複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.62 )
日時: 2014/04/04 14:09
名前: 姫凛 (ID: LIJSamtZ)

第三章 大都市で起きた不可解な事件-立食パーティー編-






リオンの葬儀から数日後。
宿でボーとした毎日を過ごしていたルシア達の元に本来ここに来た目的の日がやってきた。
コンコンと微かにドアが叩かれ、返事がないまま静かに開かれると
「こ、こんにちは…」
ムラクモがびくびくした表情で部屋に入って来た。
「こ、こんな時にごめんなさい。そ、その…本日、延期になっていました。立食パーティーをやるのでぜひルシア様たちに来ていただきたいと、社長が…あうぅ」
今にも泣きそうな声でムラクモは言っている。
「ムラクモさんが悪いんじゃないんですから、そんな泣きそうな顔しないでください」
「す、すみませんっ」
優しくフォローしたつもりが余計に申し訳なく思わせてしまったようだ。
「へぇーパーティーか。楽しそうだね。もちろん俺も行っていいよな?」
平常心を保ちいつも通りの言葉遣いを意識した言い方でリアは、場を和ませるために言った。
「も、もちろん」
少しぎこちないながらも、いつも通りな感じで返事をした。


「でもでもぉ、パーティーってドレスコードで行かないと行けないんだよね?」
「…ドレス持ってない」
「あ…」
パーティーに着ていけるようなおしゃれな衣装を持っていないことに今更気づきどうしようと悩んでいるとムラクモが
「お洋服は、ドルファの方でお貸しするので大丈夫ですよ」
「本当ですか?良かった」
「普通、フォーマルな洋服なんて持ってないですよね…?」
「そうですよねっ。やっぱり」
「「あははっ」」
お葬式ムードでずっとどよーんと沈んでいた空気も空元気ながら、少しずつ明るくなっていき頭を切り替えてリオンの事は心の奥底にしまう事が出来た。…リア以外は。
「………」
リアには少し気になる事があるようだ。
皆と一緒に笑いながらも、目線はしっかりムラクモを捉えて離さない。別にムラクモに好意あるというわけでない。むしろ敵意だ。彼もまた様々な修羅場を生き抜いてきただけあって、勘が鋭いのだ。


大都市の中心部にあり街のシンボル的なドルファ支社に着くとすぐにVIPルームに案内され、メイクさんや衣装さんがてんやわんやとやりながらルシア達をこの場に相応しい紳士、淑女に変化させてくれた。
メイクさんや衣装さんが物凄く驚いていたが、リアは当然のようにドレスを着て女性客としてパーティーに参加するととした。
周りがなんと言おうが見られようが、自分は自分なのだ。


「人がいっぱーい」
「さすがドルファ主催のパーティーだな。集まっている人のほとんどが、町の名士だ」
白いひげを生やしたいかにもな、ジェントルマンやザマスメガネをかけて全身宝石だらけのマダム達が楽しそうにお喋りをしながら食事を楽しんでいる。
「うぅ…やっぱり場違いな気が…」
周りの客が豪華セレブ人過ぎて、気が引きここは自分の居場所じゃないと早く帰りたいと思っているルシアにリアは意地悪そうな口調で
「天下のドルファのパーティーに招待されるなんて。いったい何しでかしたんだ?」
このこのっと肘でルシアの脇腹をつつきながら言っている。
ルシアはえっ?えっ?と対応に困ってなにも言い返せないでいると代わりに
「エッヘン、何を隠そうルシアはドルファ主催の草競馬大会に優勝したんだよっ!」
ランファが偉そうな口調で答えた。
「へぇーすごいじゃねぇーかっよ!」
「わわぁ」
リアに強くつつかれてルシアはこけそうになったが近くにあったテーブルに手を付き何とかギリセーフ。
もう…とリアを睨みつけると、リアは悪びれる事もなくケラケラと笑っていた。
まぁ、ルシアもそんなには怒っていなかった為、一緒に笑って許してあげた。


皆で他愛のない会話をしていると、司会席に美しい蝶柄の着物を着た女が立った。
その女は色欲系な見た目で着てる着物は平安時代のものみたいで高級そうで重そうな感じだった。
「みなさま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございますぇ。
ドルファフィーリングのナナと申します。総帥のバーナードに代わり厚く御礼申し上げます。
ご存知の通り、我が社は衣食住、みなさまの生活に関わる様々な事業を展開しております。
また経済活動のみならず、社会貢献もドルファが目指す所で、孤児院の運営など、慈善事業にも積極的に取り組んでおります。
“みんなの心に太陽を”それがドルファの精神なのです」
「モグモグ」
「もぐ、ランファ。ちゃんと話聞かないとダメだよ」
「ふぁーい。モグモグ」
ナナの長い話をやや飽きながらも一応聞いておく。
「今宵はみなさまと親睦を図りたく、このようなパーティーを模様させていただきました。どうぞご存分にお楽しみくださいませ。
…さぁ、妾の話はこれぐらいにして、みなさまにはピアノの演奏を楽しんでいただきましょう。ミスター紫龍!」
と言うと司会席から少し離れた所に置いてあるグランドピアノへ皆の目線が集中する。
紫龍は静かに礼をした後、美しい音色を奏でた。聞くものすべての人たちがその音色に聞きほれた。

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.63 )
日時: 2014/04/04 15:35
名前: 姫凛 (ID: emG/erS8)





「どうぞピアノの演奏とともにお食事をお楽しみください。
今宵が実りある一夜にならんことを」
と言い終わるとナナは一礼し、その場を後にした。
ナナが居なくなった事で、妙な緊張感はとけ皆思い思いにお喋りをしたりピアノの演奏に聞き惚れたり、ナンパしたり…しながらパーティーを楽しんだ。
「天下のドルファの主催とはいえ、所詮はビュッフェ形式のパーティー料理。たいして美味くもないな。
でも…。彼の奏でるピアノの音色とともに食うと不思議と美味しく感じるな」
「…うん」
リアとシレーナは目を閉じ、紫龍の奏でるピアノ演奏に聞き惚れている。
…二人の隣では
「もしゃもしゃっ」
「もぐっもぐっ」
「あっ、ランファ。僕の大トロ食べないでよっ!」
「モグモグ。へへっーん、早い者勝ちだもんねー」
「なにーじゃあ…えいっ!」
「あぁーーー!!あたしのイクラちゃんがーー!!」
「んー、おいしい」
ルシアとシレーナがガツガツもしゃもしゃと料理をガッツリ食べていた。
まるで小さい子供のような事で、喧嘩を始め。互いの乗っている料理を奪い合いまだ口の中に料理が入っているのに抗議するために喋って食べかすがボロボロ…。


「素敵な演奏なのに残念な子たち…」
「………」
リアとシレーナは、はぁーとため息をついて少し引いた目でルシアとランファの二人を見つめる。
やれやれだねとシレーナと二人話していると
「んっ?」
ムラクモがパーティー会場の外に出て行くのが見えた。
不審に思ったリアは適当な理由を作り、
「俺、ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
「え…あ、うん。いってらっしゃい」
ムラクモの後をついってて見る事にした。リアが居なくなってすぐ、ランファが
「にっひひ〜、リアってさぁどっちのトイレ使うのかな?」
「どっちとは?」
「女子トイレか、男子トイレかって事だよ!」
「え…そんなの男子トイレなんじゃ…」
「あの恰好で?」
「…あ」
リアは今、女性の姿をしている為そのまま男子トイレに入ると騒ぎになるだろう。だがかといって女子トイレに入ると言うのも…。


「気になるでしょ?」
「そ、それは…まぁ」
気になると言えば気になると返すとすぐに
「よっし、じゃあ覗きに行こう!」
「えぇぇ!?」
「大丈夫っ。大丈夫。ばれない自信あるから」
「そうゆう問題じゃなくて…」
「いってきまーす」
「あっちょっとっ!」
止めた甲斐なくランファは楽しそうに、リアの後を追いかけて行ってしまった。
ハァーとため息をついてシレーナにランファにも困ったものだねと言おうとしたら
「………」
「ってシレーナまでっ!?」
無言でランファの後をついていくシレーナの姿がそこにはあった。
ルシアは頭を抱えて大きくため息をついた後、
「女の子が考える事はわからないよ」
と大きな声で独り言を言っていると
「ほんとですね…」
と返事が返ってきた。えっ?と声がした方を見ると、片手にワインの乗ったおぼんを持って立っているムラクモがいた。
どうやら今日はウエイターとして働いているようだ。


「男性のお手洗いがみたいだなんて…わからないです」
「そ、そうですよね」
変わってりうのはあの子たちの方かと納得していると、ふと違和感に気づいた。
「あれ?どうしてムラクモさん。リアさんが男の人だって知っているんですか?」
「えっ」
確かにリアは男だが、彼の女装技術はすごく見た目でもしぐさでもそう簡単には男だとは見破れない。
ルシアも見破れずに、初めて会ったときその美貌の虜になってしまいそうになったのだから。
ムラクモは激しく同様し始め、持っていたワイングラスが
「「わっ」」
バシャーンと倒れルシアの洋服にかかってしまった。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
「いっいや、ムラクモさんはかかってない?」
慌ててポケットからハンカチを取り出し、ルシアンの服を拭くムラクモにワインがそちらにもかかってないかと聞いたのだが
「ッ!!」
「…?」
ルシアの手がムラクモの手に少し当たり、ムラクモもはピョーンと跳ね上がるほどに驚きそっぽを向いてしまった。
あまりよく見えなかったが、彼女の顔は赤かったような気がする。