複雑・ファジー小説
- Re: 英雄伝説-Last story- ( No.10 )
- 日時: 2014/03/18 21:38
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
「もー、私が悪かったってばー……ねぇ、何で口きいてくれないの?」
「変態にはどっか行ってほしいんじゃなかったのか?」
「だ、だから誤解なのは分かったって……」
その後予定通り、図書館で件の生霊について調べることとなった三人。
だが、アゴ周りに包帯を巻いて腹を抱えているジョルジュが拗ねてヘソを曲げており、事が上手く成り行かずにいた。
(この二人、本当に大丈夫なのかしら……)
本棚の物色に集中するシヴァも、時折横目でそんな二人を見ては心配し、溜息をついていた。
氷の精霊が吐く息は、やはりというか冷たい。因みにジョルジュ曰く、それはシトラスミントの匂いがするとのこと。
一度、何故知っているのかとリィナに問われたことがあったが、その時の彼は顔を真っ赤にしてはぐらかすだけだった。
「あら?」
そしてそんな状態が暫く続いたとき、シヴァは一冊の本に目が留まった。
何か見つけたか。そう言いつつ、ジョルジュとリィナが彼女に近付く。
手に取っていた本は、英雄伝説裏事情というタイトルがつけられた本だった。
「う、胡散臭い題名ね」
「まあ、調べないよりはいいんじゃね?」
怪しむリィナを他所にジョルジュに促され、シヴァはこの本を見てみようと決めた。
正直言うと、リィナと同じく胡散臭いと思ったので気が進まない彼女だったが、これもエステルのためと思い表紙をめくる。
めくるや否や真っ先に視界に映ったのは、小さな子供によるものであろう行き過ぎた落書きだった。
「ほ、本当に大丈夫かしら……」
「あーもー! 何なら俺に貸せ!」
中々先へ進まないシヴァに痺れを切らし、ジョルジュが彼女から本を引っ手繰る。
その際に「ビリッ」という音がしたが、リィナは気付かなかったことにし、シヴァも気のせいという事にした。
ジョルジュは端から気付いていない様子で、本のページをさっさとめくっている。
「なになに? レジス帝国の大泥棒捕まえた……って、何じゃこりゃあ?」
「ちょ、貸しなさい!」
まさか、そんなこと書いてあるはずがない。
そう思って疑ったリィナが、今度は彼女がジョルジュより本を引っ手繰った。
またしても「ビリッ」という音がしたが、やはりというか彼女は気付いていない。
シヴァはまたその音を確認して溜息をつき、今回はジョルジュにも聞こえていた。
(俺、さっきやっちまった?)
(えぇ、やっちまったわね)
誰にも聞こえないような声で耳打ちしあうジョルジュとシヴァ。
「な、何よコレ。シトラ諸島の一部で火山が大噴火?」
「う、嘘?」
しばらくして、先ほどジョルジュがぼやいた内容と合わせてリィナの目に入った情報はそれだった。
すると今度は、まさかと思ったらしいシヴァがリィナより本を引っ手繰った。
やはりというか、またもや「ビリッ」という音がする。
リィナとジョルジュは吹きだしそうになったが、自分たちもやっていたので笑うに笑えない。
微妙で引き攣ったような笑みを浮かべながら、二人はシヴァの反応を待つ。
やがて、数十ページ見終えた彼女が反応を見せた。
「この本は駄目ね。次、行きましょう」
先のような内容が続いていたのだろうと察した二人は、何か追及するわけでもなく、その場を去っていくシヴァに続いた。
因みにその本には、これまでの英雄達がやってきた善事、或いは不覚にもやってしまった悪事などが綴られている。
深く読み込めば恐らくはどのような本か理解できるが、流し読みするような読み方では到底理解できない内容である。
その本を執筆した小説家本人が、書籍化時にそう語っている。
因みに、その本には件の生霊について詳しく書かれているのだが、それはまた別の話である。