複雑・ファジー小説

Re: コンプレックスヒーロー【短編(?)】 ( No.1 )
日時: 2015/10/22 18:32
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TRpDG/gC)
参照: ※リメイク

 序章

 自分と他人が違うということに気づき始めたのは、小学生の時だった。
 人はそれを「当たり前」だと笑って受け流すのだろう。誰一人同じ人間はいなくて、だからこそ自分は他人と違うんだよって。
 幼馴染も「私たちは石ころなの。同じ形はね、二つもないんだよ」って言った。
 そういう事が言いたかったわけじゃないけれど、その場はそれでよしとした。

 子どもっぽい言葉で言うなら、ただ憧れていたんだと思う。
 隣で並ぶ綺麗な小石に。周りにたくさん転がる小石に。


 手を伸ばせば届くところにあっても。
 どうしたって自分のものにはならないのにね。


 嫌いな季節がやってきた。個人的にはどの季節もあまり好かないけれど、二番目に嫌いな季節がやってきた。
 ミンミン鳴く蝉は偉いな。あれは求愛行動らしいけれど、一生懸命で偉い。
 うるさいだけにも意味があるところが偉い。僕は灯を消した部屋で、閉じた窓の向こう側から世界を破って響き入る、蝉の鳴き声はいつの間にBGMと化していたのだろうか。
 でも本をめくり始めるとすぐに声は遠ざかって、また僕だけの世界をトントン創り上げていく。



 大嫌いな人生が産声をあげてからはや15年と、少し。
 やけに作りものじみた夏の真ん中で今日も。
 今日が意味を失っていく。



 全てを諦めようとした、ヒーローの話。