複雑・ファジー小説

Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.67 )
日時: 2014/04/08 20:36
名前: 姫凛 (ID: fGppk.V/)






「どうかされたのですか」
「あっ…紫龍さま」
紫龍がピアノの演奏をやめ、ルシアン達の方へ駆け寄って来てくれた。
そっぽを向いていたムラクモも上司がやって来た為振り返り、今にも泣きそうな顔で紫龍に助けを求める。
「ご、ごめんなさいっ。私…また…」
あわあわと小刻みに動き慌てている、ムラクモを紫龍はゆっくり優しく
「ムラクモさん。謝っている暇があるのですか?貴女には他にすることがあるのではないですか?」
「えっ…?」
と紫龍に悟られ、辺りを見回すと客人たちが美しいピアノ演奏が止んでしまった為、その原因となったルシア達を睨みつけていた。
なかには陰口をたたいてそれをおかずにし食事を貪る者までいた。
ルシアはなんだか大変申し訳ない気持ちになった。
「あうあう〜ごっ、ごめんなさーーーい!!」
皆に白い目で睨まれて居場所がないと感じたムラクモは勢い余って、目に大量の涙を抱え、謝りながらその場を逃げ去って行ってしまった。
ルシアもぁ…と思ったが、この状況でなにも出来ず呆然と立っているだけだった。


まったくあの人は…とため息交じりに独り言を言うと紫龍は
「申し訳ありません、ルシアさま。すぐに使いの者に着替えを持ってこさせるので、あちらの部屋でお待ちください。さぁ」
「えっ…あっはい」
軽く営業トークをするとルシアの腰に手を回し会場を出てすぐにあるとある部屋へと案内した。
部屋に着くとすぐに紫龍は会場のお客様をこれ以上待たせてはいけないので…と一礼した後、部屋を後にした。
ルシアは鹿野の頭や白熊の毛皮や鋼の鎧一式や武器一式が沢山並べられた、酷く激しく場違いで今すぐにでも帰りたい部屋に一人、ポツンと取り残されてしまった…。
「………ッ!?」
なにか気をそらすものはと…辺りを見渡せど、鹿野の頭と目が合うばかり。下を向けば、白熊がこんにちは。
ルシアは思ったここは恐怖の館だと。
「えっ!?」
とかんなんとか、くだらない事を考えながら気を散らしていると扉をコンコンと叩く音が聞こえてきた。
思わずはーいと家みたいに返事しそうになったが、やめた。だってここは自分の家ではないから。なんか人の家で自分の家みたいに振る舞うのは恥ずかしいものだ。


「お洋服大丈夫ですか?」
入って来たのは黒髪で瞳の色は赤。この国では珍しい和服を着た青年だった。しかも
「うさっ」
と言いかけてやめた。実は彼の耳にはふさふさな白い兎の耳のようなものが生えていたのだ。当然、お尻にはふさふさの白いしっぽがちょこんと生えている。
和服の人は大変珍しいが先ほども、演説をしていたナナも来ていたためまぁ、別にそこまで驚く対象にはならない。
…が、ウサ耳は話が別だ。こんな生物、地球上にいたるのか?新種!?絶滅危惧種!?と驚くくらいに誰もみたことがない生命体だ。
「どうかされました?」
ウサ耳の青年はキョトンとした表情でルシアを見つめている。
これはいけない。なにか答えてないと。ウサ耳を頭から離さないとっ!と思ったルシアは慌てて
「いっいえべつに?」
なんかぎこちない感じで答えた。
あまりの演技下手というか、ぎこちのない返事に不審に思いながらも
「そうですか…」
と返し納得はしてくれたようだ。ルシアもほっと息をついた。


「着替えを持ってくるのに少々、手間取りそうなのでこれでも飲んでお待ちください」
ウサ耳の青年の手にはカクテルの様な色鮮やかな飲み物がおぼんの上に載っていた。
「あの…僕、お酒は…」
未成年なのでお酒は無理だと断るとしたが
「大丈夫です。カクテルのように見えますが、ジュースですよ」
と言われ、ふぅーと安心しそのままありがたくカクテルジュースを飲みほした。すると
「……あ、れ?」
視界がグラングランと揺れ始め、不思議と体も一緒に揺れ始める。
「大丈夫ですか?お客様」
ウサギの青年だったけ?ウサギが視界の遠いところでなにか言っている…でも頭がポ〜として何を言っているのか全く分からない…あぁ、この感覚なんだか気持ちい…おやすみなさ〜い…。
という感覚に襲われルシアは眠りこけてしまった。
「お客様?お客様…?…寝てるな」
手をかざしルシアが眠りこけていることを確認すると、ウサ耳の青年は部屋の外に向かって


「入ってきていいぞ」
と言うと、ゾゾゾッ沢山の黒服達が部屋に入り込み
「この者ですか、ユウ様っ!」
何人かの黒服がルシアを抱え、リーダー格の黒服がウサ耳の青年のことをユウと呼んだ。
ユウと呼ばれた青年は、ルシアに触られた部分を気持ちの悪そうに払いながら
「あぁ、そいつだよ。あぁ…気持ち悪いっ!さっさと椿の牢獄へ連れて行きなっ!」
と言われると黒服たちは、はいっ!と一斉に返事をしたと、えっさほいさとルシアを何処かへ連れ去られてしまった。
まさかの主人公が誘拐されたのだっ!!この時、ルシアは爆睡中でまったくピクリとも動かない。

ランファ、シレーナ、リア、誰でもいいからはやくルシアを助けねばルシアは——

「………」
ルシアが連れ去られて行くさまを物陰からとある女がジーーと無言で静かに見つめていた。
彼女は何者だ?そして連れ去られたルシアは一体どうなるのだ!?










-立食パーティー編-終