複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.50 )
日時: 2014/03/25 08:56
名前: 姫凛 (ID: ZZRB/2hW)

-スキップ物語-(シレーナの封じた過去編)





町の娘たちを救い出したルシア。

町の人たちの勧めにより感謝の気持ちと娘たちが帰って来た喜びをを込めた祭りに参加する事になった。目立つのは苦手だと少々嫌々だったが、大量の料理に釣られたランファのせいで祭りに参加するのだった。

祭りは大いに盛り上がりメインイベントの娘たちによる感謝の舞いが披露された。その中にはシレーナの姿もあった。

男たちは皆、心を奪われ釘付けになった。恥じらいながらもルシアも

皆で盛り上がっていたその時、事件は起きた。

シレーナが突然苦しそうなうめき声をあげその場に倒れたのだ。

慌てて家に運び医者に見せると…シレーナはヨナと同じ闇病にか侵されていた事が判明した。

医者は匙を投げ、シレーナはただ死を待つだけとなってしまった…。

と思われたにだが、ランファがこれはのちにデスピル病と呼ばれる病でほって置くとヨナが襲われたバケモノ——穢れになってしまうのだと言う。
治す方法はあるにはある。それは——シレーナの心。即ち体の中に入って直接、病の元凶を倒すというとんでもない方法だった。

ランファは肩から下げていたバックをゴソゴソとあさりだし、何かを探している。

不思議に思いながら見ていると、どこぞの猫型ロボットの様な声で水色の綺麗な石を取り出した。それは見ているだけで吸い込まれそうな…。

ランファは何の説明も無しに精霊石をルシアに近づけ……なんと、ルシアは本当に石の中へ吸い込まれてしまったのだ。

石に吸い込まれる姿を見送った後、ランファはシレーナに近づき、ゆっくりとシレーナの胸の中に精霊石を入れた。石は音もなく体内へと沈んでいった。


石に飲み込まれたルシアが目を覚ますとそこは不思議な場所だった。

真っ黒く暗い。何も聞こえない。声も呼吸音も心臓の音さえも。

ルシア以外に人の気配はない。

身動きを取ろうとすれば激痛が体中を走る。

ルシアは自分は死んでしまったのだと錯覚する。

ここは何もない無の空間。

ただ漂えばいいだけ。

痛みも悲しみも苦しみもない。


-もう終わりにする




-まだ諦めない







ルシアは諦めなかった。

ここで諦めてしまえば、ヨナは永遠に助からず、シレーナは死ぬのだ。

それは駄目だ。絶対に命を懸けてでも助けないとっ!

と心のそこから思ったルシアの前に光が現れた。

ガラスが割れる音と共に現れたのは、見た目は人だが違う。体内の奥底から人間離れした巨大な力を嫌でも感じられる少女だった。

少女はパピコと名乗り、ルシアをご主人様と呼ぶ。

ルシアにはそっち系の趣味はないため丁重にお断りしたのだが、別にそうゆう意味ではないと彼女は言う。

そして闇病の真の恐ろしさをパピコは教えてくれた。

闇病…のちにデスピル病と呼ばれる病。

別名、心の病と言われ一度発病すれば人間不信に陥ったり、挙動不審になって周りの者に当り散らしたりするらしい。

足先手先から徐々に体が黒ずんでゆき最終的にはヨナがさらわれたあの日、空から突然降って来たあのバケモノになってしまうのだ。

早く治さないとっ!と焦るルシアンだったが、デスピル病を治すには、人の記憶や心が創り出した迷宮 プリンセシナと言う場所の最下層にあるシークレットガーデンで悪さをしている元凶を叩かないといけないらしい。

人の封じた記憶をみるのだ。プリンセシナに入るためにはそれそうおうの絆が必要とされる。

闇に落ちた過去を見せてもいいと思われて、やっとスタートなのだ。

シレーナとの絆の深さは正直、あまり自信なかったがとりあえず調べてもらうと、絆度Maxだったのだ。

パピコから色々言われたが、これでシレーナの救う事ができると喜ぶルシア。

この時の彼は知らなかった。プリンセシナがどんなに危険で恐ろしい所なのかを——


第一階層では幼いシレーナと実の両親との微笑ましいやり取りだった。

この頃のシレーナは今とは違いお転婆だったと言うことがわかった。

第二階層では近くの村で大人からは白い目で見られ心のない言葉を言われ、子供からは「魔女」と呼ばれ石を投げられている。

それでも耐えている幼いシレーナの姿った。

この光景に頭にきたルシアは大人たちを問い詰める。

なぜシレーナが「魔女」なのかと。

すると信じられない答えが返ってきた。

シレーナの瞳は左右で色が違う。…ただそれだけだと言うのだ。

そんな事でっ!と怒ろうしたルシアを村人たちは奴も魔女の仲間だー!と言い張り始め、石や包丁などを投げつけてきたのだ。慌ててその場を逃げ出す。

第三階層ではシレーナの母親が突然不思議な行動をし、父親と口論している所がみえた。

どうやら母親は人間不信に陥っているようだった。

第四階層では母親が家を出て行く姿だった。

何故か母親は自分が出て行くのも村人がイジメをするのもすべて、シレーナが悪いのだと言い残し出て行った。

シレーナの心は崩壊寸前だった…。

第五階層では母親がいなくなり貧しいながらも親子二人で暮らす、父親とシレーナの姿があった。

突然父親はシレーナに旅行へ行こうと言い出した。

お金がないためそんな大層なものではなく、森の国に住む親せきの家へ行くというものだった。

それでも空元気でシレーナは喜び荷物の準備をする。その姿を父親は温かいまなざしで見守る。だが彼の傍に彼の荷物はない。




Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.51 )
日時: 2014/03/25 09:11
名前: 姫凛 (ID: lCrRYYeA)





第六階層では森の国でよく見覚えのあるあの町であの家であの独特の話し方をするお爺さんが出迎えた。

すべては簡単に察しがつくことだった。シレーナは捨てられたのだ。父からも母からも。

ここで完全にシレーナの心は崩壊してしまった。


第七階層では狂った少女が禁忌の術に手を出した。

人体錬成。

自分の体の一部を代償に人を生き返らせる術。だが成功例はない。

気が付くと父の死体をバケモノが食らっていた。

やめてと叫びとめようとしたのだが、動けない。激痛がする。

痛みの場所を見てみると……ないのだ。シレーナの足がないのだ。

完全に崩壊した少女の心をまだ闇は侵し続ける。

シークレットガーデン。父親を食らっていたバケモノが、クリスタルで出来た花に食らいついている。

倒すには油断している今しかない。だがそれを阻む者が…。

シレーナだ。シレーナは今まさに自分を殺そうとしているバケモノは、かつて母親だった女のなれの果ての姿だと言うのだ。

自分は悪い子だから殺されて当然だと彼女は言う。だがそれは違う。

全く信用するきゼロだったがルシアが、彼女が魔女でも悪い子でもないという証拠をみせた。

それは、時を超えた父から娘への手紙だった——


【シレーナへ

この手紙を君が見ている頃にはもう私はこの世にはいないだろう。

君を捨てた私を恨んでいるかい?いや優しい君はむしろ、自分が悪い子だからだと自分を責めて罪に苦しんでいるんだろうね。

ごめんな、本当の事を言えなくて…。

君のお母さん…私の妻、ユリアは闇病と呼ばれる心の病にかかっていたんだ。

急に言動がおかしくなったり人間不信に陥ったりするらし…。治し方は現医療技術すべてを用いても不明。
誰にも治せない不治の病。

ユリアが闇病で入院していると知ると、元医者の私はどうしても治してあげたかったんだ…。

でも闇病は感染症。まだこれからの未来ある君にまで感染してしまってはいけない。君の未来を奪う権利なんて誰にもない!

…と思った私はああする事しか出来なかった。

君を捨てた。君を助ける為であってもその事実は変わらない。

本当にすまなかった。許してほしいとは思わないよ。

ただ…どうか自分をもう責めないであげてほしい。自分を許してあげてほしい。

君は悪い子なんかじゃない。とても心優しい良い子なんだ。

シレーナ。君は私とユリアの大切な…大切な宝物だよ。

お父さんとお母さんは天から見守っています。どうか幸せになってください。

お元気で。父より】

父親の本当の気持ちを知ったシレーナの心は浄化され、バケモノも煙となって消え去った。

シレーナがバケモノになる脅威は完全に消え去ったのだ。

現実世界に帰るとお爺さんが泣きながら何度も何度もルシアにお礼を言った。

こうしてシレーナの闇は晴れ、解決したのであった——


めでたし めでたし