複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜 ( No.93 )
- 日時: 2014/04/25 13:59
- 名前: 姫凛 (ID: FWNZhYRN)
「リングの中も外も地獄のアリーナコロシアム!いよいよ、開始ーーー!!」
「「おおおおおおーーーー!!」」
観客たちの声援と共に殺し合いのゲームがスタートした。
「うぉぉ!」
「ウギャー」
それを合図に猛者達は一斉に動き出し、目の前にいる者すべてを斬って斬って斬り殺していく。
ある者は首をチョッパで斬られ、胴体から頭が転げ落ちたにも関わらず最後の力を振り絞り相手を胸を切り裂く。
「うっぐぁぁぁ!!」
ある者は卑怯にも金の力でタッグを組み、協力して周りにいる者を斬り裂いている。
「やれやれー!!」
「おー、いいねーいいねー!!」
観客たちは残忍で惨い殺し合いを見てよろこびの表情でいる。
その声援を受け猛者達はまた一人と殺して行く。Aブロックには百三十七人の猛者達がいたが、物の数分で三十七人死亡した。残しはあと百人だ。
「………」
「んぁ?」
血に狂った猛者達が殺し合いをする中、ただ独りムラクモだけは、コロシアム中央でポツンと立っているだけだ。
「ムラクモさん…どうしたんだろ?」
見物席から試合の様子を見ていたルシアは、ムラクモの事を心配そうな目で見ている。
「おいおい、いっちょまえに鎧を着た女がいるぜー、ぐへへ」
「ヒューヒュー」
「なかなかの美人だなー、おい」
「お嬢ちゃん俺らと遊ぼうぜぇ〜」
数人の男たちがニタニタと笑いながらムラクモに近づいてゆく。ムラクモは動じず、まるで置物のように静かに立ち続けている。
見物席から見ていたルシアンは
「(ムラクモさん…早速からまれてる…)」
少し苦笑いをしながらムラクモの様子を見ている。と、突然隣にいたヒスイが
「ルシアとムラクモは、どうゆう関係?」
と聞いてきたのだ。いきなりだった為ルシアは慌てふためきバレバレの嘘をついた。
「えっ!?い、いいやっ、僕とムラクモさんはただの知り合いとゆうか、ただの仲間で…その」
だがその嘘はすぐに見破られ少し間があった後、ヒスイは
「そうじゃない」
と一言だけいった。ルシアは何が何だか分からなくなり、首を左右に傾げている。その姿はヒスイには見えていない。が、ヒスイはリングの方を向きムラクモを見つめ
「臭うの」
「におい?」
「どんなに、洗っても洗っても、消える事のない」
ここまで言われてルシアはゴクリと唾を飲み込んだ。ヒスイは間をあけた後、重たい口調で静かに
「血の臭いが…」
と言った。それを聞いてルシアは言葉を失い血の気が引いた。確かにムラクモは強い、だけど…血の臭いが体に染み込みとれなくなるほどの猛者ではない、人殺しなんかじゃない、と思い続けていたいルシアにとってはその事実は残酷な物だったかもしれない…。
「おい、聞いてんのかよーお前っ!」
ムラクモに絡んでいた男たちの一人が、ムラクモの肩に触れた。先ほどまでずっと黙り込み立続けていたムラクモがついに、
「我に触れるな」
口を開いた。
「はぁ…?うっ!ぐっ!?なんだ、この力っ!?」
ムラクモは男の腕を掴みメキメキと音をたてながら男の腕を締め上げて行く。男の腕はどんどん青く壊死してゆく…骨もボキボキと折れてゆく。
男は何とかムラクモから離れようとジタバタするのだが、圧倒的な力と握力で動けない。
「うせろ」
「へっ…?」
「「ぎゃーーーーーー!!!」」
「えっ……うそっ?」
ムラクモがたった一言、男に向かって「うせろ」と言った瞬間何処からともなく突如巨大な上昇気流が巻き起こり、リング場にいたムラクモ以外の九十九人の猛者達は天高く舞い上げられた。
「な、なんだっ、あの女はーーー!!?」
「「ワァァァァァ!!!」」
マジックのような光景に皆、驚愕し盛大な拍手をムラクモに与える。
吹き飛ばされた猛者達は全員、闘魚が大量に泳ぐリングの外に落ちてゆき戦魚の餌食となって行った。
「まさか…人が空を飛んだ…?」
呆気にとられていたルシアにヒスイはズバッと
「違う!あの人が、吹き飛ばした!」
「え…?ムラクモ…さんが?」
あのマジックのような人が空を飛ぶという光景はムラクモがやった事だと聞いて、ルシアの中で疑惑が生まれた。もしかしたら…ムラクモの正体は…。
「きっ、決まったーーー!!Aブロック勝者、孤高の騎士 ムラクモだーーー!!」
「「オォォォォォ!!」」
「ふんっ、当然の結果、だね」
リングでただ独り生き残ったムラクモを見ながらユウは不機嫌そうに言った。ユウは最初からこうなることがわかっていたようだ。
ムラクモはそそくさと参加者控え室へと戻る。するとルシアとヒスイが出迎え
「おめでとう、ムラクモさんっ!」
「おめでとう」
「ありがとうございます。でも、たかが一回戦くらいでそんな…」
「いや、すごいですよっ」
「そ、そうですか?」
二人におめでとうと言われ少々照れくさそうに、もじもじしながらムラクモは言った。
「…………」
「あれどうかしたの、ヒスイ?」
無言でジッとムラクモを見つめているヒスイが気になりルシアは聞いてみたのだが
「ううん、なんでもない。次、私の番」
「あっ、頑張って」
「うん」
軽く流されヒスイはリングへと向かって行った。
リングへと向かうヒスイの背を見ながらムラクモはボゾッ小声で
「(あの女……気づいたか?)」
と心の声が漏れていた。運がいいことにその声は誰にも聞かれることはなかった。