら緊張した声で言う。
「…最高級列車。セレブ」
「が、タダで飲み食いできるとか、ドルファ太っ腹だねっ」
ルシアと同じく緊張気味に言うシレーナとは真逆に列車に備え付けの施設を片っ端しから見て回っているランファがニコニコ顔で言った。
「でもなんか申し訳ないような……」
「ダメダメ!こんなチャンス滅多にないんだからっ、めいいっぱい満喫ないとっ!!」
「ランファは満喫すぎじゃなんじゃ……」
めちゃめちゃ列車ライフを満喫しているランファに少し引き気味に言う。
そんなの屁でもないランファは窓を開けて
「あーーー!海だーー!!」
「……国境越えた」
「へぇ…あれが海」
しばし皆で海に見とれていた。
「あれ?海お初?」
「うん。ずっと森の中で暮らしていたから」
「なるへそー」
初めての海に少し興奮気味に答える。そして思う。ランファは一体何者なんだろう?と、でもそれはシレーナの闇と同じく触れてはいけない場所だと思ったルシアはあえて聞かなかった。
「海の国は魚おいしい」
「「へぇー」」
シレーナの海の国知識に感心していると
「皆様、長旅ご苦労様でした。間もなく海の国首都、大都市ゼルウィンズに到着致します」
アナウンスが流れてきた。
「降りるとこ、ここっ!?」
「…うん」
「慌てずにゆっくり降りるんだよー」
「はーい」
駅に到着し中央列車を降りたルシア達を待ち構えていたのは


「お待ちしておりました。ルシア様。そしてお連れの方々」
綺麗で美しい青年がルシア達に向かってぺこりとお辞儀をし丁寧な言葉遣いで言った。
彼はまるでどこかの王子の様な美しき見た目で金髪色白で白いスーツ着用、あとは白馬さえいれば完璧と言った感じだ。
「えっと……あの……」
なにがなんなのかよくわからないルシアは挙動不審で青年に尋ねる。
ランファとシレーナも状況がよくわからないためルシアの後ろに隠れて様子を見ている。
「申し遅れました。私めはドルファフィーリングの紫龍と申します。長旅ご苦労様でした」
「はぁ…はぁ…」
「なんでドルファの人が来てるの?」
「実は…本日予定してましたドルファ立食パーティーが先日あった事件のせいで、二週間延期する事になりまして…そのことをお伝えに参りました」
「えぇーー!?」
「……事件?」
「申し訳ありません」
紫龍は申し訳なさそうにまたぺこりと頭を下げる。
「お詫びと言ってはなんですが、ドルファの運営する宿で長旅の疲れを癒してくださいませ」
スラスラと紫龍は丁寧に律義にわかりやす言葉遣いで話していく。


「それからルシア様の身にもしもの事があってはいけないので、せいげつながらボディーガードをつけさせていただきます」
「ぼでぃーがーど…?」
紫龍は斜め後ろに視線をやり
「ムラクモさん。いつまでも隠れてないで出てきなさい」
「…はっはい……!」
斜め後ろの大きな柱の後ろから、赤いポンチョを纏い赤いドレスのような服を着た美女が顔を出した。
「(綺麗な人だな……)」
「「………」」
彼女があまりにも美人だった為ルシアはつい見とれてしまい心の声がボソボソと出てしまった。
それをランファとシレーナは黙って白い目で見つめる。
「申し訳ありません。彼女は極度の恥ずかしがり屋で…」
「すっ、すいません…」
「そう言いながらまた隠れようとしないっ」
「…はいっ!」
いっこうに柱の後ろから出てこようとしないムラクモにルシアはゆっくり近づいて優しく


「僕も初めて会う人の前では緊張してしまうから、気にしなくていいですよ」
「はっ…はい……」
ルシアに見つめられて、恥ずかしいのかムラクモは耳まで赤くしてまた柱の後ろに隠れてしまう。
はぁ…とやれやれ顔でため息をついた後、紫龍は
「ムラクモはこんな恥ずかしがり屋ですが、腕は確かなのでご安心ください。それでは行きましょうか」
と言い終わると近くの駐車場まで皆を優しくエスコートしてくれた。
そして駐車場には
「おーーリムジンだー!すげー!」
「こらっ、はしゃがない」
「どうぞっ」
超長いリムジンが駐車されていた。
初めて乗る高級車に大はしゃぎのランファを落ち着かせ、リムジンへ乗り込む。
やはり中も普通の車と大違いで、比べ物にならないくらいに広い。
ランファ曰く、遊び放題の空間らしい…。




Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.49 )
日時: 2014/03/23 12:00
名前: 姫凛 (ID: f0TemHOf)








「おー!はえぇーー!!パン屋だぁー!おぉっ!見てっ見てっ!ピエロ!ピエロがいるよっ!にひひっ」
車の外から見える景色に大興奮でいちいち反応し大きな声でみんなに伝える。
海の国の首都というだけあって、大都市ゼルウィンズには沢山の人が行き交い、沢山の面白おかしい恰好をした商人たちが大道芸を披露している。玉乗りや猿回しやけん玉使いなど様々だ。
テンションマックスで大興奮のランファをよそに、はぁーとため息をついた後ルシアは申し訳なさそうに紫龍に向かって
「騒がしくって、すみません…」
としょんぼりと言ったが紫龍は優しく微笑んで
「いえいえ。賑やかで楽しいじゃないですか」
ルシアをフォローしてくれた。
ルシアはなんだかほっとし、先ほど駅で聞けなかったあの事件の事をタ尋ねてみる事にした。
「あの」
「はい?どうしました」
「先日起きた事件って……」
「あぁ」
ごく自然な素振りで紫龍はそれはと続けて


「…見つかったんですよ」
「……?」
「死体が」
「えっっ!?」
あまりにも衝撃的な発言だった為、ルシアは開いた口が塞がらない。
シレーナは目を丸くして驚き、ムラクモは悲しそうな表情で外を眺めている。
「ドルファの雇っていた者でした。川辺で焼死体として打ち上げられていていたんです」
「……焼死体」
「「…………」」
先ほどまで大はしゃぎしていたランファもさすがに空気を読んで唾を飲む。
シレーナは看護師としての観点で、なぜ焼死体なのに水のある川辺で発見されたのだろうと考えた。普通なら、溺死などだろうに…。
「彼の葬儀などでやむおえず、パーティーを延期する事になったのです。ルシア様には大変ご迷惑を…」
「いっいえっ!そんな事があったのなら仕方ないですって」
「そう言っていただけると彼も救われます」
紫龍は最初から最後までサラリとした微笑みで教えてくれた。
何故か焼死体の話よりもそのことを笑顔で答えられる紫龍の方が何倍も恐ろしいと感じる…。


「犯人は?」
ルシアにしがみつき震えた声でランファは紫龍に聞いた。
「いえ。実はまだ捕まっていないのです」
「えぇーー!?雪白の騎士はなにやってんのー!?」
「イタイッイタイ!」
「あ…ごめんっ」
犯人が捕まっていないと聞いてつい手に力が入り、ルシアの腕をメキメキと折れるのでないかというくらいにギュッと握りしめた。
すぐにルシアが痛いと言ったから、折れるまでには至らなかった。青あざでランファの手形がついてしまったが…。
「そうですね…。なのでルシア様にもしもの事があっては大変なので、ボディーガードを付ける事にしたのです」
「な、なるほど…」
少し引いた感じ答えた後、ルシアはチラリとムラクモの方を見つめた。
外はもう夕暮れ時、ムラクモの頬が茜色に染まる。その姿は絵になり、とても美しかった。
「そろそろ宿に着くみたいですね」
「おぉ〜やどやど〜」
ランファが変な歌を歌っている間に、ドルファの宿へ到着した。


「「おぉーーーーー!!」」
宿はルシアたちが想像していたごく一般なものとははるかに違い、まるで宮殿のような豪華絢爛だった。
「あたし知ってる。こうゆう大人な感じの宿ってラブホ…」
「それっ、大人違いっ!」
「むぐぐっ」
またどこぞで覚えて来たのか知らないが変な事を言い出すランファの口を慌てて塞ぐ。
むぐぐっとまだなにか話したそうにしていたが、ここは心を鬼にして容赦なく塞ぎ続ける。
「それでは、私はこの辺で…。ムラクモさん。後は頼みましたよ」
「はっはい……」
紫龍が去り際、ムラクモは恥ずかしそうに返事をした後、紫龍にだけ聞こえる様に小声で「お任せください。王子」と言った。だがその声は森で鍛えられたルシアの耳には、ボソボソ程度でハッキリではないが聞こえていた。
「なにやってんのー?早く早くー」
「あっうん…。空耳だったのかな…?」
紫龍とムラクモは何を話していたんだろうと気になるルシアだったが、ランファに呼ばれて仕方なくその場を後にする…。


「ルシア様たちのお部屋はこちらです」
「ふっかふっか〜」
「ベットの上ではしゃいじゃ駄目だってーランファー」
部屋に案内されるや否や、一目散にベットに飛び乗ってはしゃぐランファを叱るルシアだったがまったく相手にされず…。
「私は外で待機しているので、何かありましたらお声をかけてください」
「「はーい」」
ムラクモは部屋を出て行き、それぞれの自由時間になった。



そして数刻後…。夜中。
「……眠れない」
昼間に死体の話を聞いたからだろうか?目がさえて全く眠れない。隣を見るとシレーナがスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
「少し夜風でもあたってこようかな…」
シレーナを起こさぬようゆっくりベットから起き上がり部屋を出る。すると
「…あれ?あのこにいるのは…ランファ?こんな時間に何処へ行くんだろう」
真夜中の廊下、明かりは点いているが従業員の姿も他の客の姿もない。ランファとルシア 以外誰もいない…おや?
「あれ、外で待機してるって言ってたムラクモさんもいないや…どうしたんだろう」
この時ルシアの頭の中には二つの選択肢があった。








後をついて行く-








ムラクモを探す-











どちらを選ぶかは君(読者様)次第だ

選択次第で物語は大きく変わり 結末も大きく変わる

さぁ 君ならどちらを選ぶ——?