複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.73 )
- 日時: 2014/04/09 15:34
- 名前: 姫凛 (ID: DIeJh8tY)
「結構、道が入り組んでいるな…」
部屋の外もすべて鉄筋コンクリートで出来た寂しい通路だった。
だが通路はまるで迷路のように入り組んでおり、見えるものすべてが鉄筋コンクリートなため、今自分が何処を歩いているのか、どれだけ進んだのかよく分からなくなる。
迷路で迷ったときは右側の壁に手をついて進め!という先人達の教えを通りに右側にある壁に手をついて恐る恐る、探索していると
「あっ、あれは!」
この場所の休憩場所だろうか?少し広い空間の中央に緑色の長椅子が四つ置かれていた。
縦に左側に二つ、右側に二つと。
その長椅子に、何やら複雑そうな表情で難しそうな事をうーうー言いながら考え込んでいるムラクモの姿があった。
今はウエイターの時の恰好ではなく、初めて会った時の紅いドレスのようなワンピース姿でいた。
きっとムラクモも自分と同じように、何者かによって此処に連れ去られてきたんだと思ったルシアはゆっくりムラクモに近寄り、耳元で小さく
「ムラクモさーん」
と声をかけた。ルシアは普通にムラクモには聞こえるくらいの小さな声で声をかけたつもりだったのだが
「ひゃぁぁぁ!!?」
「わぁっ!?」
ムラクモは飛び上がるくらいに驚き、その驚きようにルシアも驚いてしまった。
「…ぁ、あぁ…ルシア様」
振り返り、声をかけた主がお化けじゃなくてルシアだと知りムラクモは安心した声を出してその場にしゃがみ込んだ。
「ご、ごめんなさい!驚かせるつまりはなかったんです。ムラクモさんを見つけたからつい…」
と謝っているとそういえば前にもこのようなやり取りをしたな、と思い出し
「…ってまたですねっ」
「そ、そうですね。たしか前にもこんなやり取りを…」
あははっと二人で笑っていると、今しなくてはいけない事を思い出した。
「あっ、こんなところで笑っている場合じゃ、なかったんだ!ムラクモさんっ」
「は、はいっ!」
真剣な表情でムラクモを見つめ、彼女の両手をガッチリ掴み握りしめる。
少しムラクモの頬が紅く染まっているような?いないような?
「ここは危険です。一緒に逃げましょう!」
「へっ?」
ムラクモは一瞬、ルシアがなにを言っているのかわからない。と言った表情をしていたが、そんな事は関係ない。
「とにかく、一刻も早くここから逃げましょう!」
多少強引的でも、腕を引っ張って一緒に脱出を試みる。
好きな人をこんな訳の分からない危険な場所に一人、残して自分だけ逃げるだなんてお人好しのルシアにできるわけもない。
「この造り…まるで迷路だよ」
ムラクモを連れてここから脱出しようと決めたはいいものの早くも出ばなを挫かれた。
ここの通路は迷路のような作りになっているためそう簡単には出口にたどり着けないのだ。
「そ、そうですね。敵からの侵入も脱出も困難な構造になっていますから…」
「そうなんですかっ!?このまま…進んでいたらいつか、見張りの人に見つかっちゃいそうだな…」
「……」
ムラクモの手を握りしめたまま探索しているが、中々出口らしきものを発見出来ないでいる。
今のところは、誰にも見つからないでいるがいつ見張り兵に見つかるか正気ではない。
「(…この部屋は見張りさん達の寝室かな?)」
しばらく闇雲に歩いていると、見張り兵達のたまり場となっている部屋へ辿り着いた。
どうやら部屋には二人の男が、タバコを片手になにか話しているようだ。
ばれないように聞き耳をたて中の様子を伺う。
「はぁー、やになっちゃうなー」
「だよなー。少ない給料しかくれないくせに、仕事は一日二十時間もさせられるんだもんなー」
「寝る事しかできねーよなー」
「(もしかして…ドルファってブラック企業って奴なのかな?)」
「………」
「なぁ、逃げ出さないか?」
「ばっ、お前そんなの誰かに聞かれたらどうするっ!?即刻討ちきりだぞっ!!」
「大丈夫だって、今ここには俺たちしかいねぇーって」
この男の言葉を聞いてルシアは、すみませんっあと二人いますとなんだか申し訳ないような気持ちになった。
ムラクモは相変わらず黙って、男たちの会話を聞いている。
「おれっ、あいつらから聞いたんだ。この椿の牢獄の何処かに隠し階段があってその先が外の世界につながってるって…」
「お、お前。あんな奴らの戯言を信じるのかよ!?」
「(隠し階段っ!?)」
ルシアは思った男たちが話していた、隠し階段を使えばここから脱出できるかもしれないと。
だがその為にはまず、その隠し階段がある場所を探さねばいけない。
男たちが隠し階段の場所を知っていないかな?とその話をしてくれないかなと待っているとムラクモがルシアの方をツンツンと叩き、振り返ると少し複雑そうで悩んでいそうな表情で
「…行くのですか?」
と聞いてきた。
この時の複雑そうなムラクモの顔の事はいつまでも頭に残りそうだとルシアは瞬間的にそう思った。