複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.76 )
- 日時: 2014/04/10 08:27
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
闇雲に歩いていると見張り兵達のたまり場となっている部屋にたどり着いた。そこでは二人の男がタバコ片手に愚痴を言いながらサボっていた。
なにか情報は得られないかと、聞き耳を立てていると、なんと、ここは椿の牢獄と呼ばれる場所で何処かに隠し階段がありそこから外に出られると言うのだ。
良いことを聞いた、見張り兵さんありがとう!と心の中で見張り兵達にお礼を言っていると、ムラクモが肩をツンツンと軽く数回叩いてきた。
なにかと思い振り返ると、
「…行くのですか?」
と聞いてきた。
この時の複雑そうな顔をしていたムラクモの事はいつまでも頭に残りそうだとルシアは瞬間的にそう思った。
「…うん。みんなを探しに行かないと…それにムラクモさんをこんな所に置いてなんていけないよ!」
「ッ!?」
ムラクモは耳まで顔を赤く染める。フードを深く被りそっぽを向いて
「ぁ…隠し階段は…あっちです」
ある方向を指さした。
「えぇっ!?ムラクモさん、知ってるの!?」
ルシアは素直に純粋にムラクモが隠し階段の場所を知っていた事に驚いた。
「…でもあそこは、魔物の巣窟となっています。それでも…」
目を少し涙でうるませ、上目づかいでルシアを見つめる。
「それでもだよっ!大丈夫、君のことは僕が守るから!!」
「ッ!?」
ムラクモはぁぅぅと声を出して今度は後ろに振り返ってしまった。
スーハーと深呼吸し息を整えた後、
「わっ、わかりました。…でも、私の仕事は、人を守る事。貴方を守る事なんです。互いを守るって事でいいですか?」
「うんっ!よろしくね、ムラクモさん」
「は、はいっ」
こうしてムラクモ案内の元、椿の牢獄を脱出する事となった。
道になれているのか、あれだけルシアが苦労しながらもなんとか進んでいた道を、ムラクモはスイスイと進んで行き途中仕掛けられていたからくりも解除してくれた。
この時、ルシアは単純にムラクモさんって凄い!と素直に感心していた。
しばらく入り組んだ通路を歩いていると、椿の掛け軸がかけられた他とは違う、豪勢な部屋へとたどり着いた。
「………」
椿の掛け軸をめくるとそこには
「…隠し階段だ」
地下へと続く階段が現れた。
地下深くは暗闇になっているためよく見えない。だが鳴き声は聞こえる。人ならざるバケモノの鳴き声だ。
「此処の魔物は、今まで貴方が戦ってきた魔物とは比べ物にならないくらいに強いですよ。気を引き締めて」
「うん。ムラクモさんもね」
「…はい」
入り前に互いに意思確認をする。ここから先に待ち受ける敵は、油断すれば最後。即刻魂を食われてしまうからだ。
意思確認した後、ゆっくりと地下階段を下りてゆく二人を陰からとある男が後を付けていた。
「へぇ〜、おもろそうやったから後付けてみたら、なんや楽しそうな事になっとるなないの。くひひひっ」
男は独り言を言った後、ルシア達の後を追いかけ、隠し階段を下りて行った。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.77 )
- 日時: 2014/04/10 14:35
- 名前: 姫凛 (ID: wNoYLNMT)
「はぁぁぁぁ!!」
「ふんっ!」
「ゲシャァァァァ!!」
階段を下りて地下にたどり着いた瞬間、魔物達が待ってましたといきなり襲い掛かって来た。
魔物達はムラクモの忠告通り、かなりの強者だった。ルシアは一匹倒すだけで息がハァーハァーと息切れしてしまうのに対し、ムラクモは
「はぁっ!」
「ブシャァァ!!」
一撃で次々と魔物を倒してゆく。やはりさすがは歴戦の戦士と言ったところだろうか…。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫ですかっ?」
「うっ、うん」
敵をある程度倒した後、息切れをしているルシアの元へ駆け寄る。大丈夫と見栄を張って言っているが、本当は結構の体力を消耗し大丈夫じゃない。
それを察したムラクモは
「こちらにっ!」
ルシアの腕を引っ張り三字横に行き、壁に隠してあったスイッチを起動。
すると壁が動き出し魔物達をグシャッと挟み込み一つ通路を封じたのだ。壁の向こう側から沢山の魔物達の悔しそうな鳴き声が聞こえてくる。
「隠し階段の次は…隠し壁?」
「はい。此処は最高技術を持ったからくり職人達に造らせた、からくり牢獄なんです」
「へぇ…」
感心しているとまた次の敵が現れた。ムラクモはまたからくりの仕掛けを使って、敵から逃げようとしたのだが
「次はこちらにっ……うっ!」
「ムラクモさんっ!?」
重い分銅がムラクモの腹を直撃する。あまりの痛さに思わず、腹を抱え苦い顔でしゃがみ込む。
分銅は鎖で繋がれていてゆっくりと飛ばされてきた方向から、引きずられながら回収されている。引きずられている方向を見てみると
「ヒドイやないか〜、ムラクモちゃ〜ん」
派手なアロハシャツを着たパッと見、海賊の様な見た目をしている男が現れた。でもよーく見ると海賊ではない。ただの眼帯をした出っ歯のおじさんだ。
「わしという男が居ながら、他の男に浮気するやなんて」
男の左手にはカマ。右手には先ほど回収した分銅をブンブン回している。どうやら男の武器は鎖鎌のようだ。
「はぁ…はぁ…ロックス貴様」
少し吐血している。ムラクモは男ことをロックスと呼び、少しよたっとよろけながらも立ち上がる。
「貴方…何者ですか?」
「はぁ?わしはお前なんかに用はないっちゅーねん」
ロックスはルシアの質問には答えずに、なめるような目つきでムラクモの事を見つめている。
「奴の名はロックス。此処の監守だ」
「そしてムラクモちゃんの彼氏やなっ」
「えぇぇぇ!!」
こんな変な人がムラクモさんの彼氏!?とショックと驚きのルシアだったがそのことはすぐに解決した。
「貴様の脳内だけだがな」
「え……と?」
意味が解らないと顔をしているとムラクモが優しく丁寧に
「自称。二次元と三次元の違いがついていない人って事です」
「そりゃないわ〜、ムラクモちゃ〜ん」
「………」
ようするにこのロックスと言う人物は、変な人。…らしい。
少し笑いどころがあった空気も一気に変わりピリピリとした少し肌が火傷してしまいそうな緊張感のある空気へとなる。
「そこをどいてください」
「いややと、ゆうたら?」
「……殺す」
「くひひっ、ムラクモちゃんはせっかちやの〜」
「構えてくださっ!」
「あ、はいっ!」
ムラクモに言われ慌てて立ち上げり剣を構える。
ロックスも右側に縦に振り回していた分銅を自分の目の前でクロス、八の字を描くように振り回しやる気満々と言った感じで
「まぁ、ええわ。わしも最近体がなまってきとったから、ええ運動になるわ。死んでも恨まんといてなぁ!!」
「それはこちらのセリフです!」
ムラクモVSロックスの熱きバトルのゴングが今、ここに鳴った。ゴーン。
ルシアは一応いるが、体力を消耗しすぎてたぶん使い物にならないだろう、すべては深手を負ったムラクモに託されたのであった。
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.78 )
- 日時: 2014/04/10 09:40
- 名前: 姫凛 (ID: 0vtjcWjJ)
「ほらほら、どないでっか!?」
「うおっ!?」
「くっ」
ロックスの鎖鎌の扱いはさすがと言わざるおえない。
分銅は不規則な動きをし、軌道が全く読めないのだ。油断すれば、もろに攻撃が当たってしまう。
「(これじゃあ、避けるだけで精一杯だ…)」
「スキありやっ!」
「わっ!」
「「…あれっ?」」
ロックスの投げた分銅はルシアよりもはるか上に飛んでゆき、天井に端めぐらされた鉄の棒に誤ってくくりつけてしまった。なんとか取ろうと頑張ってみるがなかなか取れない。
「ちょっ、ちょっと待ってな…今取るさかいに」
「あ…はい…」
何故かルシアも行儀よくロックスが取り終えるのを待っている。
するとムラクモはゆっくりロックスの背後に立ち
「え…?ムラクモちゃん、それはないわ〜。さすがに…卑怯やで?な?な?」
「…待つわけないだろっ!!」
「ムギャーー!!!」
ムラクモは魔物が落として行った剣を拾いその剣でロックスを切り裂いた。大量の血が吹き出し辺りは真っ赤に染まる。
「ハァ…ハァ…グ!!」
ムラクモは瀕死のロックスに容赦なくとどめを刺した。ルシアはあまりの惨劇に直視できず、顔をそらし目をつむり耳を手でふさぐ。
数分、無の時間があった後
「もうすぐ出口です。頑張って」
とムラクモに声をかけられ、肩に担がれた。
出口へ向かう途中、見ては行けないと思いつつロックスを見てみると…
「ッ!?」
もう誰だかわからなくなるくらいに、遺体は無残にも斬り裂かれていた。内臓やらなんやらが体内からもろに飛び出て、破裂し消化しなきれていない食べ物なんかが、溢れていた。
「…ぅ」
あまりの光景にルシアは気を失ってしまった。
ルシアが気絶したことに気づいたムラクモは、一度地面に降ろし、もう一度今度はおんぶのようりょうで担ぐ。
よいしょっ、ふんしょっ、階段を上がっていると外の世界へ出た。外はも真っ暗で街灯もなく漆黒の闇となっていた。
手探りでゆっくり慎重に歩いていると、
「ッ!!」
ピシュンッと刃物的な物が通過しムラクモの頬をかすめ少し切った。
飛んできたものを見ると、刃先の鋭い短剣だった。
「これは警告。ささっとここから立ち去りなさい」
短剣が飛んできた方角から少女の声が聞こえてきた。
ムラクモは殺意を覚えながらも
「すみませんっ!怪我をした連れがいるんです。一晩だけでいいんです、泊めてもらえませんか?」
低姿勢に聞いたつもりだったが、返って来たのは返事ではなく。
「ッ!」
短剣だった。今度はムラクモの足をかすめ切った。
「そんなの私には関係ない」
「…貴様」
ルシアを道端に放置し短剣を投げてくる少女を斬り殺しに行こうかとも思ったムラクモだったが
「…この血の匂い…貴方、ドラゴンネレイド?」
と聞かれ少し気が変わった。
「だったらなんだ?殺すか?」
と言いいつでも戦える体制を整えていると、パァと明かりがついた。
「……?」
少し行った先に古民家があるみたいだ。どうやら短剣を投げてきたのは、その古民家の娘だったみたいだ。ギギィと音を立てゆっくりとドアが開けられる。
「ッ!…子供か」
ちょこんと顔を出したのはまだ齢十だろうか、小柄で蒼い瞳に髪のポニーテールの女の子だった。
「入って」
と言うと女の子はムラクモとルシアを家へ招き入れる。
「何故、我がドラゴンネレイドと知ったのに優しくする?」
家に入る前に女の子に聞いて見ると、女の子はうつむきしばらく黙り込んだ後、泣きそうな声で静かに
「……同族だから」
と言った。その答えにムラクモは少し不満に思ったが、納得しありがたく家へと招き入れてもらった。
第四章 監禁・脱走 終