複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.56 )
- 日時: 2014/03/31 12:13
- 名前: 姫凛 (ID: eetvNq3l)
第三章 大都市で起きた不可解な事件-遺体のない葬儀
「おっきろーー!!」
「うわぁぁ!?」
次の日。気持ちよくすやすやと寝ているルシアだったが、ランファに耳元で大きな声で叫ばれ、飛び起こされてしまった。
「なっ…。なにっ!?」
「おっはー」
えっ?えっ?と驚きぶんぶんと首を大きく振るルシアにいたずらっ子さながらの笑顔で朝のあいさつをするランファの顔を見てルシアは半笑いで
「あ…ぁあ、おはよう」
と返した。
あんな起こされ方をしたせいか、目がさえ二度寝したくても出来なかった。仕方なく、顔を洗い複を着替えて寝室を出ると、窓辺で静かに読書を楽しんでいるシレーナの姿があった。
「おはよう、シレーナ」
と声をかけると、シレーナは本から目線を放しコクンと頷くと本に目線を戻し読書へ戻った。
「声をかけてもずーとあんな感じなんだよ。つまんなぁ〜い」
ぶーと頬を膨らませてつまんなさそうに言っているランファの頭を優しくなでてあげながらもう一度シレーナに声をかける。
「本当にシレーナは本が好きなんだね」
「……」
相変わらずシレーナは本を読むことに集中し、こちらの声が全く聞こえていないようだった。
諦めてほかの事をしようとしたその時、
「…あともう少しで読み終わる」
と独り言のようにシレーナは言った。
ルシアは振り返り、
「そうなんだ。じゃあ、新しい本でも買いに行く?」
と聞くとシレーナは目を輝かせて嬉しそうに
「うん」
と答えた。一方のランファはえぇ〜と少々不満そうだったが
「おはようございます。お食事の用意ができましたので持って参りました」
ムラクモが運んできた朝ごはんを見た瞬間、ご機嫌斜めだったのが上機嫌になった。
ルシアは独りこっそりと、「現金な子だな…」と呟いた。
食事のメニューは豪華宿だけあって朝から超豪勢だった。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.57 )
- 日時: 2014/03/31 12:15
- 名前: 姫凛 (ID: eetvNq3l)
「うっひょ〜すご〜い」
ランファは奇妙な奇声をあげて部屋中を駆けまわって喜びを表現している。
「「……ゴクリッ」」
ルシアとシレーナは今まで見たことも当然食べたこともない豪勢な食事に思わず唾を飲み込む。
「ささっ、遠慮なさらずにどうぞ。マナーとか関係なく、どうぞガッツリと」
ムラクモは温かいうちにどうぞと食事を勧める。
ふとルシアはあることに気が付いた。それは、ムラクモの分の食事が用意されていないことだ。
「あのっ…ムラクモさんは?」
「えっ!?ぁ…私は後で、コンビニでサンドイッチを買って食べますので…お気になさらず」
少し気まずそうな顔をし、物陰に隠れようとしている。
「えぇー、こんなに美味しそうなのに一緒に食べないのー!?」
「ずっ…すみません…」
ルシアだけは気づいた。ムラクモが「すみません」と言った後によだれを飲み込んでいるのを。だが気を使いそのことは自分の中だけに秘めておこうと決めた。
ムラクモさんにも色々事情があるのだろうなと感じたから。
「ムラクモさん、ちょっと聞きたいことがあるんですが…」
「はっはい…?」
ある程度食べ終わったのでシレーナの為に本屋の場所をムラクモに聞いて見ることにした。
「何処かお勧めの本屋ありませんか?」
「…本屋ですか?」
「はい」
ムラクモはじばらくんーーと首を捻って考えた後、ハッと目を開いて
「ありますよっ。少し裏路地に行った所ですが…」
「本当ですか!?あの良かったら案内お願いできます?」
「えぇ、いいですよ。ルシア様の行きたい所へ案内するのも、仕事の内ですから」
「あはは…ありがとうございます」
皆が食事を食べ終わり準備ができた後、ムラクモが迎えに来て本屋まで徒歩で案内してくれる事となった。
シレーナは新しい本との出会いにわくわくし、何故かランファもわくわくし興奮している。彼女にも彼女なりの理由があって今回の散歩は楽しみなようだ。
「失礼します。では、行きましょうか」
「「はーい」」
元気よく返事をし、宿を後にする。
宿の従業員たちが玄関でルシアが見えなくなるまで頭を下げて見送ってくれた。なんだか少し恥ずかしく思うルシアだった。
「おぉーーやっぱ人多いー」
やはり大都市と言うだけあって沢山の人々が行き交いしている。
いつ何時何が起こっても安心なように、騎士団の連中がパトロールしている姿もちらほらと見られる。
「異常はあったか?」
「いえっ何も異常はありませんっ!」
「そうか、ごくろう」
「はいっ!」
パトロールしている若手の騎士が騎士団長に敬礼をしている。
町の人たちはそれをおぉーと歓声あげたり礼の言葉をかけたりしながら見守っている。騎士は町のヒーロー的な存在のようだ。
「あっここの道を真っ直ぐ行った所にあります」
立ち止まりムラクモは少し暗く細い路地を指さしている。
ムラクモの案内の元、裏路地を進んでいると一軒の古びた店を発見した。
「…ここ?」
「はい。見た目はあれですけど、品ぞろえは中々良いですよ」
「……ん」
「気に入ったのがあったらいいね」
「うん…」
ルシア達は店に入ろうとするとムラクモが一歩後ろに下がり
「それでは私はここで待っていますね」
と言った。三人共えっ?とびっくりしなんで?と言った表情をするとムラクモは
「……私はこの店には入ってはいけないんです」
「「??」」
ランファとシレーナには寂しそうに言うムラクモの言葉の意味がわからなかったが、ルシアにはなんとなくわかったような気がした。
たぶん、このお店の店長は壊楽族の人だから気まずく入れないのだろうと。
二人をなんとか説得し店の外にムラクモを一人置いて、ルシア達三人は店の中へと入って行った。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.58 )
- 日時: 2014/04/01 08:53
- 名前: 姫凛 (ID: eetvNq3l)
ドアを開けるとチリリーンとベルの音が鳴る。お客が来たことがすぐにわかるように。…だと思う。
「…本屋?」
「ここ本当にまだやってるのー」
「んーどうなんだろ?ムラクモさんの知らない間に潰れちゃったのかな?」
寂れた店の中はやはり寂れていた。
店は薄暗く本屋なのに棚に一つも本が置いてなく何故か大量の猫たちがお出迎え。
この店からは人が住んでいるような生活感が感じられなかった。
もう猫のおしっこ臭くてそれどころじゃない。
「ニャーニャニャ?」
とランファは一匹の黒猫に話しかけた。
その猫は他の猫とは違い毛並みが綺麗で首の大きな鈴を括り付けている。誰かの飼い猫だろうか?
「ニャニャニャ!」
「……ランファ。なにかわかった?」
どうせなにも収穫はないだろうと思いつつ一応聞いて見る。すると
「こんにちは」
「え…あ、こんにちは……ってえぇ!?」
先ほどランファと仲良く何かを話していた黒猫が二本足で立ち上がりぺこりと頭を下げ人の言葉を喋ったのだ!
「ね……猫が」
あまりの事にシレーナもビックリ。
ルシアはビックリしすぎて、周りにいる普通の猫と異色の猫を見比べる。だが見た目ではその違いがわからなかった。
「あらふふふ、驚かせてしまったかしら?」
「…??」
黒猫は片手を口に当ておばさんのような口調で話している。
「ワタシはレオ。猫みたいな姿をしている妖精 ケットシーなの」
「「…けっとしー?」」
ルシアとシレーナは口をあんぐりと開けポカーンとした表情をして目が点になっている。
それをランファとレオはおかしそうにクスクスと笑い。
「ごめんなさいね。ワタシを初めて見る人はみんな驚くからそれが面白くて」
「はぁ…はぁ……」
楽しそうに笑いながら言っているレオにちょっと拍子抜けな感じで答える。
「ねーねー、レオさーん。ここの本屋しゃんってまだやってるの?」
「見た目は寂れているけど、まだやってるわよ?」
「でも…本がない」
「あぁ。うちの店は万引き防止の為に棚に本を置かないことにしているの」
「なっ、なるほど…」
「さっささ、リオンを紹介するわ。こっちに来て」
「リオン…さん?」
「えぇ、私のかわいい息子よ。ここの店長やっているの。本の事はあの子に聞けばバッチリよ」
「へぇー。良かったね、シレーナ」
「…うん」
レオの案内の元、店の奥へと進むとレジの所で真剣な表情で読書をしている青年がいた。
彼は背が高く金髪で黒い瞳で肌の色は白く不良っぽい病弱そうな青年といった印象を受ける見た目だった。
「リオンー、お客さんよー」
「………」
レオが話しかけても、リオンと呼ばれた青年はピクリとも動かず本に集中している。
「本読んでる時のシレーナさんみたいだねっ」
「そうだね。読書家はみんなあんな感じなのかな」
皆に聞こえないようにひそひそと二人だけで話している。
「もうこの子ったら。ごめんなさいね、不愛想で」
「あっいえ」
もう本当リオンのお母さんみたいな感じでレオは、出来の悪い息子がすみません的な感じでルシアたちにぺこりと頭を下げている。
ルシアは慌ててそんなことないですよと言った感じで愛想笑いで答える。
「……本。欲しい」
シレーナはずずっと読書に夢中のリオンに近づき、要点だけ言う。
「ジャンルは?」
リオンは本から目線を話さずに乱舞な口調で答えた。
本屋でも新たな出会いを期待していたシレーナは具体的にどんな本を買いたいなど考えていなかった為、その場で考え込んでしまった。
「チッ」
考え込んで中々、答える事が出来ないシレーナにイラつきリオンは皆に聞こえるようにわざと大きな音で舌打ちした。
その行為にルシアは少しカチンときた。ちょっとリオンに言ってやろうと前に出たその時、のんびりまったりとした口調で
「あらあら〜リオンちゃん。女の子にはもっと優しくしなくちゃだめよ〜ん」
「チッ。出たな」
店の倉庫の方から現れたのはルシアと同じくらいの少女だろうか。サラサラの銀色の髪をなびかせ、黒色のコートに赤色のリボンがついた白いブラウス、赤色のフレアミニスカートと黒色のロングブーツの美少女だった。
「え…?」
少女はルシアの方を見ると大きく可愛らしい赤い瞳でウインク。何故彼女が自分にウインクしたのかがわからず、棒立ちになる。
「あらリアちゃんいらっしゃい」
「こんにちわ、レオさん」
「何しに来た?」
「もうっ、リオンちゃんたらツンデレなんだから〜。ツンツン」
「ッ!?触るなっ!!つーかその気持ちの悪い喋り方どうにかしろっ!!」
リオンはリアと呼ばれた美しい少女にツンツンとつつかれて、耳まで真っ赤にして手をはらっている。
「羨ましい…?」
「そ、そんなことないよっ!?」
「ホントにぃ〜??」
ボーとリオンとリアのやり取りを見ていたルシアにランファが意地悪な口調で聞いてきた。
慌てて言い返したが、まだまだ信用してないと言った白い目でランファはルシアを睨みつけている。
正直、ルシアも男の子な為、小悪魔女子にあんな風にからかわれるのを一度は味わってみたいとか…思っていたりいなかったり。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.59 )
- 日時: 2014/04/03 14:22
- 名前: 姫凛 (ID: gf8XCp7W)
「もうっ、リオンちゃんたらツンデレなんだから〜。ツンツン」
「ッ!?触るなっ!!つーかその気持ちの悪い喋り方どうにかしろっ!!」
リアと呼ばれた少女はリオンをツンツンとつつきからかっていると、耳まで赤くして恥じらいながら怒っているリオンを見て渋々、ツンツンするのをやめて不満そうに
「えー駄目なの?可愛いのにー?今はやりの小悪魔女子なのに?」
「小悪魔女子ってお前、そもそも女じゃねぇーだろっ!!」
「「はいっ??」」
ゆでだこみたいに顔を真っ赤にしてリアに向かって言い放った一言にレオ以外みんな目が点になった。
「ん?どうしたんだ?」
「はぁ…はぁ…」
リアは周りが急に静かになったので違和感を感じ、ルシア達の顔色をうかがう。リオンはやっと解放されたーと頭にのぼった血を下げ熱を冷まそうとしている。
「あ、そういえば自己紹介がまだったな!」
胸の前でポンッと手を叩いた。
「やあ、初めまして。俺の名前はリア・ハドソンだ。ん?違う違う俺ッ娘じゃなくてれっきとした男」
聞いてもいないのに自己紹介と一緒に衝撃的な事実も言ってきた。
「「え?えぇーー男!?」」
ルシア達は目をまん丸くして驚いた。
当の本人は、あっれぇ〜そんなに驚くことかな?と言った表情をしていて笑っている。
「……いや、ッウ(普通)驚くだろ」
笑っているリアの隣で睨みをきかせながら、ボソッと言った。
しばらくあんぐりと驚いた後、ルシア達も自己紹介し合い少し情報集めをしてみる事にした。
もしかしたら、この街にもヨナをさらった犯人たちが潜んでいるかもしれないから。
「妹が謎の病に侵されてて…」
「そうか、妹さんが御病気…良ければ、詳しい話を聞かせてもらえるだろうか」
「………闇病と呼ばれる病気なんです」
「「闇病っ!?」」
「のちにデスピル病と呼ばれる事になるけどもなっ!」
ランファの付け足しの一言は置いておこう。
闇病を聞いた瞬間、リア達二人と一匹は先ほどリアが実は男だったと聞いたルシア達ばりに目をまん丸くして驚いた。
だがずぐに皆、難しい顔つきになり真剣な眼差しでリアが
「発病したのは?」
「えっ?えっと……五歳の時です」
「今は何歳?」
「八歳です」
「…時間はそんなに残されてない…か」
「時間っ!?もしかして穢れ化するまでの時間ですか!!」
「なんで…その事を!?」
ルシアが穢れ化の事を知っていた事に驚愕したリアであったがすぐに真剣な表情に戻り
「まぁ、いいか。知ってるなら話が早い」
と話を進めようとするがリオンが
「よくはないだろっ!政府非公開情報だぞっ!?」
とツッコミを入れたが
「いいじゃん、今はそんな細かいことわさぁ」
「ちっ。勝手にしろ」
「はいはい。勝手にしますよーとっ」
適当にリオンをあしらい納得させて話の続きを言い始める。
「闇病は潜伏中は人体になんの害はないんだ。だけど発病してから、五年後。穢れと呼ばれる化け物に人を変えちまう恐ろしい病だ」
「…発病から五年」
「じゃあ…ヨナは!……あと二年?」
「そうゆうことだな。その妹さんは今何処に?」
「ぇ…えっと…」
「ちょーーーと待ったぁぁぁ!!」
ヨナが穢れ化するタイムリミットが後二年と聞かされ、頭が真っ白になって聞かれるがままに言おうとしていたルシアの言葉をランファが遮った。
「…ランファ?」
「ねぇ、極秘情報なのになんでリアさん達は知ってるの!?」
カウンターを力強く、バンッと両手で叩き真剣な眼差しでリア達を睨み付ける。
「それはお前らも同じだろ」
冷静にリオンは返すがリアは少し苦笑いしながら
「あーそれね。実は俺、断罪者なんだよ」
「…断罪者?」
「そっ。罪を犯した犯罪者が闇病になる前に殺すのと、闇病に侵された奴が穢れ化する前に殺すお仕事」
「「………」」
“殺す”と聞いてルシア達は息を飲む。
リアはごく自然にしかも苦笑いで殺すと言う言葉を言ったのだ。彼にとっては“それ”はごく日常的な事なのだろうか?
ルシアは少し恐怖を感じたと同時に、リアの中に測り知れない闇が隠れている事を感じ取った。
彼に隠された闇はいつか晴れる時がくるのだろうか——?
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.60 )
- 日時: 2014/04/03 16:12
- 名前: 姫凛 (ID: 4sTlP87u)
「…ヨナちゃんを殺すの?」
シレーナは静かにリアに訊いた。リアは苦笑いをやめ
「場合によっちゃあね」
とヨナのデスピル病の進行具合によっては穢れ化を防ぐ為に殺さなければならないと言った。
そのことはランファやパピコに説明された時からルシアも半分理解しているつもりだった。だけど、だからと言って飲み込める話かといったらそうでもない。
最愛の妹を見殺しにする話なのだから。
「それで妹さんは、今何処に?」
真剣な表情をしゆっくりとしたトーンでリアは尋ねる。しばらくの沈黙の後、ルシアは
「…さらわれたんだ」
「は?」
「般若の面を付けた紅き鎧の騎士にさらわれたんだ」
極力誰も巻き込みたくないからと、誰にも言わないようにしていた、宿敵の紅き鎧の騎士の事をリア達にヨナと言う名前の妹がさらわれた事を説明した。
「紅き鎧の騎士っ!?」
すると今日一番と思われるくらいにリアは驚愕した。
リアもまた紅き鎧の騎士となにか因縁があるのだろうか?
驚愕したあとリアは何故かクスクスと笑いだし
「ふーん、そうかキミも…」
と独り言のようになにか考え事をしながら言った。
「何がおかしいんですか?」
「あっいや。キミとは何か運命的なモノを感じるなってね」
「うんめい?」
笑っている理由を聞いて見ても軽くあしらわれ流されてしまった。
リアはそうだ。と言葉をつづけ
「腹、減ってないか?」
とルシア達に聞いてきた。
確かにもうお昼近い。お腹が空いてきていると言えば空いてきているのかもしれない。
「良かったら手料理振る舞わせてくれよ。もっと色々話したいしさ」
と家へ招待してくれた。
自分に正直。がモットーのランファは
「減った!減った!腹減ったー!」
と言いだだをこねはじめた。
お行儀が悪いと怒ろうとしたルシアだったが、リアが正直でよろしいっと言ったせいでランファを調子づかせてしまいもっとオーバーリアクションでだだをこねはじめた。
皆、これは手付ようがないと気が済むまで暴れさせてあげようと思ったが
「うるさいっ!」
リオンの一言でランファはショボンと凹み暴れるのをやめ静かにいじけ始めた。
いじいじモードは基本的にほって置いても害はないので、誰も何も言わないし相手をしないで置いておく。
話は戻りリアの食事の誘いを、ルシアは最初悪いからと断ろうとしたがお腹の虫が鳴って、空腹の欲に負けてごちそうしてもらうこととなった。
リオンとレオは店でやることがあるからと、店に残る事にした。店の外で待っているムラクモにも事情を説明して一緒に行かないかと誘ったのだが、頑固拒否され宿で待っている事になった。
リアとリオンは幼馴染と言うだけあって、本屋からそう遠くない場所に彼の家はあった。
実はお坊ちゃま育ちらしく、家はかなりの豪邸で築百年はくだらないらしい。
だけど今は家政婦や使用人はおらず、リア一人で暮らしているらしい。
家の中へ案内されソファーでゆっくりしていると、メイクを落とし服を着替え男性姿のリアが現れた。
「わぁお。男の人の姿でも、十分イケメンだねっ」
「そりゃどうも」
ランファの聞きようによっては失礼な言葉を軽く受け流し、タンスからエプロンを取り出し腰につける。
「なんで女装してるのー?」
キッチンへと向かうリアの背を見ながらランファは聞いている。
リアは振り返らず
「なんでって可愛いからだよ」
てきぱきと調味料や材料、調理器具を棚や冷蔵庫から取り出しながら答えた。
「男の人が好きとかないのー」
「ないないっ。俺、恋愛対象は女だしっ」
「つまんないのー」
「つまらなくて悪かったな」
次のランファの質問にも軽く受け流してきぱきと慣れた手つきで料理を作ってゆく。
どうやらこの短時間でランファとリアは冗談が言い合えるくらいに仲良くなったみたいだ。
一方でルシアとシレーナは知り合ったばかりの人の家に上がり込んで、緊張しているのかずっと無言。
そして数分後。
「よしっ出来た」
と言うリアの声と同時に沢山の料理がテーブルに並べられた。
「おぉ…」
「わーーーい」
「…おいしそう」
その料理の数々は、とても男の手料理とは思えないくらいに、繊細なものだった。
冷めないうちにどうぞと言われたのでありがたく頂いてみると…そのお味は。
「「美味しーーーい!!」」
頬が滑り落ちてしまうのではないかと心配になるくらいに美味しかった。
ランファ曰く、高級料理店でもやっていけそうなお味らしい。
「良かった。沢山作ったからどんどん食べてな」
その言葉通り、テーブルに載せきれないほどの料理が沢山並べられて行った。
どの料理もすっごく美味しくて、かなりの量があったが三人でぺろりと平らげてしまった。
その光景をリアは嬉しそうに眺めていた。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.61 )
- 日時: 2014/04/03 16:44
- 名前: 姫凛 (ID: 4sTlP87u)
料理を食べ終わり、まったりとした時間を過ごし。皆で楽しく雑談をしている時にあの悲劇は起こった。
『ドカ————————————ン!!』
突然何処からか巨大な爆発音聞こえてきて大地震が起こったのだ。
皆なにが起こったのかわけがわからない。だけど、地震が来てるためテーブルの下へと隠れる。
しばらくテーブルのしたで安静にしていると、地震は収まった。
ランファが突発的に窓の方へ行き窓を開けて外を見てみると
「煙があげってるとこってリオンさんの本屋じゃないっ!?」
この一言に驚き慌てて窓の方へ行き確かめてみると、確かにモクモクと黒い煙があがり火花が飛び散っているのはリオンの本屋がある場所のように見える。
「リオンッ!」
親友の身に危険が!と思ったリアは突発的に家を飛び出し、爆発現場のリオンの図書館へと向かって行ってしまった。
「リアさんっ!」
慌ててリアを追いかけようとしたルシア達であったが、唯一こんな状況でも冷静なシレーナは、窓をきちんと閉め。リアが忘れて行った家の鍵を拾い、ちゃんと鍵を閉めてから追いかけて行った。
やはり爆発現場はリオンの図書館のようで、辺りには雪白の騎士団と多くのやじ馬たちが集まっていた。
ルシアはやじ馬たちを退けながらリアを探す。
するといつの間にやら、本屋のすぐ近くで雪白の騎士団の人々に取り押さえられているリアの姿を発見した。
「放せっ!」
「待てっこれ以上は危険だ」
必死にもがきまだ本屋の中に取り残されているであろうリオンの救出に向かおうとするリアを雪白の騎士たちは必死に取り押さえている。
本屋はゴウゴウと音をたて巨大な火柱をあげて燃えている。
「リオンーーー!!」
『ドカ————————————ン!!』
リアがリオンの名を叫んだその時、二回目の爆発が起きた。
その爆発は巨大で、その場にいた多くの人々を巻きこんだ。死者は大勢、重傷者もかなりの人数をにのぼった。
この事件は世界中のメディアが取り上げ、世界的大事件となった——
あの忌まわしき事件から二週間後。ルシア達の傷も癒え、今日は葬儀の日。
「どうして!?」
「…なぜ?」
「おかしいよっ!こんなの…」
ルシア達はこの葬儀に異議を申しだてる。何故。
それはこれが遺体のない葬儀だからだ。
あれだけの大爆発があったのだ、本屋にいたリオンが生きている可能性は零に近い。
だが肝心の遺体はいくら探しても発見されなかったのだ。見つかったのは黒い灰となった本の残骸と……猫たちの死骸だ。
「あの本屋があった場所は、なんか風水的なあれでいい場所なんだと。だから金持ち連中がさっさと潰して買い取りたいんだって」
「…なにそれ」
「リアさんはそれでいいのっ!?」
ルシアにそれで納得したのかと聞かれ、リアは壁を強く拳で殴りつけ
「言い訳ないだろ…。ダチが目の前で殺されといて言い訳ねぇーだろ!!」
ドンッ、ドンッとリアは何度も何度も壁を殴り続けた。
それを見てルシアには、リアにかける言葉がわからなくなった。
「うぅ…うえーん」
「…ぐすっ」
「なんで…なんで…あいつがっ!」
「………」
今ルシア達が出来るのはただ何処にも行けぬ怒りをかかえ泣くこと。ただそれだけだった——
-遺体のない葬儀編-終