複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.106 )
- 日時: 2014/04/19 16:23
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: kzjN7yPk)
シェンロン艦甲板。
「・・・この気はっ・・・!!!」
遥か、彼方の地平線を睨むシャオ。
背筋を突き抜ける怖気、沸き立つ嫌悪感。
「むう・・・、何者か判らぬが、随分と面倒な事をしてくれたのう。・・・これも試練だというのか?世界の意志はこのまま人を滅ぼそうと言うのか・・・?」
シャオは苦虫を潰したような表情になる。
深淵の底から闇がせり上り、その鎌首をもたげるのを感じた。
島とは言え、巨大な大陸。
それを消し飛ばしてしまった、暗黒の蛇頭群を揺蕩わせる魔竜。
巨大な躯体の全面に複数の禍々しい竜頭の眼を光らせ、不気味に蠢き、まるで竜種を何体も合成したキメラを思わせる。
「・・・これが、ドラグーン?馬鹿げてる、まるで、化け物・・・。次元が違う、何て力なの・・・?」
セレスがリンドブルムのコックピットから、先程まで存在していた島の辺りを見つめた後、変貌したティアマトを視ると途端に身体が硬直した。
赤い無数の眼光が一斉に此方を凝視していたからだ。
「!!?」
仰け反るセレス、あらゆる悍ましい負の感情が全身を突き抜ける。それは己だけではなく、ドラグーンまで感じ取ったようだ。
「う、動かない!?私のドラグーンが言う事を聞かない!!?な、何故だ!!!」
まさに蛇に睨まれた獲物の様に、身動きが取れなかった。
すぐ間近まで接近するティアマト。
セレスがリンドブルムの機体を操作しようと躍起になっていると、ティアマトがその頭部を鷲掴む。
「な、な、にっ・・・!!?」
喰らい付かれた。
驚愕するセレス。
ティアマトの全身の竜の顎が、背部の無数の龍蛇が、口を大きく開けて、リンドブルムに一斉に喰らい付いてきた。
勢い良く噛み千切られる装甲、咀嚼される小気味のいい破砕音。
メリメリ、バリバリと機体が貪られている。
「く、喰っているっ!!?喰われてる、ドラグーンをっ!!!?」
ようやく己に起きた事態に気付いたセレス。
魔竜の醜悪な腹甲部の顎がコックピットを噛み砕き現れ、巨大な連なる歯牙が自身を貫く。
太い牙が肩先に食い込む感触が伝わり、ブチブチと引き千切られる腕、そして機材と一緒に巻き込まれる折り曲がる足。
飛び散る鮮血、潰れる半身。
セレスは眼前に迫る牙から目を背けられず、呆然と己の身体が引き裂かれるのを見ていた。
次なる牙が頭に掛かる。
漠然と押し寄せる途方も無い虚無感。
それは。
—————死。
「そこまでしときなさい、ミカエラ。貴重なパイロットをこれ以上失う訳にはいかないわ」
ピタリと止まる魔竜の牙。
軍用ヘリがティアマト付近にホバリングし、スライドされたドアからアリーザが長い髪を靡かせる。
「そのまま、リンドブルムを艦内に運びなさい。これで計画の第二段階を進める事が出来る。・・・よくやったわ、ミカエラ」
そう言って、アリーザを乗せたヘリは上空を飛翔していく。
ティアマトのコックピットが開き、藍色の髪の少女が操縦席から立ち上がる。
無残に破壊されたリンドブルムの血染めのコックピット内部が視え、右肩から手足を失ったセレスが蒼白の顔を歪め、睨み上げる。
ミカエラが視線に気づき、セレスを見据える。
「・・・感謝するがいい、セレス。お前を生かしてやる」
その瞳孔が爬虫類のごとく収縮し、口元が鋭角に吊り上り牙が覗く。
「・・・化け、物、め・・・」
セレスはこの少女が人ならざる領域に踏み込んだ事を感じ取った。
同時に、自分こそが当て馬だったと理解した。
ティアマトは全壊状態のリンドブルムを掴むと、背中の群れる龍蛇を巨大な翼に変え、リヴァイアサンに向かって行った。
ただ見ているしかなかったスフィーダとリヴァネも慌てて後を追い、艦体に向かった。
