複雑・ファジー小説
- Re: シークレットガーデン -魔女と呼ばれた少女の物語- ( No.4 )
- 日時: 2014/03/20 15:07
- 名前: 姫凛 (ID: WTiXFHUD)
-第一階層-
(プリンセシナ第一階層。ここに一人の少年と謎の生命体が入り込むんだ。)
「ここは……」
「森のようですね」
シレーナを助ける為に、心が創り出した迷宮と呼ばれるプリンセシナってところに来たはいいけど……目の前に広がっているのは、森。木、木ばかり。
僕が住んでいる村の隣にある町、通称隣町の南にある森、通称南の森みたいに木々が青々していて春の陽気で小鳥たちが楽しそうにさえずっている。
…でも違う。明らかに。この森からは生命力を感じられない。
鳴き声は聞こえるのに…姿は見えない。獣臭がするのに動物の姿が一切見えない。……不思議な森だ。
「人の心が創りだした迷宮って言っていたから、すごい迷路みたいな物だと思ってたよ」
「迷宮と一括りに申しましても、プリンセシナは人の記憶を元に創りだした物。十人十色。人それぞれで皆違うのですよ」
「へぇ……」
と言った後にパピコさんは追加で、特に大切な思い出の場所や色濃く印象に残っている場所なんかも、プリンセシナの舞台として現れやすいと教えてくれた。
じゃあこの南の森に似てえうようで似ていない。この不思議な森もシレーナにとってはなにか意味深い場所だったのかな?
『お父さん。お母さん。見てみてっ!粘土でパンダの置物を作ってみたの』
「あれは……」
しばらく森の中を歩いていると一軒の家を発見した。
家の前ではヨナくらいの女の子…八歳くらいかな?と仲好さそうなご夫婦がみんな仲良く日光浴をしていた。
女の子は可愛らしいパンダの子供かな?の小さな置物を持って嬉しそうにお父さんに駆け寄っていってる。
『おお、シレーナ!すごいじゃないか!』
「えっ!?シレーナ!」
「しっ!お静かに。気づかれてしまいます」
思わず声にだしてしまってパピコさんに注意されてしまった。
シレーナ。たしかにあの女の子のお父さんはそう呼んだ。
ここはシレーナの心の中。だからシレーナがいるのは当然だよね。
……これはシレーナの記憶の一部なのかな?
『本当にすごいわ、シレーナ。今日は特別にあなたの好きなものを作ってあげましょう♪』
『本当!?やった!』
『『ふふふふ』』
『わーい!わーい!ワタシもっともっと勉強して、いろんな事出来るようになってお父さんとお母さんを、もっとも〜と喜ばせてあげるんだからっ!』
『まぁ!』
『ほぉそれはそれは楽しみだな』
『ふふんだっ!』
(女の子は嬉しそうに辺りをクルクル走り回ってはしゃぐ。
その姿を見て両親も微笑ましく見守っている。
女の子はクルクル回りながら次の案を練る。)
[嬉しいな〜。嬉しいな〜。お父さんとお母さんに褒められて嬉しいな。
次はなに作って驚かせようかな〜。
んー。……あっそうだ!お花で冠作ってあげようっと!]
楽しそうに話しているシレーナたち親子を見て僕は小声で
「昔のシレーナってちょっとお転婆だったんだ」
「おや?今は違うんですか?」
「うん。今はどちらかと言うと物静かであまり感情を表に出さないんだ…」
「へー。少女も一皮むけて大人になったと言うことでしょうか」
「うーん…そうゆう事はよくわからないな」
「ま、ご主人様可愛い♪」
「………」
でも…本当に大人になったからって、性格が真逆に変わったりするのかな。
他にもなにか重大な事があって、変わらず得ざる負えないかったとか……。いや、さすがに考えすぎかな。
(少年は首を横に振ると改めて家族を見る。あながちその考えは間違ってはいないというのに…。)
『お父さん。ワタシちょっと近くの川に行ってくるね』
『はい。ここには魔物がいないからって、安心し過ぎずに気を付けて行ってくるんだよ。いいね?』
『はーい』
(女の子は元気に手を振って近くの川へとダッシュで行く。その表情は楽しい事を考えているのか少しニヤけていた。)
[あの川には確か綺麗なお花がたーくさん咲いてたんだよねっ。
やっぱりお水が綺麗だからなのかな?お魚さんもいーぱいっ泳いでいるし。
ま、なんでもいいや!綺麗なお花が沢山咲いていれば♪]
「おや?移動するみたいですね。ついていきますか?」
「うん。魔物はいないって言ってたけど、あのくらいの女の子にとっては魔物以外も十分に危険だしね」
「ご主人様ったらお優しい。ますます好きになっちゃいますぅ」
「あはは……どうも…」
やっぱりご主人様って呼ばれるの慣れないな…。
(少年たちは女の子にばれぬようこっそり後をついてゆく。
その選択は良とでる。)
『うわーきれー』
[今日もたっくさんのお魚さんたちが泳いでる。
いいなー私も泳ぎたいなー。着替えのお洋服がないから、だめだけど。
生まれ変わるなら、人魚さんがいいな。だって可愛いもんっ。]
川につくと大きな滝があって水は透き通っていて下が透けて見える。
…でもこんなに綺麗なのに魚が一匹も泳いでいない。どうしてだろう。
あっそういえば、僕の家の近くにある小さな川もここくらいに透き通るように綺麗な水だったな。
ヨナもあの川で水遊びするの大好きだったな…。
- Re: シークレットガーデン -魔女と呼ばれた少女の物語- ( No.5 )
- 日時: 2014/03/20 15:27
- 名前: 姫凛 (ID: 5xmy6iiG)
(川を眺めながら少年たちはしばし休憩し、何気ない世間話を始めた。
綺麗な川は人の心を洗う力をも持っているのかもしれない…。)
「ここでピクニックをしたら気持ちよさそうですね」
「そうだね。魚釣りもいいかもね」
「おぉ、ご主人様。魚釣りおやりに?」
「いやっ僕はしたことないんだけど、死んだ父さんがやってたんだ」
「ほう。なるほど」
『キャーーー!!』
「「えっ!?」」
パピコさんと何気ないしゃべりをしていると、川の上流の方からシレーナの悲鳴が聞こえてきた。
「行ってみよう!」
「あっはい!」
慌てて悲鳴がした方へ行ってみると…見たこともないようなバケモノがシレーナを襲おうとしていた。
あいつの特徴を説明しようとしたら、三年はかかってしまいそうだ…。とにかくどう言っていいのかわからないくらい、不気味な奇妙なバケモノだった。
『ぃっ…いや……』
[なっ…なにこの変な生き物。
こんなの見たことないよぉ。図鑑にもニュースでも見たことないよぉ…。
助けて…お父さん…。…だれかぁ。]
「あれは、魔がい物!」
「まがいもの?」
「はいっ、デスピル病のウイルスみたいな魔物です。あいつが私達よりも先にシークレットガーデンへ到達されると、シレーナさんの心は壊れ荒れも無残な穢れ、あんな感じの化け物になってしまいます!」
「どのみちここで倒さないといけないんだねっ!」
「お待ちくださいご主人様!」
「なにっ!?」
(少年は腰に下げた剣を抜き、魔がい物へ刃先を向ける。
謎の生命体は少年から離れた安全な場所で待機し、木の陰に隠れて助言をする。)
「魔がい物は絶対にご主人様がいま持っているその剣で、彼らのコア(心臓)がある胸元へ一突きで倒してください」
「父さんの形見のこの剣で一突き…わかった!」
「……私には案内と応援しか出来ませんが…頑張ってください」
「うんっありがとう!」
パピコさんにお礼を言うと一目散にシレーナの元へ駆け寄り、
「はぁぁぁ!!」
『ぎぎゃぁぁぁぁ!』
魔がい物のコアを一突きに突きに刺した。魔がい物はこの世のものとは思えないほどの恐ろしい悲鳴を上げた後、黒い煙のようになって消え去った。
「君っ大丈夫!?」
『…ぁ。……ぁ』
[お礼…お礼…言わなきゃ。
ありがとうございます…って言わなきゃ…。
…ぁ。声が出ない。なんで?なんで出ないの私の声っ!?
だめだ…逃げなきゃ。
この人…私を助けに来てくれた良い人なのかわからない。
前にニュースで言ってた人さらいの人かもしれない…。逃げなきゃ。]
シレーナは放心状態で何かを言おうとしてたみたいだったけど、何も言わずに一目散に家の方へ走り去って行った。
「まぁなんですかあの子は!?助けてもらったお礼も言えないなんて、礼儀知らずにも程があります!」
「ま、まぁまぁ…」
プンプン怒るパピコさんを宥める。…あんな怖い思いをしたんだから言えなくてもしかたないよね。
それに僕はシレーナがケガをしていないんだったならそれでいいんだし。
(女の子の恐怖の対象が化け物から少年へ変わっていたことを知るよしもない少年は、勝手に納得しその場を収めた。
そして次の階層への扉がギギギギィと大きな音をたてながら開いて行くのが遠くに見えた)
「あっ扉が!」
「ここでのイベントをクリアしたので次の階層への扉が開いたみたいですね」
「次の階層か…」
第一階層では以外にもシレーナは昔、お転婆な女の子だったんだ。
って事がわかったけど、次はどんな事がわかるんだろう…?
いや人の過去を盗み見てて楽しみにしちゃ駄目なんだろうけど。……気になるな。
不謹慎にも少しワクワクしながら僕たちは、第二階層と書かれた扉をくぐり階段を下りて行った。
(少年は後々本気で後悔することになる。
どうしてこの時自分は人の過去を見てワクワクしてしまったのだろうと。
人の過去はそう簡単な物ではないのに…。)