複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.105 )
- 日時: 2014/04/19 18:06
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: kzjN7yPk)
リヴァイアサンのブリッジで、アリーザは事の顛末をモニターから静かに眺めていた。
己が見つけ、拾い上げた少女。
生きる事に従順な、死の間際までギラつく瞳にアリーザは見い出したのだ。
貪欲なまでの力を求める意志を。
世界を変える兆しを。
「見せて頂戴、貴女の『力』を。ミカエラ」
「ふふふふっ、あはははははっ!!!どうしたのお〜?返事が無いわ、ミカエラァアア?死んじゃったかしら・・・?はははははっ・・・!!!」
セレスが笑いながら幾重にも貫いた翼刃ごとティアマトを高く抱え上げて、リンドブルムの破壊された機体を修復していく。
「セレスゥウウウウッ!!!!Faaaaaaack!!!!!」
「てめええええええっ!!!!!何してんだああああああっ!!!!!」
二機のドラグーンがそれぞれ武器を手にリンドブルムに躍り掛かる。
スフィーダのケツァルカトルが雷撃を放ち、リヴァネのユルングが双銃から弾丸を発射する。
しかし、翼を覆うように機体に纏い、ことごとく攻撃を防いでしまう。
「んん〜?羽虫がチョロチョロ纏わりついて、目障りですね。まとめて駆除しますか・・・」
翼刃が獲物を狙い、伸びる。
突然。
鳴り響く鼓動。
「ん?何ですか、今のは・・・」
再び鳴動。
脈打ち、鳴らされる心音の鼓動。
貫いたティアマトから夥しい触手が溢れ出し、機体全体を覆っていく。
「こ、これは!?」
触手は機体を刺し貫くリンドブルムの刃にも食指を伸ばし、肉の塊が蠢き覆い侵食していく。
「くっ!? これは!!取り込んでいる!!?」
セレスは直ぐに機体から翼刃の一部を切り裂き、その場を離れる。
ティアマトは穿たれた仰向けの姿勢のまま、海上に落ちる事無く浮かんでいる。
残った機片を喰らうように吸収した機体が大きく脈動し、全身を赤黒い機肉の塊が走ると、グルリと反転し手足をかかげる。
躯体を機械が混ざった歪な肉が巨大化させ、四肢を太く構築、組み替える。
顎部の装甲がひび割れ、鋭利で狂暴な歯牙の口腔が覗き垣間見る。
それに合わせるかごとく、機体の腹甲部、肩甲部、脚甲部の竜頭の眼が開閉し、巨大な禍々しい口角が創り上げられた。
機体複数箇所の顎口が大きく開け放たれ、大気を震わせ、絶怒の咆哮を叫び放つ。
後背の巨大排熱機関部からドス黒い影の澱みが大量に噴出し、空を黒く染める無尽の龍蛇が形造られて解き放たれた。
幻影のごとく醜塊が揺らぎ、実体が定かではない暗黒の蛇口と機体の竜口が一斉に開かれる。
ティアマトの眼前に闇の濁流のエネルギーが流れ込み凝縮し、渦を巻いて、巨大な漆黒の球体を形成する。
轟く怒咆。
放たれた暗黒球。
海面を根こそぎ抉り、リンドブルムの脇を逸れて、遥か後方の巨島に消える。
瞬間。
島を覆う黒い光。
虚空を覆い尽くす暗黒のドーム。
島を砕き、海を蒸発させ、空を割り裂き、すべて、呑み込んでいく。
吹き荒れ届く、途方も無い破壊の嵐。
何もかも喰らい、たいらげようと急激に引き寄せる。
耐えるドラグーンたち。
リヴァイアサンが荒れ狂う波に揉まれ揺られる中、ブリッジはけたたましい警報が鳴り響き、異常な事象の対応に慌てている。
「位相空間に強力な力場を観測しました!!!」
「重力波数、亜空振動波数、ともに限界値を超えています!!!」
オペレーターの情報が交錯する。
モニターでその光景を見るアリーザは楽しそうに微笑む。
天空は暗雲に包まれ、稲妻が轟く。
天変地異を発生させた暗黒球は徐々に小さくなり、縮小と共にその姿を消した。
後には雲すら無い青空と蒼海、嘘の様な静けさが残る。
島は影も形も無く、消滅していた。