複雑・ファジー小説

Re: 英雄伝説-Last story- ( No.2 )
日時: 2014/03/13 18:40
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

「くそ、どうなってやがる……!?」
「これが、不死身とやらの力なのか?」

 目の前には異形の怪物がいる。
 美貌など欠片も感じさせないそれは、世界の理を具現化したただの肉体。
 その肉体に宿る魂は、朽ちても尚存在し続ける不浄の怨念。
 人の力では、その領域には決して届かない。

「こうなったら最終手段だ」

 その異形と対峙する戦士数名のうち、一人のリーダーらしき男が前に出た。

「お、おい! 何をするんだ! やめろーー!!」

 こうしてこの戦いの歴史は、一人の犠牲を伴ったことで闇へと消えた。


 アクターレ・レイド著作『盟友戦記』より抜粋——


  ◇ ◇ ◇


「はっはっはー!! どうだ見たか! これが正義と愛の力さ!」
「よっ、我らが大将!」

 崩壊寸前の遺跡にて、不浄の怨念を宿した鬼と対峙する男が一人。
 不死のその魂と対峙しても尚、彼の表情からは笑顔が消えない。
 周囲の部下達も、厚い信頼を彼に寄せていた。
 やがて光の中へと、不浄の怨念は吸い込まれてゆく。

 こうしてこの戦いの歴史は人々に勇気を与え、世界中の子供達へと語り継がれる御伽噺となった。


 ノレスター・グレイムズ著作『光の英雄』より抜粋——


  ◇ ◇ ◇


「この戦、我らの勝ちだ」

 総大将のその一言で、世界中の人々が歓喜する。
 不浄の怨念が乗り移った男は野心に動かされ、結果闇へと葬られた。
 国家滅亡という危機に際し、立ち上がった一人の若者は、その男を闇へと葬ったことで過去最高の名誉を得た。

 こうしてこの歴史は表舞台へ。その若者の肖像画や銅像は今も残されている。


 レイモンド・ハルベルン著作『伝説の王子』より抜粋——